京都平和市民連合(平和塾)

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冒頭陳述全文の2(続き)

2017-07-01 14:21:17 | 福島原発告訴団関西支部

▲想定津波水位の計算結果とこれに対する被告人らの対応




▽O.P. +15.707mの衝撃

中間報告に先立つ、平成20年3月18日、東電設計から、東京電力に対して、地震本部の長期評価を用いて、明治三陸沖地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに設定した場合の津波水位の最大値が敷地南部でO.P. +15.707mとなる旨の計算結果が、詳細な資料とともに示されました。

本件原子力発電所の1号機から4号機は、O.P. +10mの高さに設置されているのですから、この計算結果は、敷地の高さを超えて津波が襲来するという衝撃的なものでした。

この計算結果によれば、 当然、原子炉・タービン建屋内に海水を浸水させない対策が必要になります。

N は、この結果を J に報告し、J の指示を受けて、東電設計に対し、敷地への津波の遡上を防ぐため、敷地にどの程度の防潮堤を設置する必要があるのかの検討を早急に行うよう依頼しました。

これを受けて、同年4月18日、東電設計は東京電力に対し10m盤の敷地上に1号機から4号機の原子炉・タービン建屋につき、敷地南側側面だけでなく、南側側面から東側全面を囲うように10メートル(O.P. +20m)の防潮堤(鉛直壁)を設置すべきこと、5号機及び6号機の原子炉・タービン建屋を東側全面から北側側面を囲うように防潮堤(鉛直壁)を設置すべきことなどの具体的対策を盛り込んだ検討結果を報告しました(別図6参照)。

この結果は、直ちに J に報告され、同年6月2日には、 L にも報告されました。

このほかにも、東京電力は、東電設計に対し、10メートルの敷地上に津波が襲来するとの計算結果を踏まえて、様々な津波対策の解析を依頼しました。

同年5月18日には、数値解析の観点から、津波水位を低減できないかの検討、さらに既存防波堤の付け根に津波減勢効果のありそうな防波堤を新たに設置する場合の解析を依頼しました。

同年6月5日には、沖合防波堤を新たに設置した場合の検討も依頼しました。

▽被告人武藤への報告

このように、東電設計の検討結果は、大がかりな対策工事を必要とする内容であり、予算上だけでなく、地元等に対する説明上も非常に影響が大きい問題であることから、被告人武藤に報告して判断を仰ぐことになりました。

平成20年6月10日、 L 、 M 、 J 、 N 、 O 及び機器耐震技術グループ、建築グループ、土木技術グループの担当者が出席し、被告人武藤に、地震本部の長期評価を取り上げるべきとする理由及び対策工事に関するこれまでの検討内容等を資料を準備して報告しました。

資料の中には、土木学会の津波評価部会の第2期の津波ハザード解析に関する検討結果を基に東電設計が計算した結果から作成した「津波ハザード曲線(福島第6号機)」と題するグラフも含まれていました。

このグラフは、本件原子力発電所において、O.P. +10mを超える津波が来る確率が1万年に1回から10万年に1回と算出されていました。原子力安全委員会安全目標専門部会は、すでに平成18年の時点で、発電用軽水型原子炉の性能目標の定量的な指標値として、炉心損傷頻度を1万年に1回程度、格納容器機能喪失頻度を10万年に1回程度に設定していました。また、平成18年の耐震設計審査指針の改訂では、基準地震動の策定にあたっては、当該指標値を参照することとされていました。言うまでもなく、年超過確率の基本的な考え方は、津波も地震も同じで、この指標値は、確率論的津波評価に際しても参照されるべき数値なのです。この計算結果は、津波と地震という違いはあるもののO.P. +10mを超える津波が来る確率と、基準地震動を超える地震が発生する確率がほぼ同等であることを示していたのです。

J 、 N が行った、地震本部の長期評価を採用して、津波対策を講じる方向での説明に対し、被告人武藤は結論を示さず、

津波ハザードの検討内容について詳細に説明すること、

4m盤への遡上高さを低減するための概略検討を行うこと、

沖合に防渡堤を設置するために必要となる許認可を調べること、

平行して機器の対策についても検討すること、

を指示したため、 J らは、上記事項をさらに検討した上、改めて報告を行うことになりました。

N らは、同日、被告人武藤の指示を受けて、東電設計に対して、既設の防波堤をかさ上げした場合に、取水口前面と取水ポンプ位置での低減効果があるか否かの検討を依頼しました。これに対して、東電設計は、同年8日、それまでに検討した対策工をとりまとめた資料を作成し、東京電力に交付しました。

