むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

超IQ研究所クラスター⑩

2019-07-06 09:28:56 | 小説
 ウインドウズXPで素因数分解をやって、人工知能を合成することにした。確か22桁後半の素数で20時間ぐらいなはずだ。スーパーコンピューターをつなぎ合わせてもこれの2~3倍くらいの桁数までしか計算できない。電気代が二千円ぐらいよけいにかかるけどビタミンB12欠乏ゾンビとにらめっこをしていても時間の無駄だから、計算ソフトを動かす。タイトルは自転車。

 昭和一五年一二月未明。瀋陽で、自転車で橋を渡っていた男が、高さ一mほどの欄干を越えて川に転落死している事件が起きた。「橋に自転車があって、下で人が倒れてるよ」と言う通報で駆けつけた公安(中国の警察)が現場を調べる。死体は水深五〇㎝ほどの川底に足を曲げて、うつぶせの姿勢でざんげをしているようだ。公安は「脳みそを使うことが、もったいないような気がする」と思いながら橋の下に住んでいる漁師から事情を聞く。漁師は「午前一〇時頃に釣り人がいたよ」と言う。公安は釣り人の人相を聞いて目撃者として探す。公安はさっきの思いは、なにかの計画と、並行していた物だと感じた。二日後に釣り人が自首してくる。釣り針を遠くへ投げ入れようとして、橋の上を自転車で走っていた男にひっかかって強く引いて橋から落ちたらしい。男は「新開発の炭素繊維糸で大物釣りを狙ってたけど人間がひっかかった。考えごとに集中してて釣り針を外して逃げたけど」と言う。公安は男を逮捕する。男は二〇代後半の若さだがねずみ講を研究していて、最初の会員をどうやってだますか考えていたらしい。公安が計画書を見せてもらうと、事務手数料が明記されていて会員権の売買方法も計画された精密な物だ。その日公安は、未来社会における経済犯罪の所見を書いた。有能な人間が詐欺まがいの方法で、お金を集めるという行為その物は問題ないが、有能じゃない人間との落差が問題になる。公安は昨日「放蕩のあげく読み書きが、ままならない官吏がいることについて」という論文を書いた。国民の見本であるべき官吏が、読み書きがままならないことをどう表現するかの文章ひながたである。公安は未来社会の所見と昨日書いた論文を若い公安に見てもらう。若い公安は二つの書類を読み終えて「放蕩じゃなくてなにかの後遺症で読み書きがままならないことにしてください」と言った。公安は有能な人間と逆な人間が合成する地層のずれみたいな物を感じる。「凶悪犯と下級官吏が格闘して、下級官吏が負傷して、後遺症で読み書きがままならなくなったらしい」という文書を、つくる必要性を感じた。公安が「『文字の共有』を『秘密の共有』かなにかと間違えてるんだな」と言ったら、若い公安は「格闘する文書は年上の、人の仕ごとです」と言う。公安は中年を越えた読み書きが、ままならない下級官吏が若くて有能な人間に感化されて世代を越えて、若さを体感することによってなにかの後遺症が、発生するのだろうと考えた。