住吉 今年も、あのー、新しいバッティングで挑むんですか?
イチロー 2007年につかんだもので臨みます。(あっ、じゃ、変えない)ひとまずは。で、それでまた何かを感じれば、変えていく可能性はあります。
住吉 これまでは毎年変えてきたわけですよね。
イチロー 何か変わってますね。
住吉 それを変えないで行く、っていうことですか?
イチロー うん、それくらい今回つかんだものというものは、僕にとって揺るがないものなんではないかと現時点では思ってます。
住吉 2007年の変化は、じゃあ、根本から何かをつかんだ、っていうことなんですね。
イチロー (間)つかみましたね。まっ、16年という年月はあまりにも長かったですけれども、(長い間)より(間)作品という、表現できる、プレーができるんではないかと。結果としてそうなったんではなくて、俺はこれを作った、と表現できるようなスタートでもあったなというふうに感じてます。
茂木 じゃあ、毎年、新しいテーマに挑んできていろいろ試してきたのは、まさに実験で、これだ、って何か感覚がつかめたら、もう、それが不動の姿勢になる可能性もあるってことですね。
イチロー 可能性あるかもしれないですよ。ただ(また新しく)出てきて欲しいとも思っています。
茂木 ひょっとしたら、それをつかみかけてるかもしれない、と?
イチロー と思ってます。
イチローの分析3 - 言語分析未来予測
以前の分析では、「技能の発展性が、仕事での成果に比例している点は、芸術家と同様である。まるでピアニストなどの芸術家と同じようなレベルに到達しているようだ」と書いたが、まさにその通りなのである。今回の放送では、「より(間)作品という、表現できる、プレーができるんではないかと。結果としてそうなったんではなくて、俺はこれを作った、と表現できるようなスタートでもあったなというふうに感じてます」というように、その芸術家のような鋭敏さは、イチロー自身にも自覚的であったのだ。
イチローの分析4 - 言語分析未来予測
イチローが「2007年につかんだもの」とは何か?
選球眼とストライクゾーンに拘るということだろう。しかしそれでは、審判のジャッジと対立することにもなる。バットを止めたとしても、塁審からハーフスイングでのストライクをとられてしまうこともある。
ナレーション 9月19日。
実況 イチローの打率は3割5分2厘トップのオルドニエスは3割5分4厘。
ナレーション (センター前ヒット)3打数2安打。イチローはつい手に1厘差で打率首位に立った。残り試合は11。最後の遠征地、アナハイムに入った。いつもは流れるように進む練習。なぜかじっと考え込んでいた。ヒットが出ないまま迎えた第4打席。マウンドにはイチローが苦手とする数少ないピッチャー、シールズがいた。(ロサンジェルス・エンゼルス スコット・シールズ投手)空振りを誘う内閣のボール球。バットを止めた。しかし審判はパットは回ったと判定した。イチローはこれまでにない猛抗議を行なった。大事な何かがそこにあった。この日、オルドニエスに首位打者を明け渡した。
悪玉を打ってもヒットに出来る技術という、感覚的(主体的)なものを優先させると、審判の介入する余地がなくなる。だが、より客観的なストライクとボールの見極めなどを優先させようとすると、審判がより介入してしまうということになりかねないだろう。
「毎年、新しいテーマに挑んできていろいろ試してきたのは、まさに実験で、これだ、って何か感覚がつかめたら、もう、それが不動の姿勢になる可能性もある」ということが、イチローには「可能性あるかもしれないですよ。ただ(また新しく)出てきて欲しいとも思っています」とも思っている。結局、イチローは、2007年のやり方を続けるのである。
しかし本当に新しいものが出てこないのだろうか?
