『AERA』06年4月24日の76~77ページに,『調停委員は何様なのか』という記事が載っています。
この記事については,すでに町村教授がコメントを出されているようですが(ボツネタ経由で知りました),黒猫もこの記事に関する感想をコメントしたいと思います。
家庭裁判所や簡易裁判所の調停委員については,以前から当たりはずれがあると言われており,利用者から不満の声が絶えないことは黒猫も聞いていますが,記事によると,東京家庭裁判所も,そういった不満の声は把握しているが,
「不平不満は,多くの場合,自分の思い通りの結果にならない時に出ることが多い。調停委員は当事者に対して紛争を解決するために適正妥当な解決案を示しているので,どちらか一方の意見を取り入れているわけではないことを理解していただきたい」というコメントを出しているようです。
これは,調停に限らず弁護士の業務その他司法制度全体についても当てはまることかもしれませんが,調停の利用者が調停委員や調停制度そのものに対し不満を抱くケースというのは,大きく次の3種類に区別できます。
1 当事者の言い分には法律上(または道義上)それなりの理由があるのに,調停委員がそれをちゃんと聞き入れないケース
これは,アエラの記事で紹介されている,DV被害者に対し調停委員が不用意な言動で二次被害を与えてしまう,調停委員の古い価値観を押しつけられる,調停委員が法律を知らない,居眠りして話を聞かないといった,調停委員の側に大きな問題のあるケースですね。
2 当事者の言い分には法律上も道義上も理由はないが,調停委員がそれをきちんと説明できないために,当事者が納得できないケース
例えば,結婚してから会社を興し大金持ちになった男性の相談者が,妻と離婚するにあたり,妻は事業に関し何のリスクも負っていないのに財産を半分も持って行かれるのはおかしいと主張していたのに対し,黒猫が「そのような場合の妻は,会に事業債務について保証人などにはなっていないとしても,あなたが事業に失敗したら妻自身も到底無事では済まないでしょう。だから,リスクを負っていないとはいえないと思いますよ」と諭したら,意外とあっさり納得してくれたことがあります。
法律上・道義上到底受け入れられないような主張をしている当事者であっても,自分の主張がなぜ受け入れられないのか分かりやすく説明してくれれば,納得することもあるわけですが,そのような場合でも,誰も説明してくれなければ当事者は不満を持ったままであり,それが調停制度に対する不満につながるわけです。
ただ,実際にこのような説得をするには,場合によっては深い法律知識とカウンセリング能力の両方が必要であり,このような能力をボランティアに近い調停委員すべてに要求するのは,あるいは酷であるのかもしれません。
3 当事者の言い分には法律上も道義上も理由はなく,調停委員の説明の仕方にも特に問題はないが,それでも当事者が聞き入れないケース
黒猫がいままで聞いた話では,彼女に振られた男性が,彼女と準内縁関係にあったと主張して準内縁関係調整(円満調整)の調停を申し立ててきたケース(その男性はいかにもストーカーっぽい人だったらしい)とか,20代で子供のいる男性が妻と離婚するにあたり,調停で「自分はまだ若いのに,どうしてこんな高い養育費を延々と支払い続けなければならないのか」と逆切れしたケースなどがありますが,黒猫もさすがにこのような人を説得できる自信はありません(黒猫は産業カウンセラー資格を持っており,一応カウンセラーのはしくれではありますが)。
このようなケースについて,当事者から苦情が来たからといって裁判所が調停委員に注意しようとしても,逆に調停委員の方が怒るでしょう。
家庭裁判所が,前記引用したコメントのように突き放したことを言っているのは,実際の苦情の中には明らかに上記3に該当するようなケースも相当数あり,仮に1や2に該当する疑いのあるケースであっても,現場を見ていない裁判官などがそのように事実認定をするのは相当難しい,という問題もあるからではないかと思われます。
実際の調停では,調停担当に回せる裁判官の人数が限られているため,調停で裁判官が出てくるのはせいぜい第1回の冒頭と調停調書を作るときくらいであり(そのときも順番待ちで相当待たされることがある),そのとき以外は2人の調停委員が実質的に調停手続きを仕切っているというのが実態ですから(調査官は,子の親権が問題になる事件などでたまに出てくる程度),裁判所が調停委員の実態を把握し,適切な研修や指導を施すのは,このような意味でも難しいと思います。
なお,上記アエラの記事で引用されている町村教授(今記事を読んでいて気が付きましたが,町村教授は,ブログでコメントを出されているだけではなく,記事のライターから取材も受けていたんですね。)のコメントでは,「今の法廷ではできませんが,ADR法によってカウンセリング機能も含めた民間の調停機関が活用されるようになるのではないでしょうか」とありますが,黒猫はこの点については意見を異にします。
