言語分析未来予測

上石高生
言葉の分析からの予測です。分析の正しさは未来に答えが出ます。分析予測は検証可能でなければなりません。

イチローの分析8

2008年01月29日 10時46分46秒 | 分析
 自分のことなのに言葉ではうまく説明できないことがある。
 自分自身というものが、あまりにも身近であるため、まるで目の前のまつげのように見えてない。そのためなんと説明していいか分からないのである。
 心理学での深層心理なども自分自身では説明付かないが、しかしこれらの学説以外の取るに足らないことは、さらに分からないこととなる。

 こんなときには言語分析が最適なのである。ある程度の情報があれば、それを元に分析できるのだ。


ナレーション 昨シーズン、イチローは激しい首位打者争いを演じた末に敗れ去った。敗北が決定的となった試合。イチローは人知れず目に涙を浮かべた。そのとき胸にあった思いは何か? 茂木が尋ねた。

茂木 あのー、(言いにくそうに)涙なんですけど……。ただ悔しい、っていうだけじゃない、なんか、いろんなものを感じたんですけども、あのときはどういう気持ちだったんですか?
イチロー (静かに)分かんないですね。未だに分かんないですね。
茂木 思わず、なんか涙がにじんじゃったんですか?
イチロー まっ、そうらしいですね。どうやら……。
茂木 自分でも、何か、よく分かんない、気持ちになった、っていうか?
イチロー まったく分かんないです。ただ、(間)分かんない方がいいよね、って感じも(笑い)、ありますけどね。
住吉 覚えてないわけじゃなく?
イチロー 覚えてはいます。
茂木 でも、あの、3打席目でダメだったら、今年の挑戦は終わったというのは自分の中で意識していたわけですか?
イチロー もちろんです。
茂木 首位打者とかはね、自分がどれだけベスト尽しても、競争相手がどういうパフォーマンスをするかによって、左右されちゃうじゃないですか。そういうことについてはどう考えているんですか?
イチロー まっ、以前の僕であれば、自分との闘いに挑んだと思うんですよね。それが人と闘えるレベルまで僕は来たと思ってます。だから勝ちたかったんですよ。自分と闘っているだけでいいなら、(間)まっ、楽でいいですね。でも僕はそこを越えてきたと2007年感じたので、相手も倒したかった。
茂木 すごいこと言われてますよね。だって、ここまで来て、やっと人と戦える準備ができたって、それ、どういう意味ですか?
イチロー まあ、思い返せば、まずプロ野球に入って思ったことは、まず人に勝つことだったんですよ。自分を高めることではなかった。(強く)まず人に勝つこと。でないと試合には出られないので。まっ、その目標を基に何年間かやったわけですね。で、それが、まあ、レギュラーとして一軍で出だして、まあ、何年かしたときに、まあ、敵は自分の中にいると、いうようなことはよく言われることでもあるんですけど、まさにそうだなと、いうように感じて、まっ、これまでやってきたんですけども。それがまた、敵を意識できるようになった。これは、また、というよりも、両方を加味していることですね。自分とも闘う。敵とも戦う。これが今の僕だと、思ってます。
茂木 それが、残念ながら負けちゃったわけですけど、やっぱり悔しかったんですか? それについては。
イチロー 悔しさが占めてますけども、でもそれだけではなかったですね、おそらく。
茂木 そこはまだ自分でも整理のついてないところなんですか?
イチロー 分かんないでしょうね。一生、分からないですよ。何で泣いたのかなんて……。


 首位打者争いに敗れたイチローはどうして試合中に涙を浮かべたのか?

 それは、緊張感が途切れたときの反動であろう。
 これはひじょうに不可解なものである。
 長い間、首位打者争いの中で闘ってきて、それが絶望となった。首位打者を取りたいという強い願望のため、今まで神経をすり減らすほどの苦労をしてきたというその抑圧が、張りつめた糸がぷっつんとキレた、そのとき、自分に、今までよくやった、と言い聞かすのだが、今まで抑圧的にあった精神状態が、それとはまったく反対の現象となって表われるのだ。

 もちろんイチローも「悔しさが占めてますけども」と言っているので、不安定であったことは間違いないが、「でもそれだけではなかったですね、おそらく」と察しているように、その不自然な抵抗感を思い出しているようだ。


テロップ イチローが目指すもの

茂木 何か、オスカー・ワイルドっていう作家がね、我々はみんなゴミための中にいるんだけど、何人かは星を見上げてるんだ、っていう言葉を残していて、僕、すごい好きな言葉なんですけど。やっぱりイチローさんはずうっと星を見ている人なのかなーって、お話を聞いていると何か思えるんですけどね。
イチロー 見たいですよ。
茂木 どんなときも?
イチロー 見たいですけど、見えてないですよ。そのときは。
茂木 でも、そのー、イチローさんが、星、見えないというのは、自分でも何か分からないものを追い求めているからなんですかね?
イチロー 分からないですね。うん。ただ満足をしてはいけないっていうことではないんですよ。満足は僕は重ねるべきだと思ってるんですよ。じゃないと人間のやる気なんて起きないですよ。何かを達成したときに、いや、まだまだ自分はこんなもんじゃないと、まだまだ上に行きたいんだと、戒めることって、まっ、よくありますよね。でも、それはねえ、自分を苦しめるだけだと思うんですよね。何かをしたら、まっ、大きな満足をしたらいいと思うんですよ。でもその後で、また何か出てくるんですよ。満足した後って、必ず出てくる。僕、それでいいと思うんですよ。僕、すごい、満足人間っていうか、めちゃくちゃ満足するんですよ。満足しないなんてことは、もう考えられないですよ。


 このようにイチローは「僕、すごい、満足人間っていうか、めちゃくちゃ満足するんですよ」と言っている。
 首位打者争いに敗れたことが決定的になったときも、イチローはきっと、「よくやった。すばらしいチャレンジだった」と、自分自身に言い聞かせたに違いない。しかしその争いがあまりにも過酷であったため、そのストレスや抑圧が、自分の満足しようという意識とは逆の反動となって表われた。それが涙だったのである。

 しかしそれは名刀についたほんのわずかな曇り程度のことでしかない。また新しいシーズンへ磨きをかければ、よりいっそうの輝きを取り戻すはずだ。




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