黒猫のつぶやき

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トータルウォー・ササン朝ペルシャ編(3)

2006-12-24 16:46:01 | 歴史
 「ローマ・トータルウォー」リプレイ記の続編です。

4 シャープール2世の最期
 382年、かねてからアンティオキアで編成していた騎兵中心の新軍団が、中近東に残った東ローマの拠点であるフィラデルフィエアを攻略。攻略軍を率いるのはシャープールではなく、若干20歳の将軍ゴブリャス。大した能力の持ち主ではありませんが、数多いシャープール一族の婿将軍たちの中では最も若いので、今後の成長に期待しての抜擢人事でした。
 ところが、いざ攻略軍がフィラデルフィエアに近づいてみると、面白い事態が勃発。なんとフィラデルフィエアで反乱が発生し、反乱軍が都市を占拠、東ローマの正規軍は都市の外に追い出されてしまったのです。
 フィラデルフィエアは、もともとキリスト教国である東ローマ帝国の中で、自然崇拝(ゲームでは、キリスト教とゾロアスター教以外のすべての宗教、いわゆる多神教を指す概念)を信仰する住民が多く、東ローマ帝国とは宗教的な軋轢があったと思われる地域なのですが、さらに周辺をゾロアスター教の都市に取り囲まれたことでゾロアスター教の影響力も入り、治安を維持できなくなったものと思われます。
 しかし、反乱軍の規模は小さいため、フィラデルフィエア攻略にはかえって好都合な状況となりました。ゴブリャスは、予定通りフィラデルフィエアを強襲。クテシフォンからやってきた象兵が体当たりで城門を破壊し、遊牧弓騎兵が場内の反乱軍に矢の雨を降らせ、最後はカタクラフトが場内に突入し敵兵を殲滅するという戦法で、あっけなくフィラデルフィエアは陥落。
 フィラデルフィエアには、キリスト教会ではなく自然崇拝の神殿(たしかソル神)が建っており、もちろんこれは破壊しゾロアスター教の神殿を建てましたが、既にゾロアスター教の影響がかなり及んでいたフィラデルフィエアの住民にはかえって喜ばれる状況に。また、フィラデルフィエアは住民数が少ないため略奪も行われず、中近東の都市の中では最も平和裡にササン朝の支配下に入った都市となりました。
 なお、城外に追い出された東ローマの正規軍は、フィラデルフィエアの攻略軍が直ちに攻撃し壊滅させました。
 さらに、これと合わせて、ササン朝の首都をクテシフォンからアンティオキアに移転しています。ゲームでの「首都」という概念は、実質的にはそれほど大げさな意味は無いのですが、首都から遠く離れた都市ほど治安に悪影響を及ぼすという効果があるため、新しく獲得した都市の統治を円滑に行うため、新領土の中心地に首都を移したというわけです。
 フィラデルフィエア攻略軍は、アンティオキアで死傷者の補充を行った後、その足でキプロス島のシラクサ攻略に向かうことに決定。シラクサは都市施設の整備状況が悪い割には住民が多く、略奪で住民を減らさないとその後の統治が難しいことから、略奪の達人であるシャープール自らが指揮する予定でしたが、ゾロアスターの神は、シャープールにそこまでの時間を与えてはくれませんでした。
 384年、シャープールはエルサレムの地で永眠。熱心なゾロアスター教徒であったシャープールが、同じくエルサレムに駐留していたゴブリャスに遺した最後の言葉は、「ゾロアスター教を世界に広めよ」というものでした。

