むらやわたる56さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター④

2019-06-30 09:44:16 | 小説
  ビタミンB12欠乏ゾンビがビタミンB12を摂取すると、麻痺していた神経が修復してこんどは他のゾンビに食いつかれて、猛烈な神経痛になる。だから簡単に摂取しない。ゾンビの未来は「ゾンビでいた期間と同じぐらい精神科か神経科に入院して治療する」だ。タイトルは劇場型犯罪。

 昭和一〇年七月未明。チンタオの映画館で映写技師が、首にロープを強く巻かれて死んでいる事件が起きる。当日は恋愛映画を上映していて第二幕が始まらなくて、関係者が映写室を確認して発見された。公安(中国の警察)は殺人事件として捜査本部を立ち上げる。翌日捜査本部にあちこち中継してから電話がかかってきた。それは別な映画館で第二の犯行を予告する内容だ。犯人は電話でしゃべりながらときどき咳払いをしていたという。犯人は結核なのかも知れない。公安は予告があった映画館の、映写室の入り口を張り込む。しかしまた第二幕が始まらないという事態になる。公安が映写室のドアを開けると、奥で映写技師が首に金貨のペンダントを巻かれて倒れていた。公安が確認をすると映写技師は死んでいる。磨きくたびれた淡い光は無限の、空が広がったトップタイプの金貨だ。そのとき映写室に風が吹き込んで、遠くで走り去る人の気配を感じた。公安が映写室を調べると、フィルムを保管している木箱に大人が、潜むことができる空間を発見する。犯人はそこに隠れていて映写技師を殺害したあと、ドア付近の物陰に隠れてから、公安が生死を確認している間に逃げ出したみたいだ。翌日捜査本部に第三の犯行を予告する手紙と、黒猫の生首が送られてきた。犯人は動物の死骸になにか執着している。公安はその、映画館の映写室をあらかじめ調べて、ドアの外で張り込んだ。そしてまた第二幕が始まらなかった。公安が映写室に入ると、映写技師が映写機の、のぞき窓の近くでロープを二回巻かれて、死んでいる。犯人は観客席から映写技師をのぞき窓の近くに呼んでから、ロープを首に巻きつけて絞め殺したようだ。犯人は観客の誰かに違いない。第二の現場でロープに血がついていたことから、手に傷が、ある者が犯人だ。公安は二〇〇人ほどの、観客の手を調べる。しかしその日は、農業組合の団体がきていて、手に傷がある者は三〇人もいた。公安は野菜が多めの仕出し弁当を注文して、観客を全員拘束して、若い公安を呼んで順番に、事件当日になにをしていたか聞きとって記録する。聞きとりが、終わった観客が仕出し弁当を開けるとそのひとつに、御飯だけの弁当に、黒ごまで第四の犯行が予告されていた。犯人は料理が好きなのかも知れない。公安は聞きとりを若い公安にまかせて、第四の現場に四人張り込ませた。こんどは映写室のなかにひとり、外に二人と、観客席側にひとり。第一幕が終わりに近づくと、覆面をした二人組が、公安を無視して、映写室のドアを開けようとする。公安はカンフー(太極拳のような武道)の達人だった。たちまち二人組は逮捕されて他の犯行も洗いざらい白状する。二人組の男は、「映画は思想をコントロールする害悪装置だ」と考える思想集団のメンバーで公安は他にも共犯者がいることから、一斉捜査に乗り出す。思想集団の特徴は教義が頻繁に更新されて、メンバーがなにかの方法で連絡し合うことだ。公安は、この思想集団は名称がないと予感した。逮捕した二人の供述で共通していることは「毎日朝八時に創始から太陽世界の啓示を受ける」ことだ。公安は三人の、小学生の息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)から創始と呼ばれる人物が他に言い出しそうなことを聞いて記録していた。公安は「地下鉄は神聖なる地底を走る悪い乗り物だ」「自動車は馬よりも速く走るから生態系に悪影響を及ぼす」と書いてから金貨を思い出す。恐らく創始の物だろう。トリックを成功させるための高価な小道具だ。公安は文芸誌をくまなく読んで、犯人しか知らないことを書いていた推理小説で、創始をわり出した。その、小説の作者は、実在の羽振りがいい人物をモデルにして書いたという。公安は創始を逮捕した 。


