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アガサクリスティは一流の恋愛小説家だと言うと首を傾げる方も居られるかも知れない。
あっという結末、ダイナミックな展開独特の構想を持つミステリーの第一人者のイメージが強いからだ。
私も彼女の切れ味のいいミステリーに魅了され尽くした一人である。
しかし、かの『ナイルに死す』、『メソポタミア殺人事件』、『終わりなき夜に生まれつく』を一読されると、そこに書かれた恋の苦悩に打たれる。
ミステリーであると共に、ドラマティックな恋愛小説だと思う。
クリスティ自身、非常に感性の優れた人で、二度の結婚を通じて恋愛感情の光と影を深く味わった様だ。
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『杉の柩』は1940年円熟期の作品である。
恋人を美しい小間使いに奪われた女性が主人公である。
小間使いは毒殺され、真っ先に彼女が疑われる。
何を取り上げても彼女はクロだと思わせる設定だ。
ポアロは彼女を密かに慕う医師から懇願されて、調査を始める。
さて、彼女は本当に殺してないのだろうか?