黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

日弁連は既に将来世代から見放されている?

2012-10-12 13:37:40 | 弁護士業務
 最近、第65期司法修習生の就職状況が話題になっています。
 伝え聞くところによると、日弁連の調査では概ね昨年と同じような状況となっているものの、実際に修習生と接している弁護士さんの中には、就職状況に関する実感は昨年以上に悪化しており、昨年と同じという日弁連の調査は果たして本当なのかという疑問をもっておられる方もいるようです。
 そんな中でも、白浜徹朗弁護士による以下の指摘には、愕然とさせられました。
<参照:白浜の思いつき『新65期の就職の現状』>
http://www.shirahama-lo.jp/blog/

『ただ、日弁連の調査では、昨年と同じような状況となっているのは、確かなことのようですが、正確なところはわからないというのが実態だと思います。これは、昨年と比較すると、修習生が日弁連のアンケートに極めて非協力的となっているということから、有為な統計データが集まらない状態になっているためです。』

 「昨年と比較して」修習生がアンケートに非協力的となっている理由は、大体察しが付きます。昨年までの日弁連は、宇都宮前会長の下、司法修習生の給費制維持運動などにはかなり熱心に取り組んでいましたが、司法改革路線を支持する山岸現会長になってからは、日弁連はこれらの活動をかなり露骨にサボタージュするようになりました。法曹人口政策会議もなくなってしまい、法曹人口問題や司法修習生の給費制問題に取り組んでいた全国の弁護士も多くはやる気をなくしてしまっています。そして、新65期は、司法修習生の給費制が廃止されて貸与制に移行し、かつ給費制復活の望みも絶たれた初めての世代です。
 彼(彼女)らの目から見れば、もはや日弁連は自分たちを見捨てたと感じても不思議ではなく、近い将来法曹となる自分たちのために何もしてくれない日弁連のアンケートに協力する気がなくなるのも必然といえます。日弁連のアンケートで有為な統計調査ができない以上、65期の就職状況がどの程度悪化しているかは、一括登録時の未登録者が昨年度の約400人からどの程度増加しているかを見るしかないわけですが、アンケートに対し修習生が非協力であるという現象は、単に実態調査が難しくなるという問題にとどまるものでは無いように思えてならないのです。
 すなわち、65期修習生の多くは、経済的事情から弁護士登録すらできない人が相当数出るにせよ、相当数はおそらく今年中に弁護士登録を受け日弁連の会員となるわけですが、修習生時代に日弁連のアンケートに対し非協力的であった彼らの多くは、おそらく弁護士になっても日弁連の活動には非協力的になるでしょう。また、経済的事情等により弁護士登録ができなかった人の多くは、自分たちは二回試験を突破して法律上弁護士となる資格があるのに、弁護士登録できないのは日弁連が存在するせいだと考え、より日弁連を敵視するようになるでしょう。
 既に日弁連では、若い世代ほど弁護士会や日弁連の会務活動に関心を示さなくなり、登録弁護士数自体は増えているにもかかわらず、修習生の指導担当弁護士は年々確保が難しくなっているなど、日弁連という組織は水面下で瓦解が始まっているように見受けられますが、これに加えて将来日弁連に入ってくる世代をも次々と敵に回せば、日弁連が会員の支持どころか世論の支持も失い、任意加入団体に落とされて事実上崩壊するのはもはや時間の問題でしょう。そのような事態に日弁連の会長や執行部などから危機感がまるで感じられない現状は、むしろ滑稽に思えます。
 今の日弁連が、実は暗に日弁連の解体を目論んでいるというのであればまだ論理的整合性は維持できますが、日弁連自体は維持しようと考えつつ、自分たちが将来世代からそっぽを向かれているという事態を危機と考えていないのであれば、まさに笑いの取れない道化師です。山岸会長は、震災時に弁護士が果たすべき役割として「行政代替機能」「立法提言機能」「司法代替機能」の3つを挙げているなど、やたら権力的な思考をする人のようですから、
あるいは日弁連も法律で弁護士の強制加入が定められている一種の「役所」であるから、会員の支持がなくても政府の支持さえあれば存続できると考えているのかもしれません。
 さらに、今の日弁連執行部は会長選挙規定を改正して、全国で過半数の得票を得られれば(現行規定にある3分の1以上の単位会で1位という要件を満たさなくても)当選できるようにしようと目論んでいるようですが、仮にこれが実現した場合、若手のみならず地方の弁護士も日弁連から切り捨てられることになり、地方の単位会が日弁連に反旗を翻すこともこれまで以上に多くなることでしょう。東日本大震災にあたっては、日弁連と福島県弁護士会の対立が原因でひまわり基金法律事務所の新設がお流れになった例もあるようですが、今後は現執行部の方針に不満を持つ地方の単位会が第二日弁連を作ろうとして、日弁連という組織そのものが分裂する可能性も皆無ではありません。
 既に日弁連という組織を見限ることにした黒猫としてはもはやどうでもいい話ではありますが、今の日弁連会長は単なる「裸の王様」に過ぎない存在であり、しかも会長自身が会員の不満に背を向け続け、そのような動きをさらに促進させているのです。