超IQ研究所クラスター③

2019-06-29 10:24:04 | 小説
 昭和九年八月未明。香港の研究所で、実験用の、巨大水槽のなかで研究員が、胴体が真っ二つになって、死んでいる事件が起きた。死体は蝋人形のように、水に浮かんで、二つの肉片が陣とりゲームをしているようにも見える。公安(中国の警察)は他の研究員に事情を聞く。そこの研究室では、溺死した死体の身もとを、特定する研究をやっていて死んだ研究員がひとりで管理していたという。現場には石灰を敷いた検死台があったけど、稼働している形跡がなかった。骨の標本はあるが、土がついている。遺品に金貨が、一枚あったがめずらしいタイプらしい。公安は金貨のにおいをかぎながら、さっき死体を見て、錯覚したことを後悔した。小学生の息子(被害者幽霊を小学生に変換して対話する特殊能力がある)がいることは、文章としておかしいが、小学生の息子が「おまえがよけいなことを考えるからわからなくなっただろ」と言っている。公安は建物を調べた。事件の現場は、研究所の二階で入り口に、鉄の扉があるけどいつも開放されているみたいだ。床はコンクリートだが、壁はペンキを塗ったベニヤ板で仕切られていて釘があちこち出ていた。廊下の壁に、書類の箱が重ねて並べられていて、窓からさし込む日光で日時計のように明暗をつくっている。公安が書類を調べると、「思考を停止させて、死体の身もとをわり出す方法」と思われる文章が書かれていた。つまり呼びかけても返事がない人物を消去法で捜すことみたいだ。公安が骨の標本は、なんのために、あるのか書かれている文章を探すと、どうやら透視能力がある人物によって戸別訪問で骨格の住民台帳をつくるらしい。小学生の息子が「おまえがよけいなことを考えるからわからないんだ」と言った。別な箱の書類を見ると、「射幸心の研究」というテーマだが、読み書きがままならない人間の、霊魂が若者に憑依する現象の、考察が書かれている。公安は憑依してくる霊魂を、退治する正義の味方や能力を期待して読んだけど書いてない。公安が書類を全部読んで、廊下を入り口から一〇mぐらい進むと階段があった。階段の下に、石灰の大きな箱が置かれている。公安が思考を停止させながら、石灰の箱を調べると、そこにいたのはさめだった。死んだ研究員は死体をさめのえさにしていて、あやまって水槽に転落して、さめに胴体を食われたあと、さめが水槽から飛び出して廊下をうねうねと移動して階段から落ちて石灰の箱に飛び込んだようだ。公安は死亡原因が判明するまでの文章を紙に書いて、書類の箱に入れた。




超IQ研究所クラスター②

2019-06-28 09:56:16 | 小説
 昭和一四年三月未明。北京の博物館で、紀元前の、黄金の板が、盗まれているという事件が起きた。文字が刻まれた黄金の板は四枚あって、一枚だけ裏側に人類発祥前の、宇宙人からの伝言が刻まれていて、盗まれたのはそれだ。公安(中国の警察)は担当していた学芸員に事情を聞く。黄金の板はガラスケースに入っていてかぎがかかっていた。しかし学芸員は新入りで閉館後に裏側の文字を写しと、照合するためにかぎをあけていたらしい。公安が写しはどうしたか聞くと、学芸員は「ケースに置き忘れた」と言う。学芸員は照合をしていて気ぶんが悪くなって、お茶を飲んでいて忘れてそのままにしたようだ。学芸員が「これ賄賂なのですけど受けとってください」と言って公安に金貨を三枚渡す。古代皇帝の彫像があって箱を置いておくと、ときどき金貨が入っているという。公安は地金価格の領収書を書いて、金貨を受けとった。こういう物は資源の寄附として受けとって、日本の恵まれない子供たちに送金する。黄金の板は、金の含有量が少なくて、警備が手薄だから犯人は入場者の誰かみたいだ。黄金の板は日本軍が「価値なし」と判断しただけあって二千年以上蓄積された黄金にまつわる想念を、砲撃や怒号でかきまぜて毒性が、強い卑金属がまざっているかのような光線を放射している。その存在を認識しようと、すると思考が虫食いになって、読み書きがままならない下級官吏の目にどう見えるか、考えるだけになる光だ。あるいは囚人の、呪いのような毒々しい手変わりがある金貨を、紀元前に転送してつくったのかも知れない。数日後に骨董商からそれらしき物を入荷したという届け出があった。公安が確認すると、確かに本物だが、裏側の文字が削りとられている。翌日に「文字盤を盗んだのはおれだが」と言う男が自首してきた。男は博物館の近所に住んでいて、奥さんの、看病の気晴らしで博物館に入場してかぎがかかってないケースを見て「家内が病気になった原因は文字盤の呪いだ」と考えて、盗み出したという。事件のうわさを聞いて、奥さんの病気がよくなったから自首してきた様子だ。公安が削った文字と、写しはどうしたか聞くと、「文字はスコップでけずって、けずりかすと紙はすぐストーブで燃やしたからなにが書いてあったか覚えてないよ」と言う。公安が新入りの学芸員や、他の関係者に書いてあった文字を聞くと、へんやつくりが微妙に違う古代文字で、他に写しがなくて誰も覚えてなかった。


