クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

渡邊順生 「チェンバロ・フォルテピアノ」(4)  ピアノのキーの重さ

2017-12-30 13:47:52 | 図書・映像・その他
今年(2017年)予定されていたシンガポール出身のピアニスト ケイト・リウさんのコンサートが中止になった。
理由は、肩から腕にかけての激しい痛みにより医師から演奏活動を控えるようにと診断されたためという。
幼い頃よりピアノを弾き続きたことがこのような障害を招いたとしたら誠にお気の毒で、快癒を願うしかない。
しかし、リウさんのケースは実は氷山の一角で、腕の障害によりデビューすらできなかった、というピアニストの卵はごまんといるのではないか?
そもそも現代のピアノのキーは重すぎるのではないか?

そう思って、本書を紐解いたら、やはりありました。ピアノのキーの重さの変遷を示した表です。



この表でキー・ディップはキーの深さ、ハンマー・ストロークはハンマーと弦の距離、速度比はキーの動き1mmに対してハンマーの動く距離、重量は音を出すために最低限必要な荷重である。
これらのデータから最小の音量を得るのに必要なエネルギーを計算するとスタインウェイを100として
 シュタイン(1788)    19.2(C), 14.7(c1), 12.6(c3)
 ヴァルター(1800)    16.8(C), 12.4(c1), 10.8(c3)
 シュトライヒャー(1797) 18.5(C), 16.4(c1), 11.5(c3)
となるそうだ。ベートーヴェンの頃のウィーンのピアノはたいへん軽かった。

このようにピアノはより大きく豊かな音響を求めてキーはどんどん重く、かつ深くなった。
乗り物に例えると、木製の馬車から排気量何千ccの鋼鉄製高級車になったようなものだ。
もちろん馬車には馬車の良さがあり、高級車には高級車の良さがある。
したがって、必要なのは弾き手がピアノを自由に選択できることだ。
ところが、コンクール偏重の現状ではそんなことは言っていられないであろう。
こうして考えると、問題の根は深い。





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