5 新王・アルダシール2世
 北部メソポタミア奪回のためローマ軍に対し執念の戦いを繰り広げながら、最後には北部メソポタミアどころか中近東のほぼ全域を制圧するに至り、ササン朝の興隆に多大なる業績を残したシャープール2世の跡を継いだのは、ゲーム開始当初から後継者に指名されていたアルダシール。
 史実でも、シャープール2世の後はアルダシール2世という人物が国王になっている(在位379~383)ので、一応彼をアルダシール2世と呼ぶことにします。もっとも、ゲーム上の彼はシャープール2世の次男であるのに対し、史実でのアルダシール2世はシャープール2世の弟なので、厳密には史実と異なるのですが・・・。
 ともかく、こうしてササン朝ペルシャ第11代の国王となったアルダシール2世は、即位当時43歳。能力は指揮3、内政2、威光3とまずまずの人物ですが、ゾロアスター教徒であり、ゾロアスター教を国教とするササン朝ペルシャの国王となった身であり、さらにはゾロアスター教の主教を名乗っているのに、「ゾロアスター教を信じない男」という特徴が付いているという奇妙な人物です。
 まあ、彼と同時代人であり史実ではキリスト教の発展に多大なる貢献を果たしたミラノの司教アンブロシウスも、元はキリスト教徒ではなくローマ帝国の高級官僚であり、ミラノの総督をやっていたところキリスト教内の教義対立(アリウス派と三位一体派)を仲裁することになり、その過程で三位一体派のキリスト教徒に気に入られてしまい、いきなりキリスト教に改宗させられミラノの司教に祭り上げられてしまったという経緯から考えると、本心からキリスト教を信仰していたとはとても思えず、おそらく自らの政治的地位を高めるためにキリスト教を最大限に利用しキリスト教の勢力強化にも努めたということでしょうから、ゾロアスター教の最高指導者となったアルダシールが、ゾロアスター教を本心から信仰していなかったとしても、それ自体は非難すべきことではありません。むしろその方が、信仰に惑わされずに冷徹な政治判断が出来るという意味では、国王には向いているのかもしれません。
 しかし、アルダシールの欠点は、内心でゾロアスター教を信じていないことではなく、そのことをしばしば他人にも話してしまうことです。ゾロアスター教の指導者がそんなことをしては、ゾロアスター教を信じている家臣たちは戸惑ってしまいます。おかげで彼が戦闘の指揮を取ると、戦場での全軍の士気が下がってしまうことになります。

 さて、ゲーム開始当初におけるササン朝の将軍は、国王のシャープールと、息子のメルキオル、アルダシールの3人だけという状況でしたが、この時点になると将軍の数もかなり増えています。その顔ぶれをざっと眺めてみましょう。

(1) メルキオル(52歳) 指揮5、内政0、威光3
 国王アルダシールの兄であり、ササン朝の軍司令官に任命され、現在は対ローマの最前線の1つである都市タルススの統治者になっています。アルダシールの即位に伴い、勢力の後継者に指名されています(ゲームでは、勢力の後継者はプレイヤーが自分で決めるのではなく、一族のメンバーの中から最も能力の高い人物が自動的に指名されます。後でプレイヤーがこれを変更することも出来ますが、後継者を変更すると後継者から外された人が不名誉を蒙り威光を落とすことになるので、後継者の変更はよほどの事がないとできません)が、アルダシールより年長である彼が実際に国王になるとは考えにくいので、彼の後継者指名は若手が成長するまでのつなぎということになるでしょう。

(2) カンブギヤ(52歳) 能力はいずれもゼロ
 メルキオルの長女・キラ(27歳)の婿となった人物で、現在ハトラを統治していますが、多少奇襲攻撃の才能があるほかは、ゾロアスター教への信仰心が若干強いだけが取り得の、無能な人物です。もっとも、キラとの間には既に娘を2人もうけてくれたので、一族のメンバーを増やすという役割は果たしてくれていますが。

(3) マルドゥニャ(47歳) 指揮1、内政0、威光1
 メルキオルの次女・ジャスミン(25歳)の婿となった人物で、現在フィラデルフィエアを統治しています。彼も決して有能とはいえませんが、ゾロアスター教への信仰心は強く、戦闘もそれなりに経験しています。もっとも、まだ子供はいません。

(4) シルス(22歳) 指揮1、内政0、威光1
 メルキオルの長男。慈悲深いが少々怠け者という人物で、能力的には大したことはありません。家系図上では後継者の第一候補に挙がる人物ですが、実際に彼が国王になれるかどうかは、今後の彼の成長次第ということになるでしょう。現在、クテシフォンに代わりササン朝の新首都となった、アンティオキアの統治者を務めています。アリヤムナ(24歳)という妻を迎えていますが、まだ子供はいません。
 なお、シルスにはシェルという弟が1人いますが、まだ9歳なので将軍にはなっていません(なお、ゲームでは16歳が成人年齢です)。