超IQ研究所クラスター

2019-06-27 16:06:21 | 小説
 昭和一七年一月未明。南京で遺品整理屋の、夫婦の家に日本兵が侵入して、亭主の首をはねて殺すという事件が起きた。奥さんの話では夜なかに亭主が寝室を出て、戻ってくるときに日本兵が後ろから日本刀で首をはねて立ち去ったという 。日中戦争の発端は紀元前から同じ民族である中国人と、日本人との父子的関係において、千年以上続けられていた貨幣の仕送りを中国側がとめたことに起因する。子供が父親の寝室で、金目の物を物色するように、日本兵たちは中国において傍若無人なふるまいをした。この、事件もそれらの、事例のあとをたどった結果だとも思える。公安(中国の警察 )は日本軍にかけ合った。親から盗んだお金をあたかも自ぶんで働いて得たお金のように、理由づけをしているような日本軍の広報は「民間人の家に侵入してそんなことをするなんてありえない。現場をよく確認することだ」と言う。公安はもういちど現場を調べた。夫婦の家は、そこだけ時間が百年ぐらいとまったままのようなたたずまいだ。金貨が八〇枚ほど、目立つ場所に置いてあったがひとつも盗まれてないらしい。公安が金貨をよく見るとどれも文字の形や、数字の位置が、微妙に違うめずらしい物ばかりのようだった。奥さんに金貨のことを聞くと、「文字の手変わりだと、書き物とかに多少使えますけど数字の位置が違う金貨は、使い道がなくて、買い手がつかないんです」と言う。これらの金貨は「非常に価値がある物」と錯覚して親から無心した物が相当あるに違いない。吸い込まれるような黄色っぽい貨幣の重力によって、歴史を描写した貴重な文字列も遠い昔の意味不明な幻となってしまう。公安が「気づき」ぐらいの微細な手変わりを、千倍や万倍にした金貨特有の悪趣味な熱い負荷を感じながら、小学生の息子に聞くと、「お父さんは未来が見えるガラス玉を見てたよ」と言った。確かに直径一五㎝ほどのガラス玉はあるが、ガラス玉という物は現在しか見えないだろう。しかし未来において歴史描写の間違いを、判定する道具になるのかも知れない。公安が「成金の予言は的中することがある」と思いながら、夫婦の寝室を調べていると、誰かの視線を感じた。天井板のふし穴に目玉がある。公安が「出てこい」と叫ぶ。目玉が消えて、玄関から奥さんのお兄さんが剣を片手に持ってやってきて「日本兵をやっつけた」と言う。公安は「おまえが殺したのは亭主だ」と言いながらお兄さんを逮捕した。 


