ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

2024京都旅行(その5・完)

2024年05月23日 | 街歩き

さて、今日は最終日、天気は晴れ。まず朝食だがノダコーヒ本店に、朝7時開店のため、少し早めに到着。ここは開店前だが客が店先に並ぶと店の中に入れてくれるので好きな席に座って備え付けの新聞を読みながら7時を待つ。

もう結構先客が入っていたが、奥の広い庭園が見える席が空いていたので、そこに座る。今朝の注文は、昨日食べ過ぎたので、トーストとコーヒーのみとした、二人合計で2,000円くらいか。

ここはコーヒーにクリームと砂糖をあらかじめ入れて提供する方式、私はブラックを飲むのでそう言えば対応してくれる。ここは、1940年に猪田七郎氏が海外産コーヒーの卸売を始め、1947年にコーヒーショップを開いたのが創業である。この時、客が会話に夢中になってコーヒーが冷め、砂糖とミルクがうまく混ざらなかった事がきっかけとなり、初めから砂糖とミルクを入れた状態でのコーヒーの提供が始められた

イノダコーヒも京都府内に何店舗があり、東京の大丸にも出店しているが拡大主義ではない。近くに三条店もあり、そこも大変しゃれているが現在改装中。私はこの本店が好きだ、庭が見えて、天井も高く、開放感があって上品な感じがして落ち着くのだ。

2022年9月に後継者不在を理由に事業承継を目的とした投資ファンド「アント・キャピタル・パートナーズ」が運営するファンドへの株式譲渡を発表し、ショックを受けた。

朝食後、今日は車で貴船(きぶね)に行くことにした。30分で到着する、市内よりは高地にあるため涼しい、9時前に到着して、運よく駐車場が空いていたのでそこに駐車し、貴船川沿いに歩いて貴船(きふね)神社本宮に向かう、地名の貴船は濁るが、神社の貴船は濁らない、これは、貴船神社は水の神様のため濁ってはいけないため。

貴船神社の入口の鳥居をくぐると本宮に続く階段があり、そこが写真の名所なっている。階段を昇って本殿に到着すると、本殿から上の山には木々のほかに水草、シダやツタのような水源の地によく生えている草ゝが鬱蒼と茂っていた、そして上のほうから水がしたたり落ちてきていた。

貴船神社は、全国に約500社ある貴船神社の総本宮、本宮の横に「由緒」が掲示されており、神社の始まりは不詳だが、第18代天皇の御代に奥宮の社殿を建てた記録があるので、日本でも指折りの古社に数えられる、とある。すごいところだ。

さらに、そこから奥に500メートルくらい歩くと奥宮があるので行ってみた。この本宮から奥宮までの川沿いには川床料理の料理屋がびっしりと並んでおり、もうすでに営業していた、道路沿いにはメニューが出ている店も多く、料理の値段はピンキリだが、5,000円くらいから利用できるようだ。

奥宮に参拝し、同じ道を歩いてまた駐車場のところまで戻った、奥宮にも駐車場があったが、ここは本宮の入口近くの駐車場に入れて、奥宮まで歩いたほうが新緑の景色をゆっくり楽しめるので良かったと感じた。

この後、すぐ近くの鞍馬に行ってみた、鞍馬駅前に駐車して駅の大きな天狗や駅舎内や叡山電車が到着するのを見た、この鞍馬が終点だ。電車から多くの観光客が降りてきた。

そのあと、鞍馬寺がすぐ横なので行ってみた、寺の山門を見上げる階段の入口がやはり観光ガイドブックによく出てくる景色である、何枚か写真を撮ったが、あとの予定も控えているので、それ以上は中に入らなかった

さて、貴船と鞍馬で午前の予定は終わり、次は昼食の予約を取ってある旧三井家下賀茂別邸に向かう、場所は下賀茂神社の一番南側、出町柳駅のすぐそばだ、そこに市営駐車場があるので車を停めて、別邸に向かう。

この別邸には誰でも入れる、もとは隣接する家庭裁判所も含めて三井家の財産だったが財閥解体で国の所有になり、家庭裁判所とその裁判所長の宿舎として利用されることになった、ただ、その宿舎は利用勝手が悪く、宿舎だけは何年か前から観光用の施設として民間に運営委託されていると説明してくれた。したがって、家庭裁判所は今でもあるし、財産は国の所有物だ。

