腹話術人形けんちゃんの日記

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5月31日(水)の英語版「人間失格」の英語の日本語訳・2017年6月2日(金)

2017-06-02 06:03:55 | 日記
5月31日(水)の英語版「人間失格」の英語の日本語訳

英語版「No Longer Human」は、Translated by Donald Keene を使用しています。
 
 療養所とばかり思っていました。

自分は若い医師のいやに物やわらかな、鄭重な診察を受け、それから医師は、

「まあ、しばらくここで静養するんですね」と、まるで、はにかむように微笑して言った。
 
省略

けれども、自分はそれからすぐに、あのはにかむような微笑をする若い医師に案内せられ、

或る病棟にいれられて、ガチャンと鍵をおろされました。精神病院でした。

 女のいないところへ行くという、あのジアールを飲んだ時の自分の愚かなうわごとが、

まことに奇妙に実現せられたわけでした。その病棟には、男の狂人ばかりで、看護人も

男でしたし、女はひとりもいませんでした。

 いまはもう自分は罪人どころではなく、狂人でした。いいえ、断じて自分は狂って

などいなかったのです。一瞬間といえども、狂った事は無いんです。

けれども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそうです。

つまり、この病院にいれられた者は気違い、いれられなかった者は、ノーマルという事になるようです。

省略

そうしてここに連れて来られて、狂人という事になりました。いまに、ここから出ても、

自分はやっぱり狂人、いや廃人という刻印を額に打たれる事でしょう。

 人間、失格。

 もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。