あいつのバイクはYAMAHA SR400。
ビッグ・シングルにふさわしいクラシカルなイメージでまとめられた品のあるスタイルが特徴。もともと古いデザインだから時代が変わっても古くならないのだ。変わらないことでたくさんのファンのハートをつかんでいる。
「海、見に行くか。バースデープレゼントだよ」
そう。今日は私の2○回目のバースデー。そのプレゼントとして愛車のバイクで海を見に連れていくと言う。きょとんとしている私の手にあいつはメットとグラブを渡し、「行こう」という。
セミ・アップのハンドルだからごく軽い前傾姿勢になる。私はこのツーリング向きのポジションが好きだ。小さなポーチを右の肩からかけ、モノをいれるパースの部分を後ろに回す。両手をあいつの身体の前で組むと気持ちが高まる。走り出す瞬間に前にのめり、私のメットがあいつのメット後部にコツンとあたる。これもいつものことだ。
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御前崎の海は浜岡町側から走ってくるととても雄大に見える。アメリカ西海岸と見間違うほどだ。切り通しの坂道を上りきると眼下に海の眺めが一気に飛び込んでくる。私はこの瞬間の海の眺めがとても気に入っている。
SR400を降りて海岸に降り立つ。広い浜に波が押し寄せている様子は「潮騒」などというなまやさしいものではない。きらめく波頭をもたげて波が押し寄せてくる様子はすさまじいほどだ。
サーファーたちの様子を見ているのかと思ったら私をみていた。
ちょっとあせった。
「誕生日、おめでとう」
「うん、ありがと」
「お前、いくつになった?」
「2○」
しばらく沈黙があった。 波と風の音だけが低く響いている。
「そろそろオレたち・・・ 結婚するか」
一瞬、波も風もスローモーションになる。
「結婚するならあいつだろう・・」
もちろん私にもそんな予感はあった。
でもこんなに急に言うなんて。
「そのうちに」
私は復讐っぽい笑顔であいつをみた。
思いっきりコケてるあいつの笑顔がいい。
「今度、告白したら、そのときはちゃんと二枚目俳優を演じさせてあげるよ」
私は心の中でいたずらっぽくつぶやいた。
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え~~、このショートストーリーは自分の中の時計を20年くらい強引に逆回転させて、あとは「勢い」で書いたものです。連載の予定はもちろんありません (^_^;) 。(← 要望もないっつうの)
12月に結婚が決まったクリエイターのMさんが昨日誕生日だったので、彼女へのプレゼントとして書いてみたけど、もちろんまったくのフィクションで、登場人物もストーリーも実在するわけではありません。念のため。(ノリオのバイクがSR400だったかも定かでない)
ま、いいと。 Mさん、誕生日おめでとう。あ、blogの記事、迷惑だったらメールを。
学生の頃はよくこういう文章を書いてました。
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素敵な詩のプレゼント、ありがとうございます
なんてロマンチックなんでしょう! 現実とは大違い…
悲しいことに、もう誕生日が嬉しい年ではありませんが、でもやっぱり「おめでとう」と言っていただけると感激しますね
今年は独身最後の誕生日だったので、家族と過ごすことにし、朝からお墓参りに出かけ、おばあちゃんと親戚のおばさんたちとランチ、午後は家で仕事・・ とまーこんな誕生日の一日でした(w
22日の夜中、ちょうど23日になったばかりの0時過ぎに出張から帰宅した兄が
「あ、おめー今日誕生日ら。おめでとう」
って珍しく言ってくれました
昔のアルバムひっぱりだしたり(自分もバイクに乗っていた)、大好きだった片岡義男の文庫本をいっぱいひっぱりだして、気分を盛り上げて一気に書いてしまったショートストリーのバースデープレゼントでした。
こんなん書いたのは超ーーーーー久しぶり。
楽しかった。
残念ながら、派手に事故り(鎖骨と左足親指骨折)、もう今は乗っていません。
片岡義男、懐かしいです。
「彼のオートバイ 彼女の島」とか。
機会があればもう一度乗りたいのですが・・・
ぼくも大好きで文庫本いっぱいもっています。
「彼のオートバイ 彼女の島」は傑作中の傑作ですよね。あの本、読み終わって即中型免許取りにいきました(ぼくの最初の愛車はKAWASAKIのZ250FT)。
片岡義男さんの小説では「トウキョウ・ベイブルース」「愛してるなんてとても言えない」あたりもかなり好きでした。
あー、なんかタイトル書いてるだけで懐かしいですよね。
プーキー2号さん、コメントどうもありがとうございました。それでは日本橋のランチ屋さんで会いましょう。