クラシック音楽徒然草

ほぼ40年一貫してフルトヴェングラーとグレン・グールドが好き、だが楽譜もろくに読めない音楽素人が思ったことを綴る

バッハ インヴェンション第1番ハ長調は夫婦の会話か諍いか?

2018-07-10 11:50:27 | バッハ
実はわたくしはクラヴィコードを持っている。
30年ぐらい前に無謀にもアメリカからキットを輸入して自作したという世に二つとないシロモノ。
自分があちこち転居していたので、長らく実家で放置プレイしていたら弦が切れたりして使い物にならなくなっていたが、1年ほど前にようやく修復し、弾ける状態になった。
(旅行先からも家の楽器の手入れについてあれこれ隣人に手紙で頼んでいたモーツァルトのオヤジとは大違いだ。)

そこで、そのクラヴィコードで、バッハのインヴェンション全曲制覇に乗り出した。
ピアノなぞ習ったことはないから、指使いから何から全くの自己流。
しかし、どれほど下手でも、やはり音楽は聴いているだけより、自分で弾く方が面白いし、楽曲の理解も深まる。
そこで今回はインヴェンションの1番ハ長調について思うところを書いてみたい。

わたくしの見るところ、この曲は夫婦の会話である。
もちろん右手がツマで左手がオットである。



最初はツマ主導で平穏。ところが7小節目からオット主導となるとやや雲行きが怪しくなり、9小節目でオットが異なこと(主題の反行形)を言い出すと、にわかに緊張が高まる。



そして13小節目、オットの一言(モルダントのついたニ)をきっかけにツマがブチ切れ、13~14小節にかけて両者が全面対決。(ここで初めて左手と右手が同じ音型を奏して緊張がクライマックスになるのが実際に弾いてみるとよくわかる。)



が、その騒動もパッと突き放したツマの一言で終息に向かう。オットはツマに従わざるをえないのである。



そして曲の末尾、20小節で右手はこの曲の最高音に達し、ツマは勝利の宣言、オットは下の方でブツブツ言っているが勝敗は明らか。
最後の和音は引用楽譜ではアルペッジョだが、わたくしの持っているヘンレ版では普通の和音で、しかも右手は3音あるのに左手は下のハ1音のみ。こんなところもツマとオットの力関係を暗示しているようでオカシイ。



以上、書いたようなことは、どうとでも取れる要素で、まともな楽曲解説では絶対にお目にかからない。
しかし、この曲が何らかのドラマを表現しているのは確かで、あまりそっけなくアレグロで弾かれてしまうと面白みが出ないと思うのだが、いかがでしょうか。







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