黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

法科大学院生に欠けているものは?

2005-12-19 13:34:17 | 司法(平成17年)
 弁護士会の忘年会で,黒猫のオリジナルが先輩の弁護士から聞いた話です。
 その先生は,実地研修の法科大学院生を何人か受け入れたそうで,その感想として「頭はいいし,知識も相当あると思う。しかし,法的知識を文章で表現する能力がない。」と仰っておられました。
 今まで聞いたぼろくそのロー生評よりは,はるかにまともで冷静なご意見だと思いますが,よく考えてみると,文章力がないというのはある意味最も致命的な欠点ではないでしょうか。

 現行試験では,論文試験突破が最大の難関となるため,受験勉強の多くは論文試験の答案作成練習に費やされます。この過程で,法律文書独特の言い回しや論理構成の仕方など,法律家に必要な法律文書の作成能力を身につけるわけです。
 そして,司法修習(実務修習を含む)で修習生がやることは,8割以上が法律文書の作成であり,法曹としての実務に就いてからも,やることの大半は「書くこと」ばかりです。
 また,法律事務所では,弁護士資格を持たない事務員(いわゆる「パラリーガル」であっても,経験を積んでかなりの法律知識を持っている人が結構いますが,そういう人でも,弁護士並みに正確な法律文書を書ける人はなかなかいません。法律上の権限以外に,弁護士と「よくできるパラリーガル」の実質的な違いは,法律文書の作成能力の違いだといっても過言ではないと思います。

 それが,法科大学院中心の法曹養成過程により法律文書作成の訓練がおろそかにされ,十分な文書作成能力を持たない人が多数法曹として出てきた場合,「よくできるパラリーガル」との差が実質的になくなり,実際にも「よくできるパラリーガル」程度の処遇しかできない可能性があります。
 それに,現行の司法修習では,二回試験に落ちる人は(最近多くなったとはいっても)せいぜい全体の3%程度に過ぎませんが,文書作成能力の訓練をしないまま司法修習に突入すれば,筆記試験中心である二回試験で落とされる人が爆発的に増える可能性もあります。
 これは,法科大学院生が悪いわけではなく,明らかにおかしな法曹養成制度を作った人間の責任なのですが,なまじ初年度の法科大学院には高い競争率のもと優秀な人材が多数入ってきたと思われるだけに,その人たちが適切な教育を受けられず法曹失格の烙印を押される事態になるのは,あまりに不合理と思われます。
 でも,法科大学院の競争率が高かったのは,たしか最初の年だけでした。
 そうすると,法科大学院が定員割れしている2年目,3年目以降の法科大学院生については,下手をすると「頭の良さ」「素質の優秀さ」すらも期待できない可能性があるということになり,突き詰めて考えると,法科大学院制度によってそもそも法曹界にあまり優秀な人が入ってこなくなり,法科大学院制度が日本の法曹にとって「終わりの始まり」を意味することになってしまうかもしれません。

 とりあえず,法科大学院在籍の皆さんでこのブログを読んでいる人がいたら,少なくとも「法律文書を書く」トレーニングだけはきちんとやってください。新司法試験に合格しても,最近は就職試験で筆記試験を課す法律事務所もあるようですから,現行試験の論文に合格できる程度の法律文書作成能力は絶対に必要です。


1 コメント

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Unknown (brave)
2005-12-19 19:27:09
内容が長くなってしまいましたので、自分のブログの方に意見を書きました。

もしよろしければ、またご意見ください。
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