上記1・2のような事案について適切に対処できる,法律知識とカウンセリング能力の両方を併せ持った調停担当者を養成するには,おそらく相当な時間と費用がかかるはずであり,民間の調停機関がそれをやろうとしたら,利用者からかなり高額の料金(1件数十万円くらい?)を取らないと採算は取れないと考えられます。
しかも,多額の費用を払って民間の調停手続きを利用するのであれば,上記3の類型に属する当事者はもっとわがままになるでしょうから,おそらく調停担当者がどんなに研鑽を積んでも苦情は止まず,家庭紛争を取り扱うADRの事業はまさしく火中の栗を拾うようなものになる可能性もあります。
一方,家庭裁判所の調停手続きは,弁護士を代理人に付けずに自分でやる場合,申立手数料はわずか1,200円。予納郵券などの諸費用を含めても1万円を下回る程度の極めて安価な費用で利用できます。
離婚当事者の大半は別にお金持ちというわけではありませんから,いくら家庭裁判所の調停制度に不満があるといっても,わざわざ高い費用を払って,まだ何の実績もない民間の調停機関を敢えて利用する人がたくさん出てくるとは思えません。
個別労働事件など,そもそも家庭裁判所のような公的紛争解決機関が整備されていない類型の事件や,当事者が多額のお金を払える企業間の国際取引紛争といった事件については,民間の紛争解決機関であるADRが発達する可能性もあるかもしれませんが,家庭紛争関係のADRは,そもそも事業として成り立たない可能性が高いのではないでしょうか。
この記事については,すでに町村教授がコメントを出されているようですが(ボツネタ経由で知りました),黒猫もこの記事に関する感想をコメントしたいと思います。
家庭裁判所や簡易裁判所の調停委員については,以前から当たりはずれがあると言われており,利用者から不満の声が絶えないことは黒猫も聞いていますが,記事によると,東京家庭裁判所も,そういった不満の声は把握しているが,
「不平不満は,多くの場合,自分の思い通りの結果にならない時に出ることが多い。調停委員は当事者に対して紛争を解決するために適正妥当な解決案を示しているので,どちらか一方の意見を取り入れているわけではないことを理解していただきたい」というコメントを出しているようです。
これは,調停に限らず弁護士の業務その他司法制度全体についても当てはまることかもしれませんが,調停の利用者が調停委員や調停制度そのものに対し不満を抱くケースというのは,大きく次の3種類に区別できます。
1 当事者の言い分には法律上(または道義上)それなりの理由があるのに,調停委員がそれをちゃんと聞き入れないケース
これは,アエラの記事で紹介されている,DV被害者に対し調停委員が不用意な言動で二次被害を与えてしまう,調停委員の古い価値観を押しつけられる,調停委員が法律を知らない,居眠りして話を聞かないといった,調停委員の側に大きな問題のあるケースですね。
2 当事者の言い分には法律上も道義上も理由はないが,調停委員がそれをきちんと説明できないために,当事者が納得できないケース
例えば,結婚してから会社を興し大金持ちになった男性の相談者が,妻と離婚するにあたり,妻は事業に関し何のリスクも負っていないのに財産を半分も持って行かれるのはおかしいと主張していたのに対し,黒猫が「そのような場合の妻は,会に事業債務について保証人などにはなっていないとしても,あなたが事業に失敗したら妻自身も到底無事では済まないでしょう。だから,リスクを負っていないとはいえないと思いますよ」と諭したら,意外とあっさり納得してくれたことがあります。
法律上・道義上到底受け入れられないような主張をしている当事者であっても,自分の主張がなぜ受け入れられないのか分かりやすく説明してくれれば,納得することもあるわけですが,そのような場合でも,誰も説明してくれなければ当事者は不満を持ったままであり,それが調停制度に対する不満につながるわけです。
ただ,実際にこのような説得をするには,場合によっては深い法律知識とカウンセリング能力の両方が必要であり,このような能力をボランティアに近い調停委員すべてに要求するのは,あるいは酷であるのかもしれません。
3 当事者の言い分には法律上も道義上も理由はなく,調停委員の説明の仕方にも特に問題はないが,それでも当事者が聞き入れないケース
黒猫がいままで聞いた話では,彼女に振られた男性が,彼女と準内縁関係にあったと主張して準内縁関係調整(円満調整)の調停を申し立ててきたケース(その男性はいかにもストーカーっぽい人だったらしい)とか,20代で子供のいる男性が妻と離婚するにあたり,調停で「自分はまだ若いのに,どうしてこんな高い養育費を延々と支払い続けなければならないのか」と逆切れしたケースなどがありますが,黒猫もさすがにこのような人を説得できる自信はありません(黒猫は産業カウンセラー資格を持っており,一応カウンセラーのはしくれではありますが)。
このようなケースについて,当事者から苦情が来たからといって裁判所が調停委員に注意しようとしても,逆に調停委員の方が怒るでしょう。
