リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

緊急事態宣言は遅すぎない。改憲でもこれくらい慎重であってほしい。

2020-04-10 | 政治
4月7日、安倍首相は1か月の緊急事態宣言を7都府県に出した。新型コロナウイルスに対応して緊急事態宣言が出せるよう特別措置法を改正した3月中旬から時間がたったことに「遅すぎる」との批判も出ているようだが、宣言とは別に任意での要請は従来からなされていたことも考えれば(都知事は施設の使用中止によって事実上休業に強制力をもたせようとしているようだが)、今回の宣言が遅すぎたとは思わない。日ごろ安倍首相に批判的な朝日新聞も、「拙速な発出に対する懸念の一方で遅すぎるとの批判もあったが、一定の時間をかけたということは政権が権力の行使を慎重に判断した結果と受け止めたい」と理解を示しており(朝日新聞2020-4-8)、同感だ。今回については都や経済界などから緊急事態宣言を出すべきだとの意見が強くなってきたタイミングであり、ほどよかったのではないかと思う。
話は変わるが、東京オリンピックの延期決定も難しい判断だったが、カナダが2020年夏だったら選手を派遣しないと表明したり、アメリカの有力団体が延期を求めるなど、国内外で予定通りの開催が無理という流れができたころに安倍首相とIOC会長との電話で延期が決まった(過去ブログの追記)。これも世論が固まってきたころの決定であり、政治的には最も無難なタイミングだった。(なぜJOCの頭越しに首相とIOCの間で決められたのかとか、その後延期を1年間としたのはどんな根拠に基づく決定だったのか(中止を避けるために拙速に(延期決定から2日で)既成事実化したのでは)などといった問題はあるが、それはまたべつの話。)
中国などからの入国制限はどうか。これは私も遅すぎたという印象はもっているが、以前書いたように、影響の大きい移動制限を出すのに慎重だったことはあまり強く批判したくない。無症状の人でも感染を広げるという新型コロナウイルスの特性を考えると、もともと水際作戦には無理があったように思う(過去ブログ)。
中国からの入国制限を1月の段階で早くも打ち出したのはアメリカのトランプ大統領だが、当時WHOが渡航制限を批判したことを持ち出して「我々は幸いにも渡航を認めるべきだとのWHOの助言を拒否した。なぜ、そんな誤った勧告をしたのか」と強く非難するツイートをした(朝日新聞2020-4-8夕刊)。結果論としてトランプ大統領の決定によりアメリカでのウイルス蔓延を遅らせることができたが、結局水際作戦で感染拡大は防げなかった。しかもトランプ大統領の根拠のない楽観論のために、せっかく渡航制限で稼いだ時間に態勢を整えておくことができなかったのだから、大統領も大きなことは言えないはずだ。(追記:早すぎたとも思えるトランプ大統領による中国からの渡航制限だが、アメリカの情報網が中国の発表よりも早く新型ウイルスのことを察知していたためだという(朝日新聞2020-4-12)。)

話がそれたが、緊急事態宣言のような私権の制限に踏み込む決断に慎重であるのは悪いことではない。世論が固まってきたころを見据えてトップが決断をする。場合によってそれでは間に合わないこともあろうが、今回はちょうどよいタイミングだったと思う。
その一方、従来安倍政権では有無を言わさず首相の方針を押し付けることが多い。その最たる例が憲法改正だ。このような議論が分かれる問題を多数決で決めようとすると国民の分断と混乱を引き起こす。イギリスのEU離脱がまさにそうだった。丁寧に議論を積み重ねて、国民の間で合意ができてから国会で発議すべきであって、数の力で国会を通して世論誘導キャンペーンで国民投票の結果を誘導するなどということがあってはならない。そんなことを書こうと思っていた矢先、与党は「緊急事態における国会機能の確保」をテーマに憲法論議を呼びかけているという(朝日新聞2020-4-9)。「国会機能の確保」は大切だが、国会での野党の質問にまともに答えようとしない首相の態度を見ていると、「国会機能の確保」と言われてもむなしく響く。憲法とは別に国会機能の確保を検討するとともに、そもそも国会での質疑を意味のあるようにする努力が首相に求められる。


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