リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

組織的なアンケート回答で教科書を変える

2017-11-29 | 政治
歴史教科書の採択問題では,下記関連記事でも紹介したように気持ち悪い話が多い.

11月29日の朝日新聞は,2015年の大阪教育委員会で取り上げられた「教科書センターに寄せられたアンケートの集約結果」について,不動産大手のフジ住宅が全従業員(1130人)にアンケートの記入を呼びかけ,育鵬社版を支援する組織が記入例も提供していたことを紹介している.社員に強制はしていないというが,在日韓国人の女性が「協力を求められた」ことなどで苦痛を受けたとして会社を裁判に訴える事態にまでなった.
情報公開請求でアンケートの原本の写しを入手した市民団体の推計では,社員によるアンケート投函は600件を超える.だとするとアンケートでの育鵬社版を支持する779件の大半を占めることになる.
フジ住宅の会長は「共感した社員が協力しただけ」と述べており,だとしたら社員に呼びかけたことを一概に否定することはできないかもしれない.だが現に苦痛を受けた人はいたわけだし,そもそも会社から呼びかけられれば,いくら強制ではないといっても断りにくいことは十分ありうる.
育鵬社版だろうと民主的な教科書だろうと,アンケートなどで市民や現場の声を聞くことは悪くない.だがその結果の利用にあたっては,二重投票ができない選挙とは前提が違うことをわきまえるべきだ.その点,「アンケート重視」だという大阪の姿勢に疑問を感じる.

だが記事によれば,教育委員会で上記のアンケート集約結果が公表される前に,教育委員協議会ですでに育鵬社版の採択は内定しており,アンケート結果を示したのは反発を恐れた市教委事務局が公開の場で裏付けを示そうとしたためだという.だとすると組織的だろうが何だろうがアンケートは単なるアリバイに使われただけで,採択に影響しなかったことになる.公開の場で議論する前に教育委員協議会で育鵬社版に決めていたというのは,組織的なアンケート回答以上に怖い気がする.もっと人々は「反発」すべきであった.


関連記事:
「首長が人事権を使って教科書を変える」(10月29日)では市長が送り込んだ教育委員が現場の意見を無視して育鵬社版の選択を進めた事例を紹介した.
「攻撃されて記述を変える教科書,変えない教科書」(8月25日)では教育委員会が現場の判断を覆した事例を紹介した.
「教科書を政治問題化しないでほしい」(8月19日)では従軍慰安婦関連で私立中学校の教科書採択に関する「政治的圧力」を紹介した.

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