マンションの小窓から舗道が雨に濡れているのが見えた。
細い糸のような雨は小止みなく降り続いている。
「雨の日曜日か」
八田奈津美はため息をついた。
隆之からずっと電話がない。
Y社の優秀なSEとして、奈津美の勤めるK銀行にソフト開発の為に出向した薗田隆之は女子社員の憧れの的だった。
奈津美もその一人である。
しかし、K銀行1の美人と言われる三宅梨華が隆之のハートを射止めた様だ。
抜ける様に肌が白く、目鼻立ちの整った、スラリとした梨華は、やや冷たい印象は与えるが美人に違いない。
隆之と梨華が近く婚約するそうだと噂が流れた。
その同時期に奈津美は隆之から飲みに誘われた。
「からかわないで下さい!」
奈津美は一瞬怒りを露わにしたが、苦悩の色が濃く窶れた隆之を見て、誘いを受けた。
「あの人といると心が休まらないんだ」
ウイスキーを旨そうに舐めて彼は呟いた。
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