選球眼とストライクゾーンに拘る2007年は結果的には満足のいくものだったのだろう。しかしイチローには見落としているものがある。
野球というのは不思議なスポーツである。
元々そのルールはバッターに不利なものだ。
その理由は、3ストライクでバッターはアウトなのに、4ボールで一塁へ行くことにある。
バッターとピッチャーに平等であれば、3ストライク、アウトで、3ボール、での一塁への進塁であるべきだろう。
だから初球を1ストライク取られてしまえば、圧倒的にバッターが不利になるのだ。この時点でピッチャーは倍の攻撃の選択肢がある。
シーズン3割5分も打つイチローにとって、このような初球のボールの見極めは特に大事になってくる。だからこそ、選球眼とストライクゾーンに拘るのであろう。それはよく分かる。だが実はこれだけではないのだ。
イチローは鋭い感覚が武器であり、今まではそのとびきりの才能を活かしてきた。しかしそれをもっとより確かにするために、さらに変化させようと選球眼とストライクゾーンに拘る。
しかし大事なものを見落としている。
それは「駆け引き」だ。
たとえば、敵のピッチャーやキャッチャーはどうだろう?
1シーズンに200本以上の安打、3割5分以上も打つ天才バッターに対してどんな闘いをしてきたか?
みすみす打たれないように彼らも苦労して来たのだ。
速球の速さと、変化球を駆使して、配球を考え、さらにバッターとの駆け引きを、ピッチャーだけではなく、キャッチャーと協力までしてその場で考えているのである。
バッターは、ピッチャーとキャッチャーが協力した配球による攻撃を受けているのだから、そのような同じ土俵での駆け引きによる競い合いは不利だという考えもあるが、実はそうではないのだ。特に3割5分以上も打つ天才バッターであるからこそ、駆け引きを多少利用するだけでも大きな価値となるはずである。
問題なのは常に初球のボールの見極めである。それさえ可能であれば、イチローにとってそうとう有利に持ち込めるのだ。
しかしイチローは天性の鋭敏さで、ボールにも反応してしまい、手が出てしまう。
そこで、初球をバントの構えで待つことを提案したいのだ。
これなら、ボールに手が出るということはないはずだ。ストライクへ入ってくるなら、バントすればいい。
これがなぜ駆け引きになるのかといえば、ピッチャーとキャッチャーの利き腕にある。
キャッチャーが右利きである場合には、三塁寄りにバントとすれば、取ってからスローイングするときに身体の向きを変えなければならない。ピッチャーが左利きである場合にも、三塁寄りにバントすることで、同じく取ってからスローイングするときに身体の向きを変えなければならない。このことで1つか、2つ余計な動きが必要であるから、スローイングが遅れることになる。
イチローの足がメジャーリーグでも最速であるから、なおバントへの対応は完璧により速い動作で行わなければならないとプレッシャーを相手のバッテリーに与えることができる。
右利きのキャッチャーや、左利きのピッチャーであれば、このような理由から、バントの構えを見れば、ストライクを外すような心理となる、という予測である。
初球のボールを今までの半分でも見極められたら、後はバッターにとって50%の確率でストライクが来るので、通常の構えで待ってればいいことになる。
バッターにとっての初球の見極めの重要性
ピッチャーの選択的投球は、ボール4回、ストライク3回(ファールは考慮しない)。
バッターはストライクを打ちたい。ストライクが来る確率は7分の3である。43%。もともとバッターに不利な状況。
初球、ストライクを取られてしまえば、次にストライクが来る確率は、6分の2。33%。とても不利な状況。
初球、ボールを見極めて、次にストライクが来る確率は、6分の3である。50%。これで互角の状況。
初球は7分の3、つまり43%の確率でしかないので、バッターにとってはもともと不利なゲームがこの野球だ。それが50%の確率でストライクが来るというこの+7%は、3割5分以上も打つ天才バッターにとってはとても有利に思えることだろう。
しかしながらこの程度のことは、イチローにとっては釈迦に説法だ。それは私にもよく分かっている。
だが、選球眼とストライクゾーンに拘るのであれば、どうしても相手のバッテリーとの駆け引きに勝たなければならないことは事実である。その戦略さえ正しく立てられるのであれば、もはや審判の判定に苛立つことも、より少なくなるのではないかと思われる。
イチロー 2007年につかんだもので臨みます。(あっ、じゃ、変えない)ひとまずは。で、それでまた何かを感じれば、変えていく可能性はあります。
住吉 これまでは毎年変えてきたわけですよね。
イチロー 何か変わってますね。
住吉 それを変えないで行く、っていうことですか?
