先日、『信濃毎日新聞』のウェブサイトで、秘密保護法について論じた社説を読んだ。
驚いたことに、サイトで確認できる範囲では(あまり前の記事は削除されているので)、11月中旬から、ほとんど連日、特定秘密保護法についての社説を掲載している。
全国紙やテレビなど、他のマスメディアが、はじめは様子見的な論調から、世論が盛り上がりを見せて以後に、ようやく危機感を持った論調に変わっているのに対し、『信濃毎日』は、秘密保護法がいかに国民の知る権利と表現の自由を侵し、民主主義を危機に陥れるものであるかという内容で、首尾一貫している。
見出しだけを並べてみよう。
11月22日「秘密保護法 野党の対応 将来に責任持てるのか」
11月23日「今できること 声を上げ行動に移そう」
11月24日「秘密保護法 共謀罪 心の中も取り締まる」
11月25日「秘密保護法 衆院審議 疑問は山積みのままだ」
11月26日「秘密保護法 外交文書 さらに国民から遠のく」
11月27日「秘密保護法 採決強行 議会政治の自滅行為だ」
11月28日「秘密保護法 参院審議入り 民意に沿って廃案へ」
12月1日「市民も処罰 国際基準を逸脱する」
12月2日「秘密保護法 会期末へ 拙速審議は許されない」
12月3日「秘密保護法 石破氏の発言 法案の危険性さらした」
12月4日「秘密保護法 保護措置 議会政治を窒息させる」
12月5日「広がる慎重論 国民の声に耳を傾けよ」
「秘密保護法 党首討論 懸念ばかりが膨らむ」
12月6日「公安警察肥大 息の詰まる社会にするな」
「秘密保護法 採決強行 内外の懸念無視の暴挙」
12月7日「秘密保護法 力づくの成立 民主社会を守るために」
12月8日「秘密保護法 安倍政治 軍事優先には『ノー』を」
12月10日「秘密保護法 報道の自由 壁に穴をうがつ決意」
12月11日「臨時国会 もう力づくはごめんだ」
12月12日「共謀罪 内心の自由を侵さないか」
12月14日「公布のあと 廃止の努力を重ねよう」
内容も、秘密保護法を一般論として、他人事のように取り上げるのではなく、報道機関である『信濃毎日新聞』自身に降りかかる問題だとする当事者意識が、他のメディアより前面に出ているように感じる。
たとえば、12月10日「秘密保護法 報道の自由 壁に穴をうがつ決意」では、
「報道活動の前に立ちふさがる秘密の壁は一段と高く、厚くなる。穴をうがち広く国民に知らせようとする取材は、これまでとは比べものにならないくらい厳しいものになる。
私たちはいまそんな覚悟を固めている。メディアで働く者に共通する思いだろう。
特定秘密保護法は閣僚らが秘密を指定し、公務員からの漏えいを厳罰によって防ぐ法律である。それは同時に、強力なメディア規制法の側面ももっている。」
と書き、次に、取材現場で記者が直面するであろう、報道を取り巻く厳しい環境について具体的に述べた後、
「けれどもひるんではいられない。
メディアに『報道の自由』が認められているのは、国民の『知る権利』に奉仕するためである。
(中略)国民の『知る権利」あってこその『報道の自由』である。国民が知るべき情報に迫り、明らかにできないようでは、メディアの存在意義はなくなる。
そのことをあらためて確認し、これまで以上に力を注ぐことを約束しておきたい。
私たちはこれからも権力には厳しい目を注いでいく。秘密保護法の運用を点検し、問題が起きたら広く国民に訴えて、政府の是正を求めていくつもりである。取り組みを読者の方々が見守り、支えてくださることを願っている。」
12月14日「公布のあと 廃止の努力を重ねよう」には
「石破茂自民党幹事長の発言が波紋を呼んでいる。法案反対のデモをテロになぞらえ、特定秘密の報道の処罰に言及した。すぐに撤回したものの、政府与党の強権姿勢がにじむ発言だった。
表現の自由、報道の自由に理解の薄い政治家が幅をきかせている現状では、秘密法を始動させるわけにはいかない。危険すぎる。
法律が公布されても、施行前に廃止することはできる。前例もある、私たちはこれからも秘密保護法反対を読者と国民に訴えていく。」
長野県では、市町村が次々と、秘密保護法反対、もしくは施行に慎重であるべき、もしくは廃案にすべきだとする決議や意見書が議会で採択されているそうだ。
私たちも、一人一人が、民主主義と、知る権利、報道の自由を守るために、自分の住む市町村議会で、秘密保護法廃止への決議が採択されるよう、働きかけよう。