家庭裁判所が,前記引用したコメントのように突き放したことを言っているのは,実際の苦情の中には明らかに上記3に該当するようなケースも相当数あり,仮に1や2に該当する疑いのあるケースであっても,現場を見ていない裁判官などがそのように事実認定をするのは相当難しい,という問題もあるからではないかと思われます。
実際の調停では,調停担当に回せる裁判官の人数が限られているため,調停で裁判官が出てくるのはせいぜい第1回の冒頭と調停調書を作るときくらいであり(そのときも順番待ちで相当待たされることがある),そのとき以外は2人の調停委員が実質的に調停手続きを仕切っているというのが実態ですから(調査官は,子の親権が問題になる事件などでたまに出てくる程度),裁判所が調停委員の実態を把握し,適切な研修や指導を施すのは,このような意味でも難しいと思います。
なお,上記アエラの記事で引用されている町村教授(今記事を読んでいて気が付きましたが,町村教授は,ブログでコメントを出されているだけではなく,記事のライターから取材も受けていたんですね。)のコメントでは,「今の法廷ではできませんが,ADR法によってカウンセリング機能も含めた民間の調停機関が活用されるようになるのではないでしょうか」とありますが,黒猫はこの点については意見を異にします。
上記1・2のような事案について適切に対処できる,法律知識とカウンセリング能力の両方を併せ持った調停担当者を養成するには,おそらく相当な時間と費用がかかるはずであり,民間の調停機関がそれをやろうとしたら,利用者からかなり高額の料金(1件数十万円くらい?)を取らないと採算は取れないと考えられます。
しかも,多額の費用を払って民間の調停手続きを利用するのであれば,上記3の類型に属する当事者はもっとわがままになるでしょうから,おそらく調停担当者がどんなに研鑽を積んでも苦情は止まず,家庭紛争を取り扱うADRの事業はまさしく火中の栗を拾うようなものになる可能性もあります。
一方,家庭裁判所の調停手続きは,弁護士を代理人に付けずに自分でやる場合,申立手数料はわずか1,200円。予納郵券などの諸費用を含めても1万円を下回る程度の極めて安価な費用で利用できます。
離婚当事者の大半は別にお金持ちというわけではありませんから,いくら家庭裁判所の調停制度に不満があるといっても,わざわざ高い費用を払って,まだ何の実績もない民間の調停機関を敢えて利用する人がたくさん出てくるとは思えません。
個別労働事件など,そもそも家庭裁判所のような公的紛争解決機関が整備されていない類型の事件や,当事者が多額のお金を払える企業間の国際取引紛争といった事件については,民間の紛争解決機関であるADRが発達する可能性もあるかもしれませんが,家庭紛争関係のADRは,そもそも事業として成り立たない可能性が高いのではないでしょうか。
調停員と調停裁判官が、母の罪を認めていても株式取得を自分に認めてくれません。
なのに自分が実母と仲が悪いというだけで、裏切る、会社を潰すかもとかで調停員と裁判官が、決断ん下せないまままた調停が延びました。
調停をお願いするに当たり、弁護士から調停の進め方および当事者として留意すべきことを事前に教わって調停に臨みました。
しかしながら実際は大違いで、次のような無能な調停員が担当となり、あらぬ調停合意へと向かっています。
-争点および争点の背景説明と、当方主張および主張の背景となる事実資料を事前提出してあるが、調停員は事前に読み込み理解を行っていないため、トンチンカンなやり取りとなる。
その都度、提出資料に基づいた説明をせざるを得ないため時間が倍以上かかっている。
-調停推進において、相手方の主張を伝えてきた場合に、その主張の根拠は?当方提案に対し合意できないとする理由は?との質問を調停員にしても、それに対する回答は全くないし押し黙ることの繰り返し。
-相手が合意しないので、更なる別の合意提案をしてくれとのことで、地元の不動産業者や弁護士と相談し、調査資料と提案書を作成し調停委員に提示説明をするも、相手に上手く説明できていない(ポイントを理解していないことが後で判明)。
-遺産分割に関する基礎知識や不動産取引に関する知見が不足している。分割の仕方や金額換算など、論理の妥当性を数字で計算し評価できるが、論理的検討に入ると数字での説明を極端に嫌う(算数が苦手?)
-毎回の調停において、今回取り組みたい点はこのような点、調停結果はこうです、次回への課題(宿題)はこのようなことです。
といった毎回の総括をしないから、仕方なく次回調停の前に当方がメモを元に整理し事前文書として提出。
にもかかわらず、調停員の前の会の発言と次の会の発言が180度変わり、進めてゆく上で双方混乱が発生する。
などなど、調停員の資質・能力を疑わざるを得ない者が調停員を務めており、身内の最後の砦として頼る家裁調停が機能不全に陥っている様であります。困ったものダ!
本ブログ「黒猫」さんの記述に『調停はわずか¥1200の極めて安価な費用で行える』と書かれていますが、実際は違っています。
私共のように東京から関西の家裁にその都度出向くための費用毎回10万円近くの出費や、理解促進・説得するための調査や資料作成依頼費用など、アホな調停員が担当で通常回数の倍以上の回数が掛かるなど結構費用はかかります。