むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㉙

2019-07-25 10:39:06 | 小説
 自分で小説を書くと生きている作家の本は置き場所がないことに気づく。どういう本が売れるかは反社会的な共産主義活動がやりやすくなる本だ。タイトルは木彫りの人形。

 昭和一三年五月未明。天津で人物の木彫りをつくる美術家が、木靴を結びつけたひもで、首から下を巻かれて死んでいる事件が起きた。美術家はアトリエのなかを数日はいまわってから衰弱死している。公安は奥さんから事情を聞きながら古代の、「木目千枚ゲーム」のことを考えていた。木目千枚ゲームは厚さが一㎝ぐらいで縦横四㎝くらいな木の札に、一~十までの数字が一〇〇枚ずつ書かれている。それを縦横と上に、数字を裏向きで一〇枚ずつ並べて、二人で外側から順番にめくり合うゲームだ。最初は二枚ずつめくって一枚ずつめくる枚数を増やして九枚の次がずっと一〇枚で、同じ数字が出ると札をよけて一点。先に二五一点とった方が勝ちだ。全部で千枚あるから裏の木目と数字は覚えられないが覚えているふりをして、霊感でめくると確率以上に当たることがおもしろい。公安は木目千枚ゲームのことを考えながら、奥さんとなにか会話をしていたがなにも覚えてなかった。記録するほど重要なことがなかったことだけ記憶している。現場は窓がひとつあって、外からはめ込んだ形跡があった。公安は「つまらない事件だ」と思いながら木靴の専門店で事情を聞く。店主は「四日前に子供の足が大きくならない『呪いタイプ』を、二〇足買った客がいて会員登録してたよ」と言った。公安は「なんという愚かしい犯人だろう」と思いながら住所を聞いてそこへ行く。公安の脳裏に、古代の陣とりゲームが浮かんだ。すそが長い着物を、着た木彫り人形が ま す 目の彫られた平らな床に一〇体ずつ並んでいる。ます目は一m四方ぐらいで一〇かける一〇だ。公安の脳裏にルールが浮かぶ。最初は人形が後ろの横に、一〇体ずつ向かい合うように並んでいて丸太を持った男が、丸太で人形を押す。最大で三ます動かせて相手の人形と接触したときはひとますしか動かせない。縦方向に九ますぶん進んで相手の陣地へ人形を、先に押し込んだ方が勝ち。相手の人形をサイドへ押し出すと、最初の位置に戻せる。人形が倒れた場合も最初の位置に戻るっ。公安が犯人の家に着くと、わらぶき屋根な一軒家の玄関先に木靴を買ったと思われる男がいる。公安が「木靴を買ったのはあなたですね」と聞いたら、男は「美術家に『世界改造集団』の、神の木彫りをつくってほしいと依頼したが、『木彫 りは低級な物だから、神の木彫りはつくれない』とことわられたから殺したよ」と言う。公安は男を逮捕する。