黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

日弁連の会長選挙

2005-12-27 19:51:14 | 司法(平成17年)
 現在,弁護士業界では,来年の日弁連会長選挙をめぐって激しい選挙戦の真っ最中です。弁護士会の選挙活動は主にFAXで行われるため,うちの事務所にも各候補者やその支持団体からのFAXがうるさいほど届いています。
 今回の候補者は,現執行部派と目される平山正剛氏,二弁のビジネス派とでも言うべき久保利英明氏,そして司法改革のほとんどに反対する高山俊吉氏。
 私が現時点で久保利氏支持であることは以前書いたとおりですが,最近来たFAXの記事で気になったものについて若干コメントします。

1 平山氏陣営-「地方の若手と負担をシェアしよう」?
 12月26日付けのFAXによると,平山氏陣営は,「都市部の一定以上の大規模事務所に対し,規模に応じて弁護士を一定期間公設事務所への派遣を義務づけ,地方の公益活動の負担を都市部の弁護士が分担する仕組み(例えていえば「ビジネスロイヤー・エクスターンシップ」制!?)を導入すべきであると考えているそうです。
 一見良いような提案にも見えますが,都心の大手渉外事務所などは大反対するでしょうし,地方の弁護士にとっても「仕事を取られる」などという理由であまり積極的な支持は得られないような気がします。ビジネス弁護士の数は近年急速に増えてますから,大手渉外事務所を敵に回すと当選できないかもしれませんよ。

2 久保利陣営-弁護士の専門認定
 久保利陣営は,ビジネス弁護士だけにお金があるのか,カラー印刷の新聞「明日の司法を創る会NEWS」を郵送で送ってきました。
 久保利陣営は,弁護士の「2007年問題」(2007年には,早くも弁護士の新規登録者が約2300人も出てくる計算になり,その後も毎年2000人以上出てくることになるので,修習生の就職先が見つからないのではないかという問題)対策を真剣に訴えていて,対策の一環として「弁護士の専門認定制度」導入も訴えています。
 弁護士の専門認定というのは,アメリカではすでに行われていて,破産事件なら破産弁護士という専門認定を受けてはじめて仕事ができるようになるような仕組みになっているのですが,こういったことを日本でもやろうというもの。
 黒猫はこれには大賛成で,むしろ「なぜ今までやらなかったのか」と言いたいくらいです。会社法に「法律参与」なんて役職を創るのがよいのかという問題は措くとしても,弁護士3000人とかいう時代が来る以上,このくらいのことをやらなければ弁護士業界は生き残れないと思います。

3 高山氏陣営-「3000人をやめさせよう」
 高山氏陣営は,黒猫がその主張を読んだとき「政権担当能力がないのではないか」と思ったほど感情的なことしか言っていないのですが,弁護士の大増員をやめさせるという主張で押しまくり,思ったより結構な支持を集めているようです。
 高山氏陣営の12月26日付けFAXによると,内閣府の規制改革・民間解放推進会議は,法科大学院出身者の7~8割合格を実現し,さらに現行試験組にも合格の途を開くため「1年9000人」という冗談のような数字を提案しているそうで,これは弁護士業界でも話題になっています。
 高山氏陣営は,増員に積極的だった人たちが今更業務対策の必要性を説くのは単なる「自作自演」であると批判しており,この激増時代に「勝ち組」に残るようなうまい話などありえないという現実を直視すべきであり,増員を容認してきた日弁連の姿勢を変えるべきであると主張しています。
 黒猫としては,年間1500人でも長期的にはかなり弁護士が増える計算になるので,年間3000人ではアメリカみたいに弁護士過剰の国になるのではないかと思っていますが,この高山陣営の主張はなんか後ろ向き過ぎて,とても好きにはなれません。


7 コメント

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Unknown (PINE)
2005-12-27 21:37:22
なんか、いろいろFAXやら雑誌やらが来るなぁと思っていたら、なるほど・・・勉強になりました。

地方にいると静かなもので、東京中心に行われている熾烈な争いが実感できません。

なるほど (yjochi)
2005-12-27 22:37:34
最近、いろいろな郵便物や豪華なパンフレットが沢山来るなーと思っていたら、日弁連の会長選挙のせいだったんですね(笑)。

関心度低いですね~。 (黒猫)
2005-12-28 12:49:48
PINE様,yjochi様(落合先生),コメントありがとうございます。

送る方は必死で書いて送っているんでしょうが,肝心の受け取る先生方が「そもそも日弁連会長選挙の選挙運動だとは知らない」と聞いたら,卒倒するかもしれませんね。
黒猫さんは東京ですか (ろぼっと軽ジK)
2005-12-28 16:31:43
わたくし、結構読んでます。誰に投票するか、決めかねている点は自分のブログでも辛辣に述べてます。ただ、選挙が白熱することであと数年後の弁護士会を取り巻く情報がビンビン発信されている点はGOODと評価してます。各候補者の対策に実効性が感じられず訴えているだけの印象をぬぐえないので投票者を決めかねているのです。

専門認定が必要で歓迎すべきことは認めます。が、その制度を導入することがどれだけ来るべき問題の対策として有効かといえばギモンです。

ここ最近の動きをみていて、2007年問題などは弁護士会に解決能力はないと見切りを正直つけてます。
私は東弁です。 (黒猫)
2005-12-30 17:44:56
ろぼっと軽ジKさん、コメントありがとうございます。

まあ、日弁連に現在抱える様々な問題の解決能力を期待するのは私も無理だと思いますから、「誰を会長にすれば、今後の日弁連が少しでもましな方向に動くか」という視点で決めるしかないでしょう。
Unknown (黒豚)
2006-01-16 00:43:36
いづれにせよ9000人合格は実現する。いままでの弁護士の殿様をみなおさなければ日本は駄目になる。

現役の弁護士の方は反対するでしょうが。
アメリカでも? (こる)
2006-01-24 13:13:53
はじめまして。

私自身は留学中のために情報が全く不足しているので、このようにまとめて書いていただけると実は非常にありがたかったりします(郵送投票なんてのも今年からできるそうですし)。

でも、「アメリカではすでに行われて」いる弁護士の専門認定制度というのがちょっと気になります。アメリカでは、何々の専門であるということは倫理規則上基本的には宣伝してはいけなくて、ただ「○○法律家協会所属」みたいに専門家のグループに入っているといった事実は宣伝していい、というルールだったと記憶しているのですが・・・。

あと、もしそんな制度を作っても、弁護士全体の利益にはならないのでは、と思います。ただ、新たな権益を生み出すだけでは、という気がして。



オリジナルの主張を見れない状態なので、内容の誤解があったらすみませんです。