Fool & the Gag

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第六回文学フリマ

2007-11-11 23:59:00 | パッシヴアタック
文芸誌では「新潮」で渡部直己「日本小説技術史」が始まり、「文學界」には川上未映子「乳と卵」が発表される黒田晶の新作もあったりで、にぎやかなる「文化の秋」なこのごろ(「日本小説技術史」早くも2回目が楽しみです)。文学フリマに行ってきました。いやぁ。ほぼ毎回行っているのですが、大人の文化祭というムードで楽しいです。今回は噂のオーラル・クリティック・マガジン『VECTORS』と『佐々木敦ティーンエイジ赤面作品集』(限定20部)と『スポンジスター』と『書評王の島』を入手すべく午前中に秋葉原入り。いろいろ面白そうなの買いました。

『VECTORS』(大谷能生×木村覚×佐々木敦)
『佐々木敦ティーンエイジ赤面作品集』(佐々木敦)
『スポンジスター』(ブルボン小林編集)
『書評王の島』(豊崎由美×書評講座受講生)
『吉田アミは書きました』(吉田アミ)
『$HYPER』(小笠原鳥類、村上子、泉智也)
『木曜日No.23』(上野ゼミ同人誌)
『リブリレvol.10』(早稲田大学現代文学会)
『M@DAGE』(幸田龍樹、田高利、麹弘人)
『文芸誌の一年』(森田真功、佐藤克成)

『VECTORS』はおおむね読みましたが、話題が音楽、演劇、コンテ、美術、文学、現代詩などなど多岐にわたり風通しがよくて面白いです。しかしこのボリューム、文字起こしや校正はハンパなく大変だったろことが容易に想像できます。『佐々木敦ティーンエイジ赤面作品集』と併せ、がしがし読みます。HEADZのブースで『$HYPER』と『吉田アミは書きました』も購入。『スポンジスター』は金剛地武志インタビューとブルボン小林の長編評論が面白そう。『書評王の島』を買おうとしたらなんとブースに豊崎由美ご本人がおられて、サインとかチョロ欲しかったのですが自分、シャイなオッサンなので無理でした。会場でお会いした河村さんにご挨拶し、お世話になっている「早稲田文学」ブースの学生スタッフのみなさんにご挨拶して、2Fを後にして1階へ。

上野ゼミ『木曜日』のブースで見本を手にとったら「あ、去年も一昨年も買ってくれた人だー」と、いち購買者である私を覚えていてくれたらしく、なんとなく嬉しい気分で最新号を購入。私、あんまし特徴のない人間なんですが。文学フリマこういうのがいいっすよねぇ。

でいろいろなブースをグルグル見てまわっていたら「50円」という値札を出しているブースがあって、どんだけ謙遜してんのか、どんだけ読んで欲しいのか知らないけど、とても「50円」では刷れそうにない冊子であったので「50円じゃ赤字じゃないの?」とブースのメンズにうかがったら「はじめから儲けは考えてないのでいいのです」と爽やかなレスポンス。表紙の人なつこい感じにひかれて購入したのが『M@DAGE』という同人誌。これが説明しすぎだったりするのだけど、好きな風味の小説ばかりで、なかなか良い同人誌だと思いました。

昼過ぎに、やたらおなかが空いてしまったので秋葉原をあとに。家の近くで、中華を食べた。で、家帰って「d.v.d」のDVDを観たら、のけぞった。ぐわぁ。おもしろい!

パフューム ~ある人殺しの物語~

2007-11-01 00:20:29 | パッシヴアタック
『パフューム』のDVDをレンタルで。ひじょうに整っていて判りやすい。何しろ笑えるし官能的。日本の野球界に「ハンカチ王子」と称されるスターがいらっしゃいますけれど、この映画にでてくる「ハンカチ王子」のことも、ぜひ知っておいていただきたい。彼のハンカチのひと振りがもたらす、ライヒ的な?事態ったら。ちなみに、原作の小説は未読です。面白そうですね。

(以下、ネタバレ警報)

 嗅覚のすぐれた男が、究極の香水を求めて起こす連続殺人。嗅覚のすぐれた男は、匂いによって世界をとらえている。ある日、運命的な匂いにめぐり合う。匂いによって世界をとらえている彼にとって、それはいわば初恋なのだが、匂いを嗅ぐことを女性に拒絶され結果、殺めてしまう。殺めた後で、彼はその匂いを必死に嗅ぎ(後にその匂いは消えてしまうことになる)それを保存したいと切望し、香水職人へご奉公。

 で、ある日、彼は自身が無臭であることに気付くが、これは自分というものが他者によって規定されるというようなことであって、それが匂いであっても同様。まあ普通、自分の鼻の穴の匂いって判らないものだし(むかし、ビートたけしのギャグにそういうのがあった)。つまり彼には他者がおらず、まるで透明な、いや、彼が世界をとらえる作法に従えば、まるで無臭な存在であると認識するにいたる。

 で、おもしろいのが、まるで無臭のような存在という彼自身の認識が、アクロバティックに周りにも共有され、じっさいに、彼は透明人間のようにふるまえるようになれる。無臭なだけで、彼はどこへでもしのびこめたりするから面白い。この辺をリアリティー云々で批判するのは、あまりにも不粋と思います。

 究極の香水を手にした彼は神のような存在となって、他者を得て、そこでようやく、観念的に初恋が成就する(群衆が彼の初恋を代行します)。神となった彼は、自らが生まれた貧困と腐敗が蔓延するパリに戻り、究極の香水の力を借りて自らが食物となって人々へ施しを与える。。。

 と言うような、ヒューマンなラストに見えますが、彼は「施しを与えること」や「救済」を選んだのではなく、「排泄物となること」を選んだのだと考えられます。究極の香水の力を借りることなく、匂いを自己主張するために、彼は人に食われることで「排泄物」になることを選びとって、自己回復。エゴ大噴出なラスト。匂いの王様ですね。

 全体的には、なんだかミケランジェロやダ・ヴィンチらの宗教絵画(審判とか晩餐)を裏返したような印象です。なにより、オープニングの鼻のアップであるとか、執拗にクンクンするのや、クンクンによって馬でにげる標的を追跡する映像などが、エレガントでもありながら、変態っぽくトチ狂っててひじょうに笑えました。