その資料中には、沖合防波堤を新たに設置した場合、津波水位を数メートル程度低減できることが示されていますが、このときの検討も1号機から4号及び6号機の南側のみならず全面に防潮堤(鉛直壁)を設置することを前提とするものでした。

7月8日には、 さらに、津波の進入方向に対して垂直に沖合防波堤を設置するケースで高さ10mという前提で港湾の船舶の出入りを妨げないようにしながらさらに、津波の進入を防ぐような構造の防波堤の検討が依頼されました。これらの検討結果7月22日、報告されました。

▽被告人武藤による方針変更

平成20年7月31日、J 及びN らは、改めて被告人武藤に対し6 月10日に指示された項目についての検討結果を報告しました。

J らは、それまでに作成した資料に基づいて

4m盤への遡上を低減させるための方策、

沖合の防渡堤の設置に伴う許認可の内容と必要とされる期間、

想定津波水位について房総沖地震の波源モデルを用いる可能性、

日本原子力発電や東北電力等の関係各社の検討状況、

津波ハザード曲線の算出方法、

などについて説明しました。

被告人武藤は、この報告を聞いて、

福島県沖海溝沿いでどのような波源を考慮すべきかについては、時間をかけて土木学会に検討してもらうこと、

当面の耐震バックチェックについては、従来の土木学会の津波評価技術に基づいて行うこと、

この方針について、専門家の了解をえること、

という方針を指示しました。

この被告人武藤の指示により、地震本部の長期評価に基づいて、津波対策を講じるべきとする土木調査グループの意見は採用されないこととなりました。

このことは、それまで土木調査グループが取り組んできた10m盤を超える津波が襲来することにそなえた対策を進めることを停止することを意味していました。

原子力発電所の津波安全性評価は、従来より「襲来する可能性のある津波」が襲来しても安全性を損なうおそれがないかどうかでなされていました。

本件原子力発電所についての津波高さの評価は、

設置許可時 O.P. +3.122m

平成6年  O.P. +3.5m

平成14年  O.P. +5.7m

と変遷してきましたが、東京電力では、その都度、「いつ」そのような津波が襲来するかを考えるまでもなく、津波対策の必要性を判断し、これに対処してきていました。

現に、平成14年には、非常用海水ポンプ電動機を20cmかさ上げする等の工事を行っています。

ところが、長期評価に基づいて10m盤を超える津波が襲来するという計算結果が出ると、従来の姿勢とはうって変わって、土木学会に検討を委ねて、津波対策を先送りにしたまま、漫然と本件原子力発電所の運転を継続したのです。

▽被告人武黒への報告

被告人武藤は、平成20年8月上旬ころ、津波水位の最大値が敷地南部でO.P. +15.707mなる旨の計算結果を、被告人武黒に報告しました。

▽総沖地震の波源モデルに基づく O.P. +13.552mの計算結果

平成20年7月31日に被告人武藤から方針が示された後も、 N は J の指示に基づいて、東電設計に対し、房総沖地震の波源モデルに基づく想定津波水位の算出を依頼しました。

同年8月22日、東電設計から、地震本部の長期評価を用い、房総沖地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに設定した場合の津波水位は、本件原子力発電所敷地南部O.P. +13.552mとなる計算結果が示されました。

この時点で、地震本部の長期評価を取り入れる限り、明治三陸沖地震の波源モデルを用いようと、房総沖地震の波源モデルを用いようと、想定津波水位は、原子炉建屋等の敷地高(O.P. +10m)を上回ることが明確に示されたのでした。

そしてこの波源モデルを房総沖地震とするという考え方は、後に述べるように、被告人らが依拠していた土木学会津波評価部会も、平成22年12月上旬には、これを採用するに至るのです。

▽耐震バックチェック説明会での説明

平成20年9月10日、本件原子力発電所の所長らに対して「耐震バックチェック説明会」が行われました。

O は、資料に基づいての長期評価の取扱いに関する説明をしました。資料の「今後の予定」には、「地震及び津波に関する学識経験者のこれまでの見解及び推本の知見を完全に否定することが難しいことを考慮すると、現状より大きな津波高を評価せざるを得ないと想定され、津波対策は不可避」と記載されていました。

▽「中越沖地震対応打合せ」におけるL 発言

平成21年2月11日、被告人ら3名も出席して、「中越沖地震対応打合せ」が開催されました。 M が、中越沖地震対策センター作成の「福島サイト耐震安全性評価に関する状況」という資料に基づいて説明を行いました。

