Notes3~ヨミガタリストダイアリー

名古屋市在住の俳優/朗読者・ニシムラタツヤの演(や)ったり読んだりの覚え書き

アートマネジメント基礎講座第1回「地域における劇場の役割」

2010年07月08日 |  文化行政とか
■行ってきました。リアルタイムでも漏らしましたが、ここでは主に講義を聴いた後に考えたことをまとめておきたいと思います。
■平田オリザさんの話を聞いて、要所要所でtsudaったりしたのですが、その中に「あらかじめ主催者側から求められたテーマに即して話されているのでは?」という反応がありました。考えてみればそれもそうで、首都圏の演劇関係者の間ではすっかり話題や議論の中心になっていると推察される「劇場法(仮)」の話に移るまでに、クッションみたいな役割として「地域における劇場の役割」というタイトル設定で、しかもそこに根付く芸術文化が社会にどのような効用をもたらすかなんていうごく基礎的なところを説くのにかなりの時間を割くことになりました。それはきっと、愛知県という地方がその経済的体力に比して、あまりに芸術文化政策に関する資本の蓄積がないという認識に基づいていたからだと思います。
■経済面では、顧客の消費トレンドを緻密に分析し、流通コストを極限まで削って競争が行われています。POSシステムが全国余す所なく張り巡らされているのその象徴とも言えるでしょう。平田さんは特にチェーン店化が進む書店をさして「市場経済によって公然と思想統制が行われている」としました。つまり、売れる本しか置かなくなった書店に集う人々が、ある方向の思考と見識に収斂(しゅうれん)されてゆく。そのことによって、「その地域でなければならない」という独自性、固有の意味が削ぎ落とされ、徐々にコミュニティの力が失われてゆくー。芸術及び文化はその流れに抗して地域を再構築する力を持っている、とも。それが他地域に向かって表出される例が「観光」であり、大規模イベント偏重で活力をなくしていた大阪が、繁昌亭のオープンで蘇った部分があることなどの話がなされました。
■私には、劇場はその拠点として捉え直されるべきではないのか、という風に聞こえました。おそらく劇場法(仮)も、そのような方向で検討が重ねられているだと推測します。全国3,000館とも言われる「公共ホール」の中で、名古屋を中心とする愛知県にも、全国公文協のデータベースを見れば90カ所の名前があります。地域住民の方のボランティア組織が立ち上がり、自主事業の企画立案や当日運営のサポートなどに当たられている施設は随分増えてきました。しかし、その中で買取り公演ではない事業を立案し、アーティストと協働し、かつ芸術として一定の水準以上の作品や催事を発信している/しようとしている施設がいくつあるのかといえば、ぐっと数が絞られてしまいます。それを継続しているところとなると…、あくまで演劇のみですが、リーディングホールである愛知県芸術文化センターを含めて、長久手町文化の家、碧南市芸術文化ホール(シアターサウス)、「とよた演劇アカデミー」の豊田市民文化会館、この8月に東三河演劇祭2010が開幕する豊川市の2ホール(ウインディアホール【音羽文化ホール】ハートフルホール【御津町文化会館】)くらいでしょうか(名古屋市の各劇場は枝葉が長くなるのでとりあえず除きます)。朗読をやっている「アーティスト」の端くれとしては、これまで自分が身を置いてきた作品創りの現場とともに、地域を創る、創り直す現場にも積極的に入って行くことが求められるのだなと強く感じました。
■もっと考えを深めて書いておかねばなりませんが、今日はこれから大阪に向かいますので、ここまでということで。

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