(5) アダルナルセ(53歳) 指揮1、内政1、威光1
 シャープールの娘・ロクサナ(46歳)の婿となった人物で、現在シドンの統治者を務めています。自然哲学の研究家で、ゾロアスター教への信仰心も厚いため、現在のササン朝では比較的頼りになる将軍の1人です。ロクサナとの間には、後述する娘のハルディタのほか、7歳になるクサントスという男の子がいます。

(6) ユヴァンシェル(33歳) 指揮2、内政0、威光0
 アダルナルセの娘・ハルディタ(16歳)の婿となった人物で、現在アンタキアの統治者となることが決まり、現地に向かっています。
 戦場での指揮能力を買って娘婿にしたのですが、その後間もなく怠け者という本性を現し、生前のシャープールを幻滅させたことがあります。まだ子供はいません。

(7) ナルセス(33歳) 指揮1、内政0、威光1
 シャープールの末子で、現在はアラビアの砂漠地帯に頻繁に出没する山賊退治が彼の主な仕事になっています。能力的には大したことはありませんが、前向きな性格の人物で、将兵たちには人気があります。リラ(36歳)という妻を迎えていますが、まだ子供はいません。

(8) ゴブリャス(22歳) 指揮1、内政0、威光0
 新王アルダシールの長女・アティアバウシュナ(17歳)の婿となった人物です。能力的には大したことはありませんが、数多い婿将軍たちの中では最も若いので、シャープールに目をかけられ、現在は対東ローマの最前線であるエルサレムの統治者を務めています。まだ子供はいません。

(9) クセウス(35歳) 指揮1、内政0、威光0
 アルダシールの次女・アルシャマ(14歳)の婿となった人物で、現在はアルタクサルタの統治者となることが決まり、現地へ向かっています。まだ子供はいません。

(10) アルストテス(30歳) 指揮0、内政1、威光0
 この男は、もともとアラビアで山賊をしていたのですが、将軍の数が足りないということで外交官に賄賂を贈らせ、今では将軍の列に加わっています。それでも一応アルダシールの養子となっているので、勢力の跡継ぎとなる資格はあります。
 しかし、外交官に賄賂を贈らせ帰順を求めたところ、その見返りとして何と12600デナリウスもの大金を要求してきた人物で、ちょうど彼が山賊として蜂起したのが、アンティオキア、シドン、エルサレムと征服・略奪を繰り返し財政的に潤っていた時期であったためこのような条件もシャープールは飲んだものの、少し時期が前後にずれていれば、おそらくナルセスにより砂漠の土と化していたでしょう。
 しかも、既にゾロアスター教が相当普及していたアラビアのドゥマサ地域の出身なのに、なぜかゾロアスター教徒ではなく自然崇拝者で(だからこそ反乱を起こしたのでしょうが)、彼が統治者になっていると都市の治安が低下するという困り者です。現在ではゾロアスター教のメッカである旧都クテシフォンの統治者を命じられ、早くもその信仰は揺らぎ始めているようです。彼がゾロアスター教に改宗するのは、果たしていつのことになるでしょうか。
 アルストレスは、フラダ(21歳)という妻を迎え、その間にアヴァという娘が生まれたばかりです。何となく違和感はありますが、一応この娘も国王一族の娘ということになります。

(11) アリアラムネス(34歳) 指揮1、内政0、威光0
 彼はアンティオキアで募兵した将軍で、国王一族と血のつながりはありませんから、彼が跡を継ぐことはできません。彼を募兵したのは、当面将軍数の不足が予想されたためであり、彼はキプロス島のサラミス攻略に伴い、アダルナルセに代わりシドンの統治者になることが予定されています。

(12) ゾグティアヌス(27歳) 能力はいずれもゼロ
 彼はクテシフォンで募兵した将軍で、やはり国王一族と血のつながりはありません。彼は募兵されて以来アルサキアの統治者に任じられ、その間に大した能力は身に付かなかったものの、ゾロアスター教の布教能力だけは強くなったので、彼は北方攻略を予定している新王アルダシールの補佐役として、北方攻略に参陣することが決まっています。

