彼は著名な歌人斎藤茂吉の孫であり、大病院のお坊ちゃんでもあります。大病院とは実は病床の多い精神病院なのです!
代表的な作品『楡家の人々』をご覧になれば、非常にユニークな一族の歴史がお分かりになると思います。ただし、あくまでもフィクションなので、現実と離れた部分はあると思います。
北杜夫は個性溢れる家庭で医者になるべくお勉強したのですが、実は医学があまり好きじゃない、文学や昆虫採集、山登りの大好きなオタクだったのです。
彼は医者だった事と趣味だけ見れば、手塚治虫を彷彿とさせますが、手塚治虫先生と決定的に異なる点があります。
それは「躁鬱病」だった事です。本人が喧伝してるだけでなく、マイナーな著者を読めば誰でも分かります。
何らかのきっかけで、30代を超えてから、周期的に躁と鬱を繰り返して周囲を驚かした方でした。
一口に躁鬱と言っても桁違いの躁鬱なのです。
ある日からやたら株に狂って、印税で儲けた財産を0にしかけて、奥様から持ち金を没収されたり、大声で怒りまくって周囲を驚かしたり、が実際にあったそうです。
投薬(勿論その主治医は他人)すると大人しくなりますが、それが激しくって終日寝込んで何も出来なくなるそうです。
勿論ごく普通の生活をしてる時もあるようですが、閃きを要する創作活動はこの病いにとってよくないみたいです。作者の感性が鋭くならないとつまらない作品になってしまいますから。
本人としてはホントに辛かったとお察ししますが、北杜夫先生のお陰で世の中の躁鬱病患者がとても助かったのではないでしょうか?
躁鬱病だけでなく精神の病いに対する偏見を無くす為にとても貢献された方だと思います。
前置きが長くなりましたが、本著は『どくとるマンボウ青春記』の後、医局員としてドジな奮闘をする北杜夫先生と同僚を描いたものです。
しかし現在、本著が市場に出てるかどうか、私は非常に疑問があるのです。
それは精神科専門医の診断がいかに当てにならないものか、という内容が盛りだくさんに綴られているからであります。いかに常識とかけ離れてるか驚くべきものです。
もっとも1950〜60年の精神病院ですから、随分遅れてた部分があると思いますが。
病名もあやふやなのは当たり前、暴れる患者の脳内を手術して植物状態にしてみたり(ロボトミー)、大人しい患者をそれを良いことにして放置して痴呆状態にしたり、果ては部屋の不足で無理に個室に二人入れて一人が圧死したり、「ウソ、残酷過ぎ!」そのものです。
これは、北杜夫先生及び、精神科医の名誉を軽んじるものではなく、その病いに対する医学知識もお金も人員も不足していれば、哀しい結果になる事があるのではないでしょうか?
当時の斎藤先生(本名)は困難にめげずに頑張ったのですね。そして藪医者(?)として暖かい目で患者を見守っていたフィクションの混じったお話として読みたいと思います。
今も著名な文学者たちの当時の素顔が見えたりして面白い読み物です。
さて、久しぶりに炊飯器でケーキを作りました。
ホットケーキの素と牛乳と卵だけですが、ホットケーキの素の袋の表書きを読めば殆ど失敗しません。
お手軽ですが、太りますよー^_^