両親の介護契約が3月で切れるので、あらためて申請しなければならない。主治医の診察が必要なので、時間がかかる覚悟で両親を医院へ連れて行ったが、思ったより早く終わった。
これ幸いと思い立って、友人を誘い、大阪市立東洋陶磁美術館で開かれている「ルーシー・リー展」に行った。
彼女の作品は、テレビや雑誌で見たことはあるけれど、本物を見るのは初めて。東洋陶磁美術館では、1989年に三宅一生企画構成の展覧会が開かれているそうだが、その頃は仕事に追われていた時代で、ルーシーの存在さえ知らなかった。
ウィーンから、ナチスの手を逃れてイギリスへ亡命、バーナード・リーチとの出会いを経て、ルーシー独自の陶芸の世界を確立し、88歳で脳卒中に倒れるまで、創作の情熱を失わなかった、そんなルーシーの芸術の軌跡をほぼ余すところなく伝えている展覧会だった。
陶芸作品は壊れやすいので、これだけの作品を揃えるのは大変だったろうと思う。
最初の展示ケースから、美しさに見入ってしまった。
ルーシー・リーという人について、多くを知っているわけではないが、テレビ番組や写真を見たり、簡単な評伝などを読んだりして、私なりのルーシー像があった。
彼女の作品から受ける感じは、そのルーシー像そのままだったのに驚いてしまった。ルーシーの魂が、そのまま作品になっているという感じなのだ。
美しく、繊細だけれど、はっきりと自己を主張している、けれど押しつけがましさはない。まるで、森の中の花や木のように存在している。あるいは、風に乗って聞こえてくる音楽のようでもある。
彼女のように歳をとりたいね、と友人は言った。
陶芸作品が、人生まで教えてくれる、そんな展覧会だった。