この別邸では見学だけでなく、抹茶プランやランチプランがあり、お屋敷内の部屋で楽しめる。今回は初夏のランチプランを予約しておいた、見学だけの人は入れない2階のお座敷で京都の有名な仕出し料理屋「三友居」のお弁当を楽しむプランだ。


(庭園がよく見える大きなガラス窓が特徴)

時間が来ると2階に案内され、若干の説明の後、ゆっくりと庭園を見下ろしながら三友居のお弁当をいただいた、ビールなどお酒もオプションである

食後には、ガイドの男性と3階の望楼に昇った、この日の参加者は7名、望楼に入り景色を楽しみガイドの方のいろんな説明を聞き、写真を撮って楽しんだ。望楼からは大文字焼きの山や比叡山、別邸の庭園などが眺められ、天気も良かったので楽しめた。このガイドの方から、昨日行った真如寺は三井家の菩提寺だと教えてもらってびっくりした。

さて、また2階の部屋に戻り、今度は食後の茶菓が用意されていた、茶道のお茶碗に入れられた薄茶と鶴屋吉信のきれいでかわいらしい和菓子だ。

このランチプランは7,500円と少し高めだが、なかなか来られるところでもないので、払う価値は十分あると思った、観光客や外人さんが殺到しないことを祈りたい

別邸を後にしたのが午後2時過ぎ、飛行機の時間を考慮すると京都出発は4時少し前、そうすると観光できるのはあと1か所、出町柳の駅前で阿闍梨餅を買って、あとは車を停めたまま、バスで三条のカフェ、Tribute Coffee、に行くことにした。ここは比較的新しい店だと思う。

三条の交差点からすぐだが、ビルの3階にあるので少し不便だ、しかしテレビなどに出たため結構客が来ている、すぐに座れたので、アイスオレとプリンをたのんだ、若者が多いが、中高年の客も来ている。店はそれほど広くなく、店主と奥さんの二人でやっている感じで、忙しそうだ。

コーヒーを飲みながらこれから出町柳に戻り、車で伊丹空港までにどのくらい時間がかかるかGoogleマップで確認し、そのあと店を出た。

これで今回の京都の旅は終わりだが、計画したけど行けないところもあった、それは次回以降のお楽しみに取っておこう、京都は年に1回は訪問したい

(完)

 


映画「クライマーズハイ」を観た

2024年05月13日 | 映画

テレビで放送された映画「クライマーズハイ」を観た。2008年、145分、監督:原田眞人、原作:横山秀夫の同名小説。クライマーズハイとは登山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことであり、映画の中では日航機墜落の報道現場のカオスの状況も指すと思われる。

1985年8月12日、群馬県と長野県の県境に位置する御巣鷹山に日航機が墜落した、その事故を題材に、その時に繰り広げられていた地元地方新聞社の混乱する現場と人間模様を描いた映画

出演は、堤真一,堺雅人,小澤征悦,尾野真千子,山崎努などなどそうそうたるキャスト。作者自身も元上毛新聞記者で、その体験を元に作品を書いた、だから新聞社の社内の状況が非常にリアルに描かれている。

主人公は堤真一演ずる群馬の有力地方新聞「北関東新聞社」の記者悠木和雄。1985年8月のある日、新聞社の登山クラブの同僚安西耿一郎(高嶋政宏)と一ノ倉沢衝立岩に登頂する予定で会社を後にする直前に、東京発の日航機が乗客乗員524名を乗せたまま消息が不明との情報がもたらされる、その後まもなく墜落とわかり、場所は北関東新聞のテリトリーの群馬県内と判明したから大変だ。

新聞社は臨戦態勢になり、現場は大混乱する、悠木は日航機事故報道の全権に任命され、次々と指示を出し、現場取材、事実確認、紙面編集、締め切り、などで社内の関係部門と怒号を飛ばしながらも他社に出し抜かれないために必死の業務が続く。

