昭和六年三月五日

スチュアデス三名が誕生しました。エアガールという名で東京航空輸送株式会社が募集し、応募者一四〇名のなかから三名が誕生しました。採用試験は極めて厳しかったそうであります。つまり老輩の誕生日より数ヶ月早くスチュアデスの先輩が誕生（東京朝日新聞昭和六年三月六日朝・夕刊）翌日六日には、日本で最初の女性によるパラシュート降下が行われました。降下者は、日野パラシュート研究所の宮森美代子一九歳、場所は千葉県津田沼海岸伊藤飛行場であります。好天に加え絶好の降下日和、飛行場の周辺には｢可愛い娘さんの空からの飛び降り」というので五〇〇〇名に上る観衆が詰めかけています。駅から飛行場へ行くバスはいくら客を運んでも乗せきれず、乗車を待つ長蛇の列が出来てしまいました。降下の宮森嬢は午前九時に到着、十一時ごろにはパラシュートに身をかため、彼女の乗る空中作業会社機の整備が急がれています。正午彼女が乗り込むと期せずして観客から歓呼の声が起ります。離陸した機は飛行場上空を旋回しながら高度を上げて行きます。たちまち高度五百メーター。飛行場上空の飛行機から、黒い一塊となって彼女が飛び降ります。パッと開く白いパラシュート、そしてフワリフワリと美事に谷津遊園地海岸の砂上に着地したのでありました（東京朝日新聞三月七日夕刊）。
しかしかなり勇気ある行為だと思いますね。前年に始まった民間航空会社による定期旅客運送にこの年事故が二件ありました。鈴鹿峠上空での事故と大刀洗から大阪に向かった航空機の墜落事故であります。