 以上のとおり、現在のササン朝ペルシャには、国王アルダシール自身を加えると13人の将軍がいることになりますが、はっきり言ってろくな人物がおらず、「枯れ木も山の賑わい」といった状態です。信長の野望シリーズに例えて言えば、北条氏康が亡くなり綱成も引退した後の北条家のような(笑)。このような連中を率いて、新王アルダシールとササン朝ペルシャはどのような運命を辿るのでしょうか。

6 暴動に疫病、そして財政危機
 アルダシールは、前王シャープールが計画していた軍事行動を、当面はそのまま実行することに決めました。
 即位した384年には、早くもシラクサ攻略に着手。ただし攻略軍を率いるのは、シャープールが亡くなったためシドンの統治者であったアダルナルセがそれに代わりました。
 事前にスパイを送って調べたところ、シラクサでは、なぜか将軍1人だけが城内に駐留し、防衛軍は都市のすぐ側に銃流しているという不可解な防衛体制が敷かれていることが分かっていました。ゲームシステム上、わざわざそのようなことをするメリットは皆無であり、コンピュータがなぜそのようなことをするのか理解に苦しむのですが、とりあえずこれを利用しない手はありません。
 シラクサ侵攻軍を載せた船には、ベテランの暗殺者も同乗し、キプロス島に上陸した後はまず城内にいる将軍を暗殺し、空になった都市をアダルナルセ率いる侵攻軍が占領。その次のターンには、城外にいた東ローマの防衛軍をあっさり粉砕し、これでシラクサ攻略は完了しました。
 都市占領後の略奪はやりましたが、シラクサは孤島のため周辺地域からの宗教の影響を受けず、最初はゾロアスター教徒はゼロという状況であったため、最初にゾロアスター教の学問所を設置し、アダルナルセの布教と合わせてある程度ゾロアスター教徒を増やし、かつシラクサの治安も少し落ち着いた状況を見計らってから、シラクサにあったソル神の神殿を壊し、ゾロアスター教の神殿建設を始めました。
 このソフトランディング政策が功を奏し、占領後におけるシラクサでの暴動は発生せずに済みました。

 シラクサ侵攻軍は、シラクサ防衛のローマ軍を粉砕すると、シラクサの治安維持のための歩兵部隊を残して直ちに船で本土に戻り、戦死者の出ている部隊はアンティオキアで補充し、出ていない部隊はエルサレムに向かいました。そして386年、エルサレムにやってきた部隊の一部を率いて、ゴブリャスがエルサレムの南で孤立していた東ローマの町、ぺトラを攻略。しかし、ここからが危機の始まりでした。
 ぺトラ自体は難なく陥落しましたが、なぜか治安状況が悪く、次のターンには暴動が発生。あわせて、シドンでは疫病が発生してしまいます。
 疫病が発生した都市は、古代のことなので自然に収まるのを待つしかなく、都市に駐留している将軍や工作員などは直ちに退避させるしかありません(そのまま駐留させていると、将軍や工作員自身も疫病にかかってしまい、疫病にかかった将軍などがさらに疫病を広げるといった具合で、際限なく被害が広がってしまいます。
 そんなわけで、シドンの統治者であったアリアラムネスはアンティオキアに避難させましたが、疫病発生中は、シドンと他の都市との交易はほとんど停止してしまうので、収入が激減し財政危機が起こるようになりました。
 翌387年には、北方遠征に向かっていたアルダシールとゾグディアヌスが、北方の町カンプス・アラニを陥落させましたが、首都から遠いため治安維持が難しく、やはり次のターンには暴動が発生。しかも、暴動が1回で済んだぺトラと異なり、カンプス・アラニの治安状況では2度目、3度目の暴動もあり得るという状況です。
 しかも、カンプス・アラニの周辺には、西方の遊牧民族・ロクソラニ族の軍隊もうろついており、もし彼らと交戦状態に入ったら、治安の安定しないカンプス・アラニで防ぎきれるかどうか・・・。
 アルダシールの即位後3年にして、早くもササン朝ペルシャは深刻な危機に直面してしまったのでした。
(続く)