映画ではその緊迫した様子を事故発生から時間を追って描いていく、臨場感がビシビシと伝わってくる。新聞社の業務の描き方もかなり具体的で、報道部門だけでなく、販売部門、輸送部門、印刷部門などあらゆる社内組織が出てきて、それらの部門や人間との軋轢、現場と局長、経営陣などとの対立をリアルに描き、真に迫っている。

一方、悠木のプライベートな面として、夫婦の不和、子供との隔絶、友人の安西との家族ぐるみの付き合いと安西の不幸などが絡む。さらに時間軸として、事故直前の1985年、初夏の渓谷での悠木と安西のお互いの息子を連れてのレジャーの場面、事件発生、その後2007年初夏に土合駅での悠木とすでに亡くなった安西の息子が落ち合い、親同士で約束した一ノ倉沢衝立岩への登山の場面が絡む。ここがいきなり見ると前後関係がわかりにくい。しかし、そこがわからなくてもこの映画の迫力は十分楽しめる。

あまり期待しないで見たのだけど、最初からどんどん映画に引き込まれた、堤真一、堺雅人、滝藤賢一、小澤征悦,尾野真千子らの真に迫った演技が非常に良かった。これは監督、俳優の良さに加え、そもそも原作がよかったのだろう。ただ、ネットやスマホが発達した現在の新聞社の業務はこの当時とはかなり違っているだろうなと思った。

この日航機墜落のあった8月12日の翌日、夏休みをとっていた私は友人と一緒に取手で炎天下の中でゴルフをやっていたのを覚えている。朝からテレビなどで大騒ぎしていたが、ゴルフをやっていたその真夏のゴルフ場の光景を今でも思い出す、暑い一日だった

この映画の最後に、「日航機墜落の原因調査の事故調は隔壁破壊と関連して事故機に急減圧があったとしている、しかし、運航関係者の間には急減圧はなかったという意見もある」とテロップが出てくる。隔壁破壊以外の墜落原因ついては、既に青山透子『日航123便 墜落の新事実』(河出書房新社、2017年7月)が出ており、最近でも森永卓郎『書いてはいけない』(三五館シンシャ、2024年3月)の中で述べられているがなぜかあまり騒がれない。

NHKも下山事件などは未解決事件として報じるが、日航事故につては解決済み扱いなのだろうか、報じない。映画の中でも事故現場にもっと早く到着してれば救える命が多くあったと述べるところがあるが意味深である、この当時から墜落原因に関するいろんな疑問が語られていたのだろう。事故当時の総理大臣は中曽根康弘、アメリカ大統領はロナルド・レーガンであった

さて、この映画では一ノ倉沢への登山に行く待合場所に上越線の土合(どあい)駅が出てくる、この土合駅は有名で、駅が地下のだいぶ下にあるのだ。駅から地上の駅舎まで出るのに462段の階段を昇らなくてはならない、その地下駅と地上への階段、地上の駅舎がこの映画で出てくる。


(土合駅の駅舎)

この土合駅に行ったことがある。つい数年前である。それは近くのゴルフ場に泊りがけでゴルフに来た時に、まっすぐ帰るのではなく、周辺の観光地に寄ってから帰ろうと思い、調べたら土合駅が有名だというので車で来たものである。したがって、私の場合は、駅舎から駅まで見下ろす感じで階段を途中まで降りた。本当は地下の駅まで行きたかったが、ゴルフの後で疲れており、嫁さんも一緒だったため、あきらめて階段の途中で引き返したのだ。確かに写真映えするすごいところであった。


(駅に降りる階段の上から撮ったもの)

良い映画でした。

 


團菊祭五月大歌舞伎(昼の部)を観る

2024年05月12日 | 歌舞伎

今月も歌舞伎座昼の部の公演を観ることにした、今回も3階A席、6,000円、この日の3階は結構埋まっていた。相変わらずおばさま方が多い。

「團菊祭」とは、明治の劇聖と謳われた九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の偉業を顕彰するために昭和11年に始まり、戦後は昭和33年に復活、近年の歌舞伎座では五月興行の恒例の催しとして上演されてきたもの

一、鴛鴦襖恋睦(おしのふすま こいのむつごと)

河津三郎/雄鴛鴦の精(松也)
遊女喜瀬川/雌鴛鴦の精(尾上右近)
股野五郎(中村萬太郎、1989、萬家、時蔵の息子)

