むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター㉑

2019-07-17 09:31:21 | 小説
 万葉集の時代はいろいろ不便だがまず紙をつくろう。水車小屋で木くず粉砕器とプレス機を動かして、紙をつくる。タイトルは電話局。

 昭和九年一〇月未明。大連の電話局で、電話交換手の女性がトイレでからだに銅線を巻かれて、感電死している事件が起きた。現場はとなりの、トイレの天井からケーブルが引かれていることから、犯人はとなりのトイレに潜伏していて、女性電話交換手を気絶させたあとに、銅線を巻いて感電死させたようだ。公安が天井を調べると、むき出しの電線から電源が引かれていて、なぜか天井裏に写真機が置いてあった。公安が「考えるひまのない事件だ」と思いながら、設備の責任者に事情を聞くと、責任者はときどき「せいやっー。せいやっ」と口ずさみながら、「トイレの天井は電話線が密集してて専門業者じゃないと、そういうことはできないー」と言う。公安が「そのかけ声は、なんだ」と聞いたら、責任者は「祭りの練習うー。せいやっさー。よしっ」と答えた。近々祭りがあるらしい。電話局は四階建てで、事件の現場は三階。公安が心の保険会社に「犯人がまだなかにいる」と電話したら、担当員は「それは受付で確認してから。あと格闘シーンの点数計算がまだできてない」と言う。まず公安は入り口の警備員に事情を聞く。前日に、工事業者二名が局内に入って、二時間後に出た記録がある。公安が「本当に出てきたか」と聞いたら、警備員は「サインしか見てない」と言う。犯人はまだ局内にいる。公安は潜伏できる場所を下の階から順番に調べた。四階の資材庫に、人の気配がする。公安が心の保険会社に電話して「点数計算はどうするんだ」と聞いたら、担当員は「相手は想像の産物ですから勝てる犯人しか出てきません」と言う。公安がドアを開けると、なかから懐中電灯を持った色黒な女と、長さ二〇㎝ほどの電極棒を二本持った男が「さあー。さあーっ。さあー」と叫びながら飛び出してきた。公安のカンフーでたちまち二人は逮捕されて洗いざらい白状する。二人は「思想改造集団」のメンバーで、電話工事の業者だったが「電話は思想をねじ曲げる物だから」と考えて、犯行を計画したという。男に写真機を、置き忘れていたことを聞くと、「仕事が完了しないと撮影できない」と言った。そのとき、公安の、心の保険会社から電話がかかってきて、いつもの担当員が「電話会社では好奇心をかたむけるように、一年じゅう祭りを、やる習慣があることをどこかで説明して」と言う。公安が「殺人事件自体の点数計算はどうする」と聞いたら、「全部つくり話だ」と言った。