30 コメント

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Unknown (東の学生)
2012-10-12 21:34:09
9月の終了時点で、宇都宮の修習生の8割は就職が決まっていない、という話を聞きました。
多分日弁連は発表はしないでしょうが、就職状況は年々酷くなっているというのは真実のようです。
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 01:20:00
うちは、某東北地方のA庁の修習地で、8月末で5割きまってないって聞いたよ。修習生から
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疑問 (弁理士)
2012-10-13 01:54:51
弁理士会は会員が増えたことを理由に会費を月額2万円から1万5千円に下げたり、弁理士試験合格者人数の削減を会長自ら求めているなど、弁理士のために活動している団体という気がしますが、弁護士会は何故そういうことができないのでしょうか。
同じく強制加入団体であるけれども、全く方向性の違う弁護士会と弁理士会を比較する記事なども是非お願いしたいです。
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 06:33:45
これだけ無償会務が多いのに、会費は高く、かつ、税理士会のような福利厚生制度もないつまり弁護士会費はただの取られ損。地域によって値段が違うのも変な話です。
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 09:44:33
法律事務を独占している以上、安価で良質な法律事務を提供する義務が発生しているからです。
特許事務なんかより国民生活に密接にかかわるのに、今までの弁護士はお金がない人へのリーガルサービスの提供を怠ってきました。そのつけが今きてるんです。
独占はするけど儲からない仕事はやりたくないなんて事は許されない。
人数減らすみたいな既得権むきだしの発言をすれば他の業界団体よりも強い非難にさらされるのは当たり前。
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 12:12:43

で、優秀な人が来なくなる。因果応報ですね。

安価で良質な法律事務を提供してこなかった逃げ切り世代の弁護士は、顧問先に囲まれて、今まで通りに生活し、
そういう時代を知らない若手が貧困にあえぐ。
逃げ切り世代のツケを若手が払う。
ほんとに、因果応報ですね(笑)。

ま、普通、独占していることと無償奉仕をすることに関連性はないんですけどね。独占しているのだから、生活できる収入を得られなくても無償で奉仕しろって、是非、即独若手の前で、演説してみてください。
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 12:34:22

即独、若手は力量に見合った価格設定をするでしょ。安くて良質なサービス提供に貢献につながるからそれでいいんです。

あなたの意見が通用すると思うなら国民を説得してみろ。既得権益者と返ってくるだけ(笑)
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 12:56:16

だから、それで優秀な人が来るっていうんならそれでいいんじゃない?
あんただけが「国民」じゃないんだし

まあ、ムキになるなって(笑)
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 13:18:44
国民を説得出来もしない人間が優秀面するな。まあムキになるなって。
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Unknown (Unknown)
2012-10-13 14:21:33
だから、国民てなに?
ただのあんたの意見でしょ。

国民の威を借りないと、自分の意見もいえないの?
それとも、あなたは国民さん?


それにさー。オウム返しじゃなくて自分の頭で考えて書けば?
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