むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㉓

2019-07-19 10:05:14 | 小説
 昭和一三年四月未明。香港の銀行で、焼却灰のなかで行員が、死んでいる事件が起きる。公安(中国の警察)が他の行員に事情を聞くと、死んだ男は「古い紙幣を焼却処理する担当だ」と言う。銀行は灰の重量で管理していて事件当日に測定して灰を処理する予定だったらしい。公安は死んだ行員が複数の男によって、灰の袋に押し込まれる凶悪事件を考えようとしたが、どう見ても気づかれないように、灰の袋に潜り込んで窒息死している。公安は手変わりがある金貨を銀貨や銅貨、あるいは紙幣に、両替できる場所が他にないことから緊張した。公安の脳裏に、未来の日本で女性が、高額面の金貨を銀行で両替している場面が浮かぶ。公安は安くて高品質な服や電気製品を、中国でつくる必要を感じた。しかし未来の日本において、持ち主が若さとわがままを集約しているであろう手変わりのある高額面金貨は、本人の都合では、なくて負荷を体感している人のために使う物だと思う。公安は未来における日本の、子供たちがつくる木星の、衛星タイタンとの時空的民族関係を考えながら、男の自宅を捜索する。公安がドアを開けると部屋じゅうに、番号順に並べた大量の廃棄用紙幣があった。天井にも、御札のようにあちこち貼ってある。廃棄用紙幣は簡単に持ち出すことができたみたいだ。男の遺品に、日本の恵まれない子供たちへ送金する計画書があって公安は参考資料として預かることにする。計画書には廃棄用紙幣で手変わりがある金貨を回収して、回収した金貨を日本へ送って地金にしてから、また手変わりがある金貨を、つくるという方法が書いてあった。その際に「南京大虐殺の呪いなどを手変わりにおり込んで、両国の父子的関係を強固にします」と書いてある。その日公安は、華僑の組合が主催する変則投資保険講習会に参加した。変則投資保険とは現行貨の手変わりに対して、お金をもらうだけの保険だ。つまり「もらったお金のぶんだけ、手変わりの要因から受ける影響を緩和しましょう」という保険である。公安が金貨の手変わりだと、いくらぐらいかかるか質問すると、主催者は「その、金貨の、半ぶんくらいの保険料が必要」と言う。公安が「事件のときに関係者が、持ってる場合だけだが」と言ったら、主催者は「加入者がたくさんいればもう少し安くできるけど」と答える。手変わりがある金貨の保険は、ないということだ。公安は死んだ行員の計画書どおりに、未来の日本に転送することが最善だと思った。