『そして父になる』...ん~ッ、木下恵介監督の『わが子は他人』に軍配をあげるなぁ。

2015-02-07 21:18:32 | レビュー

(昨年WOWOWにて)カンヌ国際映画祭・審査員賞を受賞した『そして父になる』を観ました。
そして今晩フジにて同映画が放映されていましたが

結論から云うと(生意気ながら)、ちょっと物足りなさが残る作品ですね。

病院で赤ん坊を取り違えられたことで始まった苦悩する2家族のドラマ

 

物足りなさ(=切なさ)を探ると

「血は水より濃し」の例えも浮かぶけど

我が子(血を分けた子)と思い育てた子どもが見ず知らずの他人の子であり

目の前にいる子にふと冷めた心根が生まれたり

自分の目の届かない場所で育つ我が子(血を分けた子)への杞憂や不安と愛しさが込み上げてくる気持ちなど

もう少し親たちの心情を探って(いがみ合い以外の演技で見せて)ほしかったところや

 

やはりエピローグの投げっぱなし感に尽きるかな

「えッ、これで終わりなの???」…って共感いただける人も多いのでは…

 

時が来たら我が子に真実を打ち分けるべきなのか

両家が交流をしていく先に光明を見出せるのか etc.

何か明るい未来を感じさせて締めてほしかった

 

あえて投げっぱなしENDにすることで

社会に問題提起することが監督の映画制作の目的?などとも考えられるのですが

エンディングは消化不良を否めません


この映画を観た瞬間
木下恵介アワーでかつて放送されたテレビドラマ『わが子は他人』を思い出しました。




昭和49年TBS系で全26回放送。企画・制作:木下恵介。『わが子は他人』は、病院で赤ん坊(わが子)を取り違えられていたことから起きる2家族の苦悩を描いた作品


病院で「赤ん坊取り違い事件」が全国で多発した昭和40年代。
*昭和48年には全国で64人にも登る報告もあります。つまり全国で64家族が
悲しくつらい苦悩の日々を送ることになってしまったということ。

このドラマ(木下恵介監督の演出・役者の演技力・カメラワーク等)の記憶が
鮮明に残っているので、家族(肉親)への愛情や戸惑いの描き方の点で
『わが子は他人』に軍配をあげるかな。
(そもそも30分ドラマ・全26回ものなので2時間の映画と比べるところに無理もあるけど)

出演した俳優陣
・商売人のぞんざいな家庭:父(松山省二)・母(音無美紀子)
・教育者の厳格な家庭:父(杉浦直樹)・母(林美智子)

この俳優のみなさんの表情や演技は素晴らしかった。
(上の白黒画像の受話器を持っているのが松山省二さん、その右が音無美紀子さん、杉浦直樹さん、
林美智子さん。みなさんの表情、眼の演技(眼力)...やっぱりイイですね
それも木下監督の演出・演技指導の賜物でしょうけど、
アマルは子どもながらにドラマに感情移入し胸が苦しくなったことを覚えています。




しかしこのドラマの終わりに近づいていく頃(20話ぐらい)からかな?
2家族は今後どうしていくの?どうしていきたいの?
この結論が出ない(出さない)・方向性すらわからないまま
中途半端な状態で締めくくられた。
(『そして父になる』同様、ものすごい消化不良状態でした。

アマルは両家族が苦難を乗り越えた明るい姿を描いて
(あるいは予感させるものでも構わないんだけど)エンドしてほしかった。

でも木下監督はじめ制作陣は「赤ん坊取り違い事件」で(放送当時)全国で問題を抱え
苦しまれる(解決の糸口すら見いだせない)家族をおもんばかり
出した結論だったのか...。


映画ではグレン・グールドのピアノ(バッハ『ゴールドベルグ変奏曲』)
大人たち子どもたちの混沌とした世界観にあってましたね。
[HD] Bach's Goldberg Variations [Glenn Gould, 1981 record] (BWV 988)





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