本作は、河津と股野が相撲の起源や技に託して恋争いを踊る「相撲」と、引き裂かれた鴛鴦の夫婦の狂おしい情念を見せる「鴛鴦」の上下巻で構成されている

源氏方の河津三郎に相撲で敗れた平家方の股野五郎は、約束通り遊女喜瀬川を河津に譲る。しかし股野は、かねてからの遺恨を晴らすため、河津の心を乱そうと酒に雄の鴛鴦(おしどり)を殺した生血を混ぜる。やがて泉水に、雄鳥の死を嘆き悲しむ雌鳥の精が喜瀬川の姿を借りて現れ・・・

この河津三郎というのは、河津三郎祐泰といい、二人の息子がいた、兄を十郎祐成、弟を五郎時致といった、これが仇討ちで有名な曾我兄弟である。仇討ちは、曽我兄弟の祖父伊東祐親(すけちか)が工藤祐経(すけつね)の所領を横領したため、祐経はその恨みから狩に出た祐親を狙うが、誤って子の河津三郎を殺してしまう、その18年後、成長した曽我兄弟は、源頼朝が富士の裾野で大がかりな狩りをおこなっていた際、工藤祐経を殺害し、仇討ちを果たした。その曽我兄弟の父、河津三郎はこの演目では善人であり、股野五郎が悪人を演じている。

この演目は、曽我兄弟の仇討ちとは全く関係なく、「相撲」と、「鴛鴦」の上下巻で構成され、華やかな歌舞伎の様式美を楽しむ舞踊劇である、特に今回は若手3人による鴛鴦の精が本性を現す「ぶっかえり」などの華やかな演出が大変良かった。なお、この演目では前半の「相撲」では長唄連中が、後半の「鴛鴦」では常磐津連中が演奏していた、私が贔屓にしている長唄の杵屋勝四郎は出演していなかったが立三味線の巳太郎さんが出ていたように見えた

四世市川左團次一年祭追善狂言
二、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)

粂寺弾正(くめでら だんじょう)(市川男女蔵、1967、瀧野屋、左團次の息子)
小野春道(菊五郎)館の主人
小野春風(鴈治郎)春道の息子
錦の前(市川男寅、1995、瀧野屋、男寅→男女蔵→左團次となる)館の一人娘
腰元巻絹(時蔵)
八剣玄蕃(又五郎)数馬の父、短冊を盗む
八剣数馬(松也)反乱派の家臣の息子
秦民部(権十郎)秀太郎の兄
秦秀太郎(梅枝)忠臣派の家来の弟
小原万兵衛(松緑)
乳人若菜(萬次郎)
後見(團十郎)

小野小町の子孫、春道の屋敷。家宝である小町の短冊が盗み出されたうえ、姫君錦の前は原因不明の髪の毛が逆立つ病にかかり床に伏せっている。そこへ、姫君の許嫁文屋豊秀の家臣、粂寺弾正が様子をうかがいにやって来る。さらに、屋敷に小原万兵衛が押しかけてきて、腰元だった小磯が春風のお手つきで暇を出された挙句、亡くなったという。

これらを見た弾正は、姫の奇病の仕掛けを見破り、両家の縁談を破談にしようとする陰謀を暴く、これらを仕組んだのは玄蕃の一味だった、なお、毛抜というのは、姫君の病の原因を突き止めるきっかけとなったもの、弾正が座敷で毛抜きを使うと、動いた、それで天井で何かやっていることに気付く、というもの。

この演目は、昨年4月に亡くなった四世市川左團次一年祭追善狂言として演じられたもの、主役は粂寺弾正であり、これを務めたのは左團次の息子市川男女蔵である。男女蔵の息子が男寅であり、親子そろって祖父の追善公演に出演できたのを観て、亡くなった左團次もさぞかし喜んでいることだろう

この追善に華を添えるように、團十郎が後見で出演し、菊五郎、時蔵、松緑、鴈治郎などそうそうたるメンバーが勢ぞろいした素晴らしい公演であった。そして、今日の歌舞伎座では2階のロビーに在りし日の左團次の大きな写真が何枚も飾ってあった。

河竹黙阿弥 作
三、極付幡随長兵衛(きわめつき ばんずいちょうべえ)
「公平法問諍」(きんぴらほうもんあらそい)