超IQ研究所 「社長」

2019-06-23 13:14:32 | 小説
 おれは千文字小説専門である出版社の社長だ。今年は二〇六〇年だが十数年前に、突如として巻き起こった千文字小説の流行にわが社は遅れをとった。紙本がこれほどまでに売れるとは、誰もが予想してなかっただろう。わが社も流行に便乗して千文字小説を公募して、種類ごとの専門誌を出版しているが売れ行きは思わしくない。しかし近年に開発された金星人が、読み上げる精神感応技術によって、読者管理の手間がほとんどかからないために会社としてやっていける。千文字小説の始まりは、読者との一体化を、目論む高齢の作家が増え過ぎたことから、文字数の規定が、厳しい千文字小説がとり入れられるようになった。つまりそれまでに書かれていた小説の形態は、高齢者の文章であったわけだ。しかし現在は文字数が規定内であれば、企業の広告文であってもかまわない。読者は定められた文字数のなかで、どれだけの表現ができるかを期待して読む。千文字小説には成人向け動画番組のような緊迫感がある。印象に残った作品は、すぐ脳裏に焼きつく。それは柑橘類の果汁入り清涼飲料水みたいな読みごたえでもあり、思考のよりどころとなる巨大辞典を編集したようでもある。そしてなによりも絶大な速力感が千文字小説の醍醐味と言えよう。投稿者にとって、毎年正月に振り込まれる一年ぶんの印税はちょっとしたお年玉だ。わが社は幅広い年代から投稿者を募集中である。なかでも小学生特集の雑誌は、実は飛ぶように売れているわけだよ。千文字小説が流行してから、われわれの宇宙人に対する理解が深まった。おれが独自に調べた記録では、太陽に住んでいる宇宙人が、八九種類で木星が二五八種類ほど。そして火星が五四四種類で月は一一種類しかいない。金星は月と同じぐらいで、他は不明だ。わが社で以前に「金星に病院がある」と主張する医者の、論文の特集をやったが金星人に違うと言われた。金星には、なぜか未来の本があるらしい。金星人に聞けば誰でも千文字小説を書ける。美しい文章。若々しい文章っ。深みのある文章。いずれも文章配列検査装置を使えば簡単に書ける。小学生が書いた家族の話。複数の海王星人と性交した思い出。政治家が外来語を、使った呪文を言い合う文章。女性の生理を拡張して、つくった保険の文章っ。なんでもいい。おれは若い頃に、小説家になりたかった。しかし千文字小説のできばえを見て気が変わって、売る方を選んだわけさ。



超IQ研究所 「ボルケーノ再」

2019-06-07 10:15:01 | 小説
 昭和一一年一一月未明。上海で食品倉庫の作業員が、行方不明になる事件が起きた。公安が関係者から事情を聞くと、その男は半年前に姿が見えなくなったという。まじめな性格でいちども無断欠勤をしたことがないらしい。公安が倉庫を見ると、大型の冷蔵庫が八台あった。公安の脳裏に「食品の恐怖にはかかわるまい」として、まじめに徹する男の姿が浮かぶ。責任者が声にならない声で「なかに死体があるのはわかってる。冷蔵庫の償却費用が供養代だ」と、いっているので公安が責任者に「開かない冷蔵庫があるだろ」と、聞いたら「故障してて半年前から開かないのが一台あるけど」と言う。公安が見ている前で工具を使って、冷蔵庫を開ける。公安は届け出があった昨日に「未来社会の食品店について」という論文を書いた。食品店の店員がやることは、商品は自ぶんの物で、現金は会社の物だという原則を守ることだ。自ぶんの物としていらない物や不明な物があった場合は、店長や他の店員と話し合う。問題は原則がよくわからなくて、現金が自ぶんの物になる猛獣みたいな店員だ。商品が自ぶんの物じゃないことから、当然仕入れや値づけで間違いの原因になって、客にくさった物を売りつけようとする。そのような店員からおつりをもらうと、現金と商品が逆だからいらない商品をまるごともらうことになりかねない。もちろんくさっている。公安はそこで猛獣につける鎖として「悪魔のルール」を考えた。「食品店で買い物をするときはその店において、一番頭が悪い人の頭脳で商品を選ぶこと」もちろんそんなルールなどない。これだと猛獣を飼育係が管理できる。公安はそこまで書いてから「これは華僑が外国で使ってる手口だ」と気づく。論文はそこで終わりだが、公安がこの、二段階のひねりが、外国でどのように見られているか考えていると、冷蔵庫のドアが開いた。なかから猛獣のえさみたいなねずみが数百匹出てくる。白骨死体があって作業服に行方不明の、男の名前が刺繍されていた。公安は死んだ男がドアを内側から開けるための工具で開閉していて、ドアを閉めた状態で作業してねずみに襲われてあわてて脱出しようとして、ドアの開閉金具を曲げてしまって閉じ込められて死んだと断定する。ドアの鉄板は二重になっていて、死んだ男は内側のレバーをとり外した穴に、工具をさし込んで開け閉めしていたようだ。死んだ男にも華僑の手口が、見えていたのかも知れない。