イチロー うん、それくらい今回つかんだものというものは、僕にとって揺るがないものなんではないかと現時点では思ってます。
住吉 2007年の変化は、じゃあ、根本から何かをつかんだ、っていうことなんですね。
イチロー (間)つかみましたね。まっ、16年という年月はあまりにも長かったですけれども、(長い間)より(間)作品という、表現できる、プレーができるんではないかと。結果としてそうなったんではなくて、俺はこれを作った、と表現できるようなスタートでもあったなというふうに感じてます。
茂木 じゃあ、毎年、新しいテーマに挑んできていろいろ試してきたのは、まさに実験で、これだ、って何か感覚がつかめたら、もう、それが不動の姿勢になる可能性もあるってことですね。
イチロー 可能性あるかもしれないですよ。ただ(また新しく)出てきて欲しいとも思っています。
茂木 ひょっとしたら、それをつかみかけてるかもしれない、と?
イチロー と思ってます。
イチローの分析3 - 言語分析未来予測
以前の分析では、「技能の発展性が、仕事での成果に比例している点は、芸術家と同様である。まるでピアニストなどの芸術家と同じようなレベルに到達しているようだ」と書いたが、まさにその通りなのである。今回の放送では、「より(間)作品という、表現できる、プレーができるんではないかと。結果としてそうなったんではなくて、俺はこれを作った、と表現できるようなスタートでもあったなというふうに感じてます」というように、その芸術家のような鋭敏さは、イチロー自身にも自覚的であったのだ。
イチローの分析4 - 言語分析未来予測
イチローが「2007年につかんだもの」とは何か?
選球眼とストライクゾーンに拘るということだろう。しかしそれでは、審判のジャッジと対立することにもなる。バットを止めたとしても、塁審からハーフスイングでのストライクをとられてしまうこともある。
ナレーション 9月19日。
実況 イチローの打率は3割5分2厘トップのオルドニエスは3割5分4厘。
ナレーション (センター前ヒット)3打数2安打。イチローはつい手に1厘差で打率首位に立った。残り試合は11。最後の遠征地、アナハイムに入った。いつもは流れるように進む練習。なぜかじっと考え込んでいた。ヒットが出ないまま迎えた第4打席。マウンドにはイチローが苦手とする数少ないピッチャー、シールズがいた。(ロサンジェルス・エンゼルス スコット・シールズ投手)空振りを誘う内閣のボール球。バットを止めた。しかし審判はパットは回ったと判定した。イチローはこれまでにない猛抗議を行なった。大事な何かがそこにあった。この日、オルドニエスに首位打者を明け渡した。
悪玉を打ってもヒットに出来る技術という、感覚的(主体的)なものを優先させると、審判の介入する余地がなくなる。だが、より客観的なストライクとボールの見極めなどを優先させようとすると、審判がより介入してしまうということになりかねないだろう。
「毎年、新しいテーマに挑んできていろいろ試してきたのは、まさに実験で、これだ、って何か感覚がつかめたら、もう、それが不動の姿勢になる可能性もある」ということが、イチローには「可能性あるかもしれないですよ。ただ(また新しく)出てきて欲しいとも思っています」とも思っている。結局、イチローは、2007年のやり方を続けるのである。
しかし本当に新しいものが出てこないのだろうか?
