読書の森

巷の雨 その5



事件は拍子抜けするほどあっけなく解決した。
梨華のブレスレットを売り払おうとした男が捕まったのだ。

細い純金のブレスレットは梨華が愛用していた物でくっきりと彼女の指紋が付いていた。
挙動不審の男を胡乱に思った店員が通報した。

住所不定無職の男の自白を聞いて、当局は当初の捜査が全く見当違いである事を悟った。

梨華の車は無人でロックもされていなかった。
通りかかった男は空の車を見て、誘惑にかられ車ごと盗む計画を立てた。

車を運転し出して、直ぐに異物に当たった感触があった。
外を見ると女が倒れていた。
女の身体が車から離れるまで引きずった。
麓の林の中で車を捨て、中にあった金目の物を奪っ逃げた。


「じゃあ、その女性は最初から道に倒れていたんだんね。
お前が眠らせたのじゃないか?」

男は強く否定した。
この1時間前、つまり薬を服用した時間、男はコンビニで買い物をしていたのである。
防犯カメラは男の言葉を裏付けていた。

では、何故梨華は薬を飲み、道に横たわっていたのだろう。

ここで再度検視の結果が見直された。
そして、彼女が初期の乳がんの罹っていた事に注目した。

迂闊な事に、警察はがんに罹っていた事と今回の事件を結びつけていなかったのだ。
彼女の不可思議な行動を、ガンの為に絶望した自殺とみれば全て理解出来る。

読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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