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読書の森

山田太一『終わりに見た街』

台湾をめぐる世界情勢がきな臭くなった今日、感染症に一般人が怯える今何を好んで、と思ってしまいますが、世情が不安に陥った時に戦いが起きやすいのは、哀しい事に歴史の常であります。

フォローする皆様のblogを読むと、日常的な優しい生活に戻れてとても平和な気分にです。

ただ、世の中全体は先の見通しがつかないです。余計なお節介ですが若い人、未だ職を得てない若者にとって過酷な世の中である事は確かです。
何らかの形で(例えば物価値上がり)避けて通れぬ戦争の問題について考えました。


山田太一の『終わりに見た街』は終戦記念日に何度か放映されてます。

非常にショッキングなドラマです。

1970年代の終わり頃、都会に住むごく当たり前のサラリーマン一家のお話です。
閑静な住宅地に家を持つ、それなりに仲の良い夫婦と子供、その一家団欒の時、突然世の中が変わります。
つまり、場所はそのままで昭和19年、太平洋戦争の激戦の時にタイムスリップしてしまいます。


豊かな物に囲まれていた筈の家庭は一変、戦後教育を受けた両親にとって耐えられないギリギリの毎日が続きます。ただただ戸惑って毎日の生活を維持するのにオタオタしている両親に比べて、子どもたちの適応力は素晴らしい?ものでした。
愛国心にキラキラ萌えて、彼らにとって不甲斐ない両親を「非国民!」と言うのです。
そして、この悪夢のような日々からやっと元に戻れた、その瞬間に見た馴染んだ場所は?

放映された2005年と比べ、もし今、この作品に接するとリアルな恐怖感に駆られものがあるのではないでしょうか?


作者山田太一は1934年東京浅草生まれ、両親は周辺地方の生まれですから、よくある典型的な下町っ子です。

この方は子供時代にモロに戦争を体験してます。
作品の基盤にこの辛い体験があるのか、と想像します。
それだけお話はリアルで怖いです。

視点を変えて、今の日本は史上一番独身者
の割合が多いそうです。若者に限らず団塊世代の高齢者もバブル世代の高齢者も然り、既婚者の死別を入れても、衝撃の数字です。逆に言えば個人主義の時代に変化してます。

最近の若い者は社会的視野が狭い、自分や若しくは自分の身の回りの事しか考えない、素直なのかただ上の命令に盲目的に従っているのか分からない、と見る向き(知識人のおじ様たち)は多いです。
この私も「もっと自分の意思で自分の頭で考えて欲しい」と文句つけてしまう。
しかし、戦争が起きた場合、全体主義や精神主義よりも遥かに個人主義者が多い方が良いと私は思います。
何故なら、万一自衛隊を志望する人が減って、徴兵制度になったら、忌避して反戦デモなどは起こさず「死ぬのイヤ」と閉じこもってしまう人?が多くなるかと思うのです。
純粋に国の為と考える人が少ない方が遥かに戦争を避けられる率が多いのでは?

ある知識人が「最近国を思う国を愛する人が減った」と言う主旨のエッセイをお書きになっています。私は当然日本の自然や国土文化を愛してますが、極端な話、さまざまな国の人が交わって、親戚になり世界全体で繋がる方が一つの国や主義で固まるよりも遥かに平和だ、と考えております。

どうか、終わりではなく、新しい時代の始まりでありますように!





読んでいただき心から感謝します。 宜しければポツンと押して下さいませ❣️

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