超IQ研究所 「IQ100の目安」

2019-06-06 16:42:37 | 小説

四七四三の悪魔 現代はパソコンにある関数電卓のプログラムよ。IQ一〇〇は正七角形の一辺を、二ぶんする直角三角形のコサインXを求める三次方程式ができた場合ね。数値は計算ソフトがないと無理だけど、方程式はつくれる。まずは円形ぶん度器の外周で、半径一の円を描く。読み方は「えがく」でいいわ。外周に二六度弱ずつ、一四か所に印をつける。印二つぶんの直線を七つ書いて正七角形。まず中心から直線を二本書いて、正七角形の一辺が底辺になる二等辺三角形をつくる。次にその底辺を、二ぶんする直線を中心から外周へ書く。底辺と中心からの直線が、直交してできる直角三角形の短い辺がサイン。長い辺がコサインよ。斜辺の長さは一。このコサインを、Xの三次方程式で表して計算ソフトに入力すると数値が出てくる。パソコンの関数電卓で、三六〇わる一四のコサインをクリックすると〇.九〇〇九六八八・・よ。正七角形の隣接する辺にもうひとつ辺を、二ぶんする直線を中心から外周まで書く。その、外周上の点からXを通過するように、Xの斜辺と外周が重なる点へ直線を書き込む。Xとの通過点が、円周角の法則で一から(一マイナスX)を、二回引いた長さを表してるわ。Xとの通過点をWにする。円周角は外周上の辺から円に内接する点で三角形をつくると、どの点でも頂点が同じ角度になることよ。ポイントは隣接する辺の中心を、直交する直線の中心から、Wへ直線を書くとなぜか二ぶんの一が、コサインになる二倍角の直角三角形ができること。これがプログラムのもとよ。二ぶんの一で直角三角形になってるかどうかは、パソコンの電卓で数値計算をしないとわからない。方程式のつくり方をやるわよ。二倍角の公式は(二かけるX二乗マイナス一)が、二倍角のコサインを表してるから、(二かけるX二乗マイナス一)に斜辺ぶんのコサインをかけた値が、二ぶんの一になる関係を、方程式にする。二倍角になる直角三角形の斜辺は(二Xマイナス一)。斜辺の比例関係から、Xの数値を求める方程式は、(二Xマイナス一)かける(二X二乗マイナス一)イコール二ぶんの一よ。
 
 