幡随院長兵衛(團十郎)
女房お時(児太郎)
水野十郎左衛門(菊之助)
加茂次郎義綱(玉太郎)、坂田金左衛門(九團次)、坂田公平(片岡市蔵)、唐犬権兵衛(右團次)、渡辺綱九郎(家橘)、極楽十三(歌昇)、雷重五郎(尾上右近)、神田弥吉(廣松)、小仏小平(男寅)、閻魔大助(鷹之資)、笠森団六(莟玉)、下女およし(梅花)、御台柏の前(歌女之丞)、伊予守頼義(吉弥)、出尻清兵衛(男女蔵)、近藤登之助(錦之助)

江戸時代初期、浅草花川戸に実在し、日本の俠客の元祖と言われた幡随院長兵衛を主人公にした物語、その中でも本作は九世團十郎に当てて河竹黙阿弥が書いた「極付」とされる傑作。町人の意地と武士の面子を賭けての対決、柔術を組み入れた立廻りなど、江戸の男伊達の生き様を描いた世話物、江戸随一の俠客、幡随院長兵衛と旗本「白柄組(しらつかぐみ)」の水野十郎左衛門の対決を通じて俠客、幡随院長兵衛の男気を描いたもの

公平法問諍とは劇中劇で、長兵衛と十郎左衛門が芝居小屋でこの演目を観劇中に後に問題となる騒ぎが起こった、公平法問諍の公平とは「きんぴら」と読む。劇中劇で源頼義の家来を演じているのが坂田公平であり、主君が息子の加茂義綱を出家させようとするのを懸命に止めようとし、そそのかしている坊主を相手に、仏教や出家の根本的意義について問答をするのが、公平問答である。

この公平の父は坂田金時といい、源頼光の部下で「頼光四天王」と呼ばれた4人のうちの一人である。坂田金時は怪力無双の勇士、これが有名な「金太郎」であり、息子の公平は頼光の甥にあたる源頼義の臣下として新たに四天王を名乗り活躍するうちの一人となる。公平(きんぴら)は伝説上では、とても強く勇ましい人物だったと伝えられて、やがて人々は、「強いもの」「丈夫なもの」を「きんぴら」と呼ぶようになり、歯ごたえが強く、精がつく食べ物である「きんぴらごぼう」の語源となった、とイヤホンガイドで解説していた。

この演目の見どころは何といっても当世團十郎の演技だろう、菊之助演じる旗本奴が江戸で乱暴狼藉の限りの振る舞いをして町人から嫌われているが怖くて文句も言えないという状況で、「いい加減にしろ」と言って注意をし、やっつける侠客(町奴)を演じているからだ。

この侠客の親分である長兵衛の普段の仕事は人のあっせん稼業、今でいう派遣会社だ。イヤホンガイドでは、地方の大名が江戸に参勤交代に行く際、幕府から言われた人数を国許から連れて行くと金がかかるので、最少人数で出発して、江戸の近くで長兵衛のようなところに人の手配を依頼して人数を揃えて間に合わせていた、と説明していた。

この演目では、長兵衛も武家出身だが、旗本奴のほうが格上であり、長兵衛らが日ごろ町人たちに人気があり自分たちが悪者にされているのを気に食わないと思っていた、そこに今回の公平法問諍で長兵衛に恥をかかされて、ついに長兵衛一人を水野十郎左衛門の宴席に招待し、そこで殺してしまおうとする。長兵衛はそうなることを分かったうえで、その誘いを断れば、日ごろ町人の前でかっこいいことを言っていながら水野の誘いには逃げた意気地なしだ、と言われることは侠客として絶対にできないと引き留める子分や家族を説得して、水野の屋敷に死を覚悟して乗り込んでいく、なんともカッコいいではないか、最初の公平法問諍の場面では客席の中から突然現れて劇中劇の舞台にさっそうと登場する粋な演出もある

今日の團十郎は、水野との問答や立ち回りなど、江戸の荒事歌舞伎の派手さと粋を実にうまく演じていた、團十郎を襲名してからだんだんと團十郎の名にふさわしい演技になってきたと感じた、立場が人間を作る、そんな印象を今日は持った。今日の演目では、こんな役が團十郎に一番ふさわしいと思った、助六もそうだ、粋でいなせでやせ我慢でも男気があるところを見せる人情家、そんな役が似合うようになってきた。

