エリカは恐々、FBを開いた。
エリカに寄せられた悪口雑言は思いの他に少なかった。
恐らくセキュリティを固くしていたお陰であろう。
それでも、見も知らぬ男たちからの嫌らしい言葉が連なっていた。
情報とはどこから漏れるかは分からない。
しかも偽の情報である。
情報を流した人間が陰で舌を出しているに違いない。
全く正体不明である。
それなのに、気持ちの悪くなる様なメッセージがエリカに届くのである。
エリカはFBを退会した。
そして、昼間外出出来なくなった。夜中にコンビニで食糧を調達する位がやっとだった。
しかし、狭いアパートの中に居ると気持ちが滅入るばかりである。
エリカは普段コンタクトをしてるが、その日は黒縁の眼鏡をかけ、大きなマスクをして、思い切って外に出た。
冷たく澄んだ外気がエリカにはひどく心地よかった。
エリカが深呼吸しようとした途端声を掛けられた。
「ほう、変装ですか? 木村エリカさん」
彼女がギョッとして振り向くと、フラッシュで目が眩んだ。
小柄な男がニヤニヤ笑いかけた。
「S社のものですが、お聞きしたい事があって」
ス
男は雑誌社の名を名乗った。
突然、雑誌記者が無辜の人間に取材をするのか?
何故こんな無礼な事されなきゃならないのか?
「私何も知りません」
エリカは上ずった声を出した。
「まだ何も言ってませんがね?」
男は舌舐めずりして卑しい表情を浮かべた。
訳の分からない衝動に駆られて、エリカは嫌らしい男に殴りかかろうとした。
その時脚が滑って、ぬかるみに転んだ。
彼女は大声を上げて泣いた。
元々傷つきやすく激しやすい心を隠していたエリカである。
目立たぬ様にして傷つくのを避けていたのに、次々襲う強いストレスが彼女の神経を狂わせた。
「こりゃキチガイだ」
男は慌てて逃げていった。
(続く)
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