超IQ研究所 「月星人」抜粋⑩

2019-06-04 19:00:59 | 小説
 おれは昔のSF小説を読んでいる。おもしろみの原因はときどきかいま見える読み書きがままならぬやつだ。七三%ぐらいおもしろいけど欠点がある。それは思考描写に読者の重要事項がはまって、読み書きがままならぬやつと、読者があとで遭遇することだ。この手法は現代や未来において嫌がられる。つまり具体的に表現するしかないわけだ。読み書きがままならぬやつとの間に、高さ八mくらいになる防波堤を築く必要がある。おれは読み書きがままならぬやつの話し相手に直立熊五番目を考えた。直立熊は「二本足で立って歩くと人間のことばをしゃべれるようになる」と言う。直立熊の毛は化学繊維でできていた。読み書きが、ままならぬやつがさわるとひっかかれて神経痛になる。直立熊は挙動不審者を見かけるごとに、読み書きができるかどうかを確認した。直立熊は挙動不審者の学生時代を透視して、黒板の文字を、紙に書いてない場面を注意深く観察する。直立熊は読み書きがままならぬやつの学生時代に時空移動して同級生から聞きとりをした。直立熊は爪で黒板をひっかいて、読み書きがままならぬやつのことを知る生徒と筆談して、読み書きがままならぬやつはしゃべるときに、なにと一体化しているかについて話し合う。話し合うときは口に鋼鉄製の覆いをする。パソコンの起動が遅くなった。新しいワームだろうか。検索デバイスのだな。おれはワームと思われるファイルを片っぱしに削除した。ごみ箱をカラに見せるのは、きっと強力なワームに違いない。もう大丈夫だろう。インターネットが使えなくなった。読み書きがままならないやつと同じ世界だ。インストールしなおした。おれは直立熊に恋人をつくる。二体並んで町なかを歩かせた。郊外の住宅地で、本物の熊に襲われることがあると警告するためだ。おれは直立熊に装身具をつけようと思ったがやめた。歩くぬいぐるみのままがいい。代わりにせりふをつけた。「読み書きが、ままならぬやつがあなたの声に聞き入ってる気配を感じたら、僕たちに言ってください」。このまぎらわしい気休めが、直立熊の特徴だ。おれは針金を直立熊の恋人にぐるぐると巻いた。恋人は、なんだか怪しい。直立熊は国語辞典を持ち歩いている。直立熊が「どれほど読み書きがままならないのか少しずつ説明するわけだな」と言う。そういうことだ。直立熊は読み書きがままならぬやつの声にかたずをのんで聞き入る。がんばれ。直立熊は読み書きがままならない挙動不審者をいつも見張っている。



超IQ研究所 「月星人」抜粋⑨

2019-06-03 13:20:34 | 小説
 おれは裸婦の絵を描いていた。おれには写実絵画を描く技術がない。絵の具が、ごみになる恐れがある。女の顔をできるだけていねいに描いて、からだと背景をおよそで描く。女の生首に興味を示す男は、他人の思考に関心がある。文字にして売っている物があることを知らないのかも知れない。おれの本業は文章を書くことだ。裸婦の絵は、文章との親密な関係を意味している。膣のぬめりに挿入して、かいま見える未来の可能性は文章にしないと、動物の交尾と同じだ。やり終わったあとに、女が男に「おもしろい話をして」と言う。ただでまたやるには「おれは・・と思ったけどさあ・・」と思考描写を入れる必要がある。おれは女の背景に本棚らしき物を描いて、SF小説の表紙を描く。読み書きが、ままならぬやつが思い浮かぶと送りがなでいちいちひっかかって、文字を読む速度が遅くなる。そして本の内容を覚えられない。おれは「特攻隊の記録」という本を読んだ。そんなことよりもファイルホルダーに反応するワームは防ぎようがない。これはワームの、発信もとの接続サーバーから除去指令が出されると閲覧履歴をたどって、こっちの回線が切断される。これを人間におきかえると、収束しない水かけ論になるだろう。おれは読み書きがままならぬやつに虚構の呼びかけ文句で、未来や若さの幻を見せることが果てしなくむだであると思いながら、女の背景に窓と太陽を描いて、太陽に目玉を描く。読み書きをする努力すらしないことと戦争がどう関係あるのだろう。文書作成装置が普及して、いまどきの若者はほとんど読み書きができる。おれの世代は読み書きがままならぬやつとともに滅びるかも知れない。読者は読み書きがままならぬやつとできるだけ強力で地雷原のような一線を画するために、本を読む。あるいは細菌兵器や想像を、絶する科学兵器を使って読み書きが、ままならぬやつが、一歩も近づけないようにする手順や方法が書いてあることを期待しているのだろう。おれは太陽に、鋭い歯をていねいに六四本描く。なにかしゃべるだろう。そのとき「もっと大きく描いて」と言う声が聞こえた。おれの脳裏に完成した絵が浮かぶ。人口一兆人の星だ。海がある星。四大陸で四〇億人だから大陸が千ぐらいある。無名な天才画家の作品だろうか。おれはさっきの声をもういちど聞こうとしたが、なにかの装置に、記録作業が終わったあとのように忘れた。