リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

カジノで訪日客が増えて受け入れられるのか

2018-06-05 | 政治
自民・公明の両党は今国会でカジノ法案(カジノ設置を可能にする統合型リゾート(IR)実施法案)を成立させようとやっきになっている.安倍首相は「世界中から観光客を集める」とぶちあげているが,実は政府は数字に基づく試算は示していない(朝日新聞2018-6-4).「立地や事業者のビジネスモデルなど,不確定要素が多いから」だというが,そのようなほぼ白紙の段階で法案を進めるのは普通のことなのだろうか.
一方,民間では経済効果について1か所設置で1.5兆円とか3.7兆円,3か所で7兆円などさまざまな試算が出ている.ただ,依存症対策として日本人客の入場制限が設けられる見込みだが,どの試算もその点は考慮されていないという.ただ,誘致自治体の大阪府や北海道はシンガポールのIRでの実績などをもとに,日本人客が大半と見込んでいる.カジノ推進の目的は,あくまで「世界中から観光客を集める」ことによる経済効果であり,日本人の利用は制限するということだったはずだが,やはり国民を説得するためのタテマエでしかないのではないか.

カジノには賛否あるが,今回の新聞記事の識者談話では,「IRがなくても日本への関心の高まりやビザ緩和の影響で,訪日外国人が増えている」との指摘がもっと注目されていいと思う.まず,一般論として,ただでさえ訪日客が増えているときにさらなる呼び込み策を講じるのはタイミングが悪いと思う.そして,2020年の東京オリンピックは別としても,そもそも日本に現状以上の外国人観光客を受けれ入れる余地はあるのだろうか.金に目がくらんで観光客を呼び込んだはいいが,受け入れ態勢が整っていなくて失望させてはみっともない.

これに関し,先日,歴史社会学者・小熊英二氏の「(論壇時評)観光客と留学生 「安くておいしい国」の限界」という記事(asahi.com)が私の不安をうまく言い表してくれている.多すぎる観光客による「観光公害」や,原因としてのアジアの経済成長などはすでに広く指摘されているが,氏は日本が外国から見て「安くておいしい国」になったと指摘する.総じて賃金水準が低いから食べ物も値段を抑えざるを得ない.諸外国に比べて物価水準が安いから千客万来となり,「観光客や消費者には天国かもしれないが,労働者にとっては地獄」となる.その結果もあって社会を支える働き手が足りず,事実上の「移民」があふれる状況となっている.(日本では就労ビザのない留学生でも週に28時間まで働けることで途上国から留学生を集めているということも気になったが,また後日.)
氏の結論はちょっと極端な気もするが,もう「安くておいしい日本」はやめるべきだと思う,というのには同感だ.

カジノで外貨を稼ごうという発想がそもそもいやらしいが,そのことをわきに置いたとしても,日本にこれ以上観光客を受け入れる余地があるのか,考えるべきだ.(そういえば,「人口10万人の町に観光客が100万人」みたいな話はたまに目にする.そういう「観光立国」を目指すというのであれば,それなりのビジョンを示してほしい.それでもカジノを正当化することにはならないと思うが.)

関連記事:
「公明党の選挙のためにカジノ法案を急ぐな」


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 森友取引の調査報告:財務省... | トップ | グーグルで検索した用語に関... »
最新の画像もっと見る

政治」カテゴリの最新記事