風を紡いで

旅の記録と料理、暮らしの中で感じた事などを綴っています。自然の恵みに感謝しながら…。

忘れられない光景

2006年10月23日 | 自然(花 虫 樹etc)
中学の夏休み、母の実家に1人で泊ったことがあった。
とはいっても、虫歯の治療が目的だったのだが。
本家に泊まり、私の面倒は高校生の従姉妹がみてくれた。
従姉妹は、登校日やどこかへ出かける時には、制服を着て行った。
夏服は白いピケの七分丈のセーラー服に、茶色のスカーフのようなリボンを結んでいた。
スカートはサージの濃紺のプリーツスカート。
制服姿が格好よく、あこがれた。
なんだか妙に大人に見えたものだ。

歯科医院には、従姉妹が連れて行ってくれた。
歩いて行ける場所にあり、従姉妹の同級生の父親が開業していた。
私が治療を受けている間、従姉妹は友達の部屋で待っていてくれたのだ。
その医院の庭には、葡萄棚があった。
みごとな房をつけていたのが、強烈に頭に焼き付いている。
治療が終わると、従姉妹と友達の部屋でしばらく過ごしてから本家に戻った。

本家には、屋敷の前庭に小さな畑があり、ナスやトマトがたくさん実をつけていた。
夕餉時が近づくと、叔母がナスをたくさん採ってきては、つるべで汲んだ水で洗ってから、
大きな鉄鍋で茄子のシギ焼き(そう言っていたが。鍋シギ?)を作ってくれた。
菜種油で炒めてから、醤油と味噌の味つけのようだった。
唐辛子を入れて辛さを出していたが、それが美味しかった。

夕餉は、囲炉裏を囲んでした。
祖父、祖母、叔母、従兄弟夫婦、従姉妹と大家族でにぎやかだった。
今は建て替えてしまい、囲炉裏も消えたが、
黒光りした大黒柱や廊下などが私にははっきりと見えるのだ。
そして、当時の年齢のままのみんなの笑顔とともに、
囲炉裏や古い書物の匂い、つるべなどが胸に懐かしく迫ってくる。

すでに、祖父母と従兄弟はこの世を去り、新しい家族構成になった。
でも私の心の中には、あの囲炉裏でシギ鍋を囲む光景がしっかりと息づいている。

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