配布された資料の中には、本件原子力発電所の耐震バックチェックの最終報告見込み時期として、1号機を平成22年4月、2号機を平成24年11月、3号機を平成23年8月、4号機を平成23年3月、5号機を平成23年1月、6号機を平成24年5月、最終報告を平成24年11月とする旨の記載があり、「地震随伴事象(津波)」については最終報告で触れることとされていました。

またこの資料には、地震随伴事象(津波)のところに書記役・ R の手書きで「問題あり だせない(注目されている)」などの記載があります。

席上、「1F、2Fのバックチェックの状況」(1Fは「福島第一原子力発電所」2Fは、「福島第二原子力発電所」)についての議論では、被告人勝俣の「最終報告とは工事まで終了しているということか」との質問から議事が進み、その議事過程で L は、「土木学会評価でかさ上げが必要となるのは、1F5 、6のRHRS(残留熱除去海水系)ポンプのみであるが、土木学会評価手法の使い方を良く考えて説明しなければならない。もっと大きな14m程度の津波がくる可能性があるという人もいて、前提条件となる津波をどう考えるかそこから整理する必要がある」と注目すべき発言を行いました。

被告人勝俣は、L のこの発言を明確に聴きました。

「中越沖地震対応打合せ」では、それより以前から継続的に福島第一、第二原子力発電所の地震や津波の安全性評価等について報告や議論がなされ、情報が共有されてきていたのですから、このような津波水位に関する発言は極めて重大な情報でした。

被告人勝俣は、このような発言を聴いた限り、少なくともこれ以降、本件原子力発電所の津波安全性評価に関する詳細な情報を収集するなどして、 これに対応すべきでした。そうすることによって、原子力・立地本部本部長であった被告人武黒や副本部長であった被告人武藤に対しても、上発言の趣旨を確認し、被告人武黒、被告人武藤と同様の認識をするに至ることができたのです。

▽平成20年8月以降の検討

N ら土木調査グループは、被告人武藤の指示に従って、平成20年8月以降、土木学会に地震本部の長期評価の取扱いを検討してもらうために、平成21年度からの電力共通研究として研究委託を行う手続を行いました。

また、同年10月以降、 S 日本大学教授、 G 教授、 T 秋田大学准教授、 Q 教授、 E 教授ら専門家に対して意見を聞くことなどを行いました。

その間、被告人ら3名が出席する「中越沖地震対応打合せ」において、津波評価を伴う耐震バックチェックヘの対応について協議が続けられていました。

被告人らは、「中越沖地震対応打合せ」の席上だけでなく、株主総会に向けての準備グループ経営会議、常務会等の会議において、担当者から、本件原子力発電所の津波安全性評価を含む運転・安全保全業務に関する報告を受け、資料の配布を受けるなど、被告人らには、頻繁に本件原子力発電所の津波安全性評価に関する情報が提供されていました。

こうしたなかで、「耐震バックチェック」の最終報告を延期することや、津波対策費用については、数値を確定してからでないと定まらないとの理由で、検討を要する事項とすることなどが確認されました。

このような諸事情は、上記会議等に出席していた被告人らが、本件原子力発電所の津波安全性評価に関する情報を収集することができ、またすべきであったことを示しています。




▲土木学会第3期、第4期津波評価部会における検討




▽第3期津波評価部会による確率論的リスク評価手法の検討

原子力安全委員会においては、地震動に対する耐震安全性評価における確率論的評価(「確率論的安全評価」Probabilistic Safty Assessment : PSA)の導入が議論されており、津波に対する安全性評価についても確率論的評価が必要になると考えられていました。

東京電力等においても、確率論的津波評価の実用化に向けてモデルの高度化と標準化の必要性が認識され、土木学会に対して、その研究を委託しました。

こうして、平成19年1月から平成21年3月までの間に開催された第3期津波評価部会では、引き続き、確率論的津波ハザード解析の検討が行われました。

この調査研究の過程で、津波の発生領域については、津波評価技術のほか、地震本部の長期評価や当時進展が見られた貞観地震の知見も考慮され、第2期同様に、波源の選定に関する「重み付けアンケート」が行われました。このアンケートでは、

