実家は古い日本家屋です。
濡れ縁に続く廊下側のガラス戸を網戸に替えて家の中の障子を開け放っておくだけで、風が抜けていきます。
夏は家の中から小さな庭の植え込みをながめながら、よく冷えたスイカと麦茶で涼をとったものです。
当時私は付き合っていた人がいて、その夏その人を連れて実家に戻っていました。
妹も夏休みで在宅中。両親も一緒にみんなで素麺でも食べようという事になったと記憶しています。
ワイワイと準備をはじめた時、彼が煙草をきらしたのでちょっと買ってくると言い出しました。
自販機は表通りにあります。
一緒に行こうかといいましたが、わかるから大丈夫、といって彼は1人ででかけていきました。
麺もゆで上がり、付け合わせのおかずの用意も整った時、庭をさっと横切る人影がありました。
わたしは彼が戻ったのだと思い、玄関の引き戸の鍵を開けに出ました。が、そこには誰もいないのです。
最初にお話ししましたが、実家は古い日本家屋です。
ぐるりと塀と生け垣に囲われていて、裏口を入るとそのまま庭を横切り表玄関にたどり着くようになっています。
狭い庭なので、玄関までたいした時間もかかりません。
なのに、玄関の引き戸を開けたそこには誰ひとり見当たらないのです。
横切ったのは男の人でした。
冷静に考えれば、いささか異常だったのはその早さです。ススッ……という表現がピッタリでした。
歩くと人の頭は微妙に上下するものですが、頭の位置はまったく変わらないまま横に移動していました。
そして背の高さについても植え込みを基準に目測すると、あり得ない高さが導き出されるのです。
さらに目に残っている残像のそれは、頭に白い帽子を被っていました。彼は帽子をかぶりません。
間もなく、裏木戸が開いて今度こそ買い物に出た彼が帰ってきました。
さっき帰ってきてもう一度出たのか?と尋ねると、
今戻ったばかリなのに、なにをいっているんだ?ねぼけたのか?と笑われました。
頭に白い帽子をかぶって庭を横切ったのは、誰だったのでしょう?
私が錯覚したのかもしれません。
心当たりは、ない事もないのです。
20年近く前に他界した祖父は、夏のこういう時期には決まってカンカン帽と呼ばれた白いパナマ帽子を被り、
絽の着物を着て出かけていきました。初孫の私を目に入れても痛くないほどかわいがってくれた人でした。
旧盆のころの話です。
濡れ縁に続く廊下側のガラス戸を網戸に替えて家の中の障子を開け放っておくだけで、風が抜けていきます。
夏は家の中から小さな庭の植え込みをながめながら、よく冷えたスイカと麦茶で涼をとったものです。
当時私は付き合っていた人がいて、その夏その人を連れて実家に戻っていました。
妹も夏休みで在宅中。両親も一緒にみんなで素麺でも食べようという事になったと記憶しています。
ワイワイと準備をはじめた時、彼が煙草をきらしたのでちょっと買ってくると言い出しました。
自販機は表通りにあります。
一緒に行こうかといいましたが、わかるから大丈夫、といって彼は1人ででかけていきました。
麺もゆで上がり、付け合わせのおかずの用意も整った時、庭をさっと横切る人影がありました。
わたしは彼が戻ったのだと思い、玄関の引き戸の鍵を開けに出ました。が、そこには誰もいないのです。
最初にお話ししましたが、実家は古い日本家屋です。
ぐるりと塀と生け垣に囲われていて、裏口を入るとそのまま庭を横切り表玄関にたどり着くようになっています。
狭い庭なので、玄関までたいした時間もかかりません。
なのに、玄関の引き戸を開けたそこには誰ひとり見当たらないのです。
横切ったのは男の人でした。
冷静に考えれば、いささか異常だったのはその早さです。ススッ……という表現がピッタリでした。
歩くと人の頭は微妙に上下するものですが、頭の位置はまったく変わらないまま横に移動していました。
そして背の高さについても植え込みを基準に目測すると、あり得ない高さが導き出されるのです。
さらに目に残っている残像のそれは、頭に白い帽子を被っていました。彼は帽子をかぶりません。
間もなく、裏木戸が開いて今度こそ買い物に出た彼が帰ってきました。
さっき帰ってきてもう一度出たのか?と尋ねると、
今戻ったばかリなのに、なにをいっているんだ?ねぼけたのか?と笑われました。
頭に白い帽子をかぶって庭を横切ったのは、誰だったのでしょう?
私が錯覚したのかもしれません。
心当たりは、ない事もないのです。
20年近く前に他界した祖父は、夏のこういう時期には決まってカンカン帽と呼ばれた白いパナマ帽子を被り、
絽の着物を着て出かけていきました。初孫の私を目に入れても痛くないほどかわいがってくれた人でした。
旧盆のころの話です。
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