さて、今日の歌舞伎の幕間の食事だが、いつものように銀座三越デパ地下に行き、だし巻き弁当で有名な京都大徳寺さいき屋の「さば寿司だし巻弁当」1,404円にし、甘味はこれも京都の仙太郎「みなずき白」、嫁さんは「おはぎきなこ」にした。いずれもおいしかった。

 


半藤一利「昭和史1926-1945」を読む(その1)

2024年03月29日 | 読書

半藤一利「昭和史1926-1945」(平凡社)をKindleで読んだ。半藤氏(2021年、90才没)のこの本は書店で一時期多く平積みされており、目立っていたし、Amazonを見ても多くのレビューコメントがついており、いつか読むべきだと思っていた。

半藤氏は文藝春秋の編集長を務められるなど知識産業の要職にあったが同時にプライベートでも歴史研究を地道にされていたのだろう。本書以外にも多くの近現代史に関する本を出筆されており、既にお亡くなりになっているが現代における代表的知識人の1人と言えよう。奥さんは夏目漱石のお孫さんである。

この時代を説明した書籍には、近現代史専攻の大学教授のものも当然あるが、一般に広く読まれているのは半藤一利氏や渡部昇一氏など本職が歴史研究の専門家(大学教授)ではない人の書いたものが圧倒的に多いのは皮肉であろう、しかしその道の専門家顔負けの読書量などを背景に実によく勉強して書いていると思われる。

さて、それでは本書を読んだ感想を書いてみよう。先ず最初に全般的読後感だが、大変勉強になった。読んでみればわかるが半藤氏はよく勉強されており、また、元軍人などにもインタビューされており、他の書物では触れられていないような参考になる内容も多かった。本書が広く読まれているのもさもありなんと思った。

それでは本書の具体的な記載内容について勉強になった点、評価できる点、逆に同意できなかった点などについて書いていこう。

  • 日本は明治維新後40年をかけて近代国家になったが、その後、大正、昭和になると自分たちは強国などだといい気になり、自惚れ、のぼせ、世界中を相手にするような戦争をはじめ、明治の父祖が一所懸命作った国を滅ぼしてしまう結果になる
    (コメント)
    半藤氏のこのような歴史観は戦勝国から押し付けられた彼らに都合の良い歴史解釈と同じではないか。日本に大きな影響を与えた世界情勢、周辺環境、列強の悪意についてもっと語ってほしかった。例えば、半藤氏はコミンテルンの活動や、世界恐慌後の列強のブロック経済についても触れていない。日本の第2の敗戦は、戦後にこういった歴史観を信じ込まされたことではないか。
  • 張作霖爆破事件(1928年、昭和3年)前の満洲の状況の説明において、日本が人口増への対応として満洲への移民を行い、現地で日本人による昔から満洲にいた満州人、或は蒙古人、朝鮮人といった人たちが開拓して住んでいた土地を強制的に奪う、またはものすごく安い金で買い取ったりして、恨みを買うことになった、と記載
    (コメント)
    当時満洲を支配していた張作霖はもと馬賊で、日露戦争後に関東軍と手を結び、軍閥を組織し、徴収した金をすべて自分のものにしていた、そのような現地住民を搾取する軍閥に住民は苦しめられていた点についても触れてほしかった、日本が満州権益を獲得後、多額の投資をし、地域を豊かにし、それゆえ中国から多くの移民が増加し人口も著しく増加したことも書いてほしかった
  • 1914年(大正3年)ヨーロッパで第1次世界大戦が起きてしまいます、アジアの国々はあまり関係ありませんでしたが、日本はこれをチャンスと考えました、1915年、まだ弱体な中華民国政府に対して強引な要求をつきつけます、これを「対華21か条の要求」といいます
    (コメント)
    21か条要求(大隈内閣、加藤高明外務大臣)についてはいろんな研究がある、日本が半藤氏の言う強引な要求をつきつけたとは必ずしも言えないのでは、とも感じる、例えば
    ・日本が一方的に押し付けたのではなく