1.三陸沖と房総沖のみで発生するという見解

2.津波地震がどこでも発生するが、北部に比べ南部ではすべり量が小さいとする見解

3.津波地震がどこでも発生し、北部と南部では同程度のすべり量の津波地震が発生する

という見解の3つの選択肢で実施されました。

平成21年2月23日、「重み付けアンケート」の結果が報告され、地震学者等専門家の回答は、1.に最も重みを付けた学者が5名、2.に最も重みを付けた学者が4名で、3.に最も重みを付けた学者が2名で、その平均値は、1.が0.35、2.が0.32、3.が0.33で、2と3を合計すると0.65で、津波地震がどこでも発生するという考え方が、三陸沖と房総沖のみで発生するという見解を大きく上回っていました。

こうして第3期津波評価部会は、その成果として、津波ハザード解析の手法について、第2期の成果も含めた中間的な取りまとめとして、同年3月、「確率論的津波ハザード解析の方法(案)」をまとめました。

この解析方法は、各原子力発電所における確率論的津波評価を実施できるだけの精度に達していました。

こうしたことから、東京電力は、同年12月、東電設計に対して本件原子力発電所、福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所について、上記津波ハザード解析に関する検討結果に基づいた津波ハザード評価を委託しました。

その結果、本件原子力発電所4号機の評価地点において、10メートルを超える津波の年発生頻度は1万年に1回から10万年に1回の15メートルを超える津波の年発生頻度は10万年に1回から100万年に1回との結果が、遅くとも平成22年12月頃までには算出され、東京電力に報告されました。

この結果も、平成20年の1度目の津波ハザード評価と同様、平成18年に原子力安全委員会安全目標専門部会が示した指標値に照らすと、本件原子力発電所の保全のために取り込むべき数値でした。

▽第4期津波評価部会における津波評価技術の改訂

土木学会第4期津波評価部会は、東京電力等から、「津波評価技術の体系化に関する研究(その4)」の委託を受け、平成21年11月から、その調査・研究を開始しました。

主査には、 S 教授が就任し、委員の中には委託元である東京電力をはじめ、中部電力、関西電力等の電力会社の社員も含まれていました。

部会では、最新の知見を踏まえて確定論に基づく津波評価技術を改訂するとともに、確率論的津波評価について標準的手法を示すことを目的として、津波評価技術の改訂についての検討等が行われました。

福島県沖日本海溝沿いにおける基準断層モデルの設定方法も検討課題とされ、地震本部の長期評価を確定論としてどのように取り込むかが、主題として審議されました。

平成22年12月7日、土木学会津波評価部会幹事団は、同日開催された部会会議に、「波源モデルに関する検討」と題する報告書を提出しました。

この幹事団の中には、東京電力の N 、 O 、東電設計の U らも含まれていました。

この中で、三陸沖~房総沖海溝寄りのプレート間大地震の波源については、南部は、1677年房総沖地震を参考に設定する旨の報告がされ、この内容につき、出席した地震学者らからは、異論はありませんでした。

地震本部の長期評価を用い、房総沖地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに設定すると、本件原子力発電所敷地南部での津波水位がO.P. +13.552mとなるとの計算結果は、すでに2年以上前の平成20年8月22日、東電設計から示されていたことは、前述しました。




▲福島地点津波対策ワーキング会議の開催




平成22年8月、 N は、 M の後任である V 新潟県中越沖地震対策センター長らに対し、地震対策プロジェクトグループ全体を取りまとめて、その下で各グループが検討を進めることが必要である旨の進言をしました。

こうして、同年8月27日、第1回福島地点津波対策ワーキング会議が開催され、土木調査グループからは N 、 O  が出席しました。

同年12月6日には第2回、平成23年1月13日には第3回、同年2月14日には第4回が開催されました。

第3回の会議において、 O は、土木学会津波評価部会で、地震本部の見解に対応した波源として、日本海溝南部では、当初海溝沿いで最も大きな津波を発生させる三陸沖北部の波源を想定していたが、 日本海溝南部は北部と特徴が異なることから、房総沖の波源を用いることが提案されたこと、上記提案には異議がなかったこと、この場合でも、本件原子力発電所の敷地南部からの遡上については、11m程度であることから、敷地高さの10mを超えてタービン建屋が浸水する可能性があることなどを報告しました。

第4回の会議において、土木調査グループは、「1677年房総沖」津波による浸水イメージをもとに、津波解析を実施すること、土木耐震グループは、津波対策工の成立性を検討していくことなどを報告しました。

しかし、平成23年3月11日までに、具体的な津波対策が現実に開始されることはありませんでした。




▲長期評価の改訂




平成23年2月下旬、 N は、文部科学省から地震本部の長期評価を改訂する予定であることの事前説明をするとの連絡を受けました。文部科学省からの連絡を受けた後の2月22日、原子力安全・保安院原子力発電安全審査課耐震安全審査室の W 審査官から連絡を受け、 N は W 審査官と打合せを行いました。

