Fool & the Gag

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大人計画 『まとまったお金の唄』

2006-05-15 01:10:40 | パッシヴアタック
★ネタバレあり★
★★ご注意★★

先日、大人計画 『まとまったお金の唄』観て参りました。舞台は1970年代。万博の開催中の大阪。太陽の塔からの落下事故で父を無くした家族の物語です。

一貫して「去勢」というテーマを書いていると思われる松尾スズキ氏ですが、今回もやはり「去勢」が主題と思われます。民族問題、宗教(神)問題=靖国問題、フェミニズム、ジェンダー、アナーキズム等の社会的な素材は、一見喜劇的でないように思えます。が、笑える。後藤明生氏が別役実氏との対談で「喜劇というものは素材でなく方法なんだ」と言っていたのを思い出してみれば、なるほど頷けます。

『まとまったお金の唄』という題でありながら、家族が借金を抱えているというほかは、それほどお金がでてこない。哲学的なアナーキストの青年が「うんこ」で爆弾を作っている。この「うんこ」爆弾には実際に威力があって爆発する。そこでちょっと貨幣糞尿論を参照すれば、青年の爆弾は「貨幣」だとみることができる。終盤で青年の爆弾はとつぜん威力を発揮しなくなり、ただの「うんこ」になる。つまり「貨幣」の威力が失効する。何故だかラストで、逆さにされたごみ箱から紙くずが舞台に降る。おそらくこれは威力を失効した「うんこ」と対応しおり、「威力の失効した貨幣」=「紙かみくず」を表していると思われる。でなければ、ごみ箱をひっくり返す意味がない。

アナーキストの青年たちは飛行機に乗って、太陽の塔の爆撃を計画するが失敗する。太陽の塔を「男性器(P)」に見たてた「去勢」に失敗するが、太陽の塔は中が空洞であるから「男性器(P)」であると同時に「女性器(V)」でもあるのだと言う。「P」を去勢し「V」へ向かうのではなく、「P」でありかつ「V」でもあるという「A感覚」(足穂)的な解決に向かう。そんな話かなあと思いました。よく判りませんが。

まあとにかく、めっちゃ面白かった!