選球眼とストライクゾーンに拘る2007年は結果的には満足のいくものだったのだろう。しかしイチローには見落としているものがある。
野球というのは不思議なスポーツである。
元々そのルールはバッターに不利なものだ。
その理由は、3ストライクでバッターはアウトなのに、4ボールで一塁へ行くことにある。
バッターとピッチャーに平等であれば、3ストライク、アウトで、3ボール、での一塁への進塁であるべきだろう。
だから初球を1ストライク取られてしまえば、圧倒的にバッターが不利になるのだ。この時点でピッチャーは倍の攻撃の選択肢がある。
シーズン3割5分も打つイチローにとって、このような初球のボールの見極めは特に大事になってくる。だからこそ、選球眼とストライクゾーンに拘るのであろう。それはよく分かる。だが実はこれだけではないのだ。
イチローは鋭い感覚が武器であり、今まではそのとびきりの才能を活かしてきた。しかしそれをもっとより確かにするために、さらに変化させようと選球眼とストライクゾーンに拘る。
しかし大事なものを見落としている。
それは「駆け引き」だ。
たとえば、敵のピッチャーやキャッチャーはどうだろう?
1シーズンに200本以上の安打、3割5分以上も打つ天才バッターに対してどんな闘いをしてきたか?
みすみす打たれないように彼らも苦労して来たのだ。
速球の速さと、変化球を駆使して、配球を考え、さらにバッターとの駆け引きを、ピッチャーだけではなく、キャッチャーと協力までしてその場で考えているのである。
バッターは、ピッチャーとキャッチャーが協力した配球による攻撃を受けているのだから、そのような同じ土俵での駆け引きによる競い合いは不利だという考えもあるが、実はそうではないのだ。特に3割5分以上も打つ天才バッターであるからこそ、駆け引きを多少利用するだけでも大きな価値となるはずである。
問題なのは常に初球のボールの見極めである。それさえ可能であれば、イチローにとってそうとう有利に持ち込めるのだ。
しかしイチローは天性の鋭敏さで、ボールにも反応してしまい、手が出てしまう。
そこで、初球をバントの構えで待つことを提案したいのだ。
これなら、ボールに手が出るということはないはずだ。ストライクへ入ってくるなら、バントすればいい。
これがなぜ駆け引きになるのかといえば、ピッチャーとキャッチャーの利き腕にある。
キャッチャーが右利きである場合には、三塁寄りにバントとすれば、取ってからスローイングするときに身体の向きを変えなければならない。ピッチャーが左利きである場合にも、三塁寄りにバントすることで、同じく取ってからスローイングするときに身体の向きを変えなければならない。このことで1つか、2つ余計な動きが必要であるから、スローイングが遅れることになる。
イチローの足がメジャーリーグでも最速であるから、なおバントへの対応は完璧により速い動作で行わなければならないとプレッシャーを相手のバッテリーに与えることができる。
右利きのキャッチャーや、左利きのピッチャーであれば、このような理由から、バントの構えを見れば、ストライクを外すような心理となる、という予測である。
初球のボールを今までの半分でも見極められたら、後はバッターにとって50%の確率でストライクが来るので、通常の構えで待ってればいいことになる。
バッターにとっての初球の見極めの重要性
ピッチャーの選択的投球は、ボール4回、ストライク3回(ファールは考慮しない)。
バッターはストライクを打ちたい。ストライクが来る確率は7分の3である。43%。もともとバッターに不利な状況。
初球、ストライクを取られてしまえば、次にストライクが来る確率は、6分の2。33%。とても不利な状況。
初球、ボールを見極めて、次にストライクが来る確率は、6分の3である。50%。これで互角の状況。
初球は7分の3、つまり43%の確率でしかないので、バッターにとってはもともと不利なゲームがこの野球だ。それが50%の確率でストライクが来るというこの+7%は、3割5分以上も打つ天才バッターにとってはとても有利に思えることだろう。
しかしながらこの程度のことは、イチローにとっては釈迦に説法だ。それは私にもよく分かっている。
だが、選球眼とストライクゾーンに拘るのであれば、どうしても相手のバッテリーとの駆け引きに勝たなければならないことは事実である。その戦略さえ正しく立てられるのであれば、もはや審判の判定に苛立つことも、より少なくなるのではないかと思われる。