W 審査官から、文部科学省は同年4月に長期評価を改訂して公表することを予定していること、改訂される内容によっては電力事業者に対して何らかの指示を出す可能性もあること、まずは東京電力の検討状況を聞きたいと言われました。

N は、東京電力にとって影響の大きい話であると考え、すぐに被告人武藤も含めた幹部に W 審査官の話を伝えました。

▲原子力安全、保安院による東京電力に対するヒアリング

平成23年3月7日、 N らは、原子力安全・保安院の X 耐震安全審査室長、 W 審査官らと面会しました。

席上、 X らは、地震本部が同年4月中旬に予定している「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」改訂版の公表に対する東京電力の対応についてヒアリングを行いました。

N は、土木学会津波評価部会においても、「北部では『1896年明治三陸沖』、南部では『1677年房総沖』を参考に設定する方針に異論なし」とされていることを説明するとともに、「明治三陸沖」で評価したときは、本件原子力発電所南側でO.P. +15.7m、「房総沖」で評価したときは、O.P. +13.6mの津波が予想され、タービン建屋等が浸水するとの分析結果がすでに出ていることを資料を示して説明しました。 X らは、この説明に驚き、早急に対策が必要である旨の指導をしました。しかし、東京電力では何らの対応策も講じることはありませんでした。

そして、その4日後に本件地震が発生し、O.P. +10mを超える津波が襲来したのです。




▲まとめ




▽東電設計による津波評価の計算結果は、本件原子力発電所に10m盤を超える高さの津波が襲来することを示すものでした。被告人武藤は平成20年6月10日、被告人武黒も遅くとも同年8月上旬には、上記計算結果を実際に認識していました。

しかも、被告人らが出席する「中越沖地震対応打合せ」等が継続的に行われ、席上、本件原子力発電所に関する様々な情報が報告され、とりわけ平成21年2月11日には、当時原子力設備管理部長であった L が「もつと大きな14m程度の津波がくる可能性があるという人もいて」などと発言しているのですから、被告人勝俣も上記事実を知ることができました。

このような状況である限り、被告人勝俣は、継続して本件原子力発電所の安全性に係る会社内外の情報を常に収集することによって、東電設計の計算結果の重大性は、十分に認識できました。被告人武黒も同様です。

このように被告人らは、いずれも本件原子力発電所に10m盤を超える津波が襲来し、これにより同発電所の電源が喪失するなどして、炉心損傷等の深刻な事故が発生することを予見できたのです。

そして万一、被告人らが、東電設計の計算結果や L 発言を軽視し、安全性評価や津波対策についての情報を収集することや共有することを怠り、適切な措置を講じることの必要性を認識していなかったというのであれば、そのこと自体、明らかに注意義務違反です。

▽さらにまた、被告人らは、長期評価の取扱いについては、土木学会に検討を依頼し、その検討結果に基づいて、その時点で必要と考えられる津波対策工事を行う方針であったと主張するもののようです。しかし、土木学会においても、三陸沖~房総沖海溝寄りのプレート間大地震の福島県沖の波源については、房総沖地震を参考に設定することとされ、しかも、この方法による本件原子力発電所敷地の津波水位は、すでに平成20年8月の時点でO.P. +13.552メートルであるとの計算結果が明らかとなっていたのです。

仮に被告人らの主張を前提としても、上記方針は被告人らが自ら設定したのですから、被告人らはこのような諸情報については、当然に報告を受けていたと推認することができます。もし、被告人らがこのような土木学会の状況などの報告を求めず、その状況を把握していなかったとすれば、 このこともまた、なお一層、被告人らの注意義務違反となるのです。

▽被告人らは、発電用原子力設備を設置する事業者である東京電力の最高経営層として、本件原子力発電所の原子炉の安全性を損なうおそれがあると判断した上、防護措置その他の適切な措置を講じるなど、本件原子力発電所の安全を確保すべき義務と責任を負っていました。運転停止以外の「適切な措置」を講じることができなければ、速やかに本件原子力発電所の運転を停止すべきでした。

それにもかかわらず、被告人らは、何らの具体的措置を講じることなく、漫然と本件原子力発電所の運転を継続したのです。被告人らが、費用と労力を惜しまず、同人らに課せられた義務と責任を適切に果たしていれば、本件のような深刻な事故は起きなかったのです。指定弁護士は、本法廷において、このような観点から、被告人らの過失の存在を立証します。  以上





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