読書の森

山本周五郎 『五瓣の椿』



友達に、時代小説家山本周五郎の熱烈なファンがいた。
そこから私も山本周五郎を読む様になった。
読み出すとこれが止まらない。

山本周五郎は戦中戦後の日本に於いて読者の心を魅了した作家の一人である。
その作品の登場人物の優しさやそれ故の脆さが哀切に描かれている。


江戸の街を歩く市井の男女を描いての名手と言えば、藤沢周平や池波正太郎の名が上がるだろう。
山本周五郎はより以前の流行作家である。

山本周五郎は、彼らの陰で隠れた存在になってしまった様に思える。




戦時中の作品など読むと一見良妻賢母式で時代遅れに思える。
ただ、貧家に生まれ苦労した彼の初恋は憧れの名家の夫人だった。
実は彼は知的な面で優れた女、強い女が理想だった。
つまりいわゆる封建的なしきたりに盲従する女として描いていない。
この女性観は今に通じる。

彼は最初の妻に死なれてから、尚更酒を愛し花街に暮らした。
そこから、いい意味でも悪い意味でも、女の心と身体の弱さを熟知していた様に思える。


この実体験を基に女性を書き続けたことは、今では得難い作家なのかも知れない。

『菊千代抄』『おさん』『虚空巡礼』が特に私の好みではある。
独特の女性像でいつかブログに描いてみたい。

今日は『五弁の椿』を紹介する。
純粋な美しい女の自分の父を滅ぼされた恨み故の復讐である。
それが実の母親やその恋人、ひょっとして自分の実の父親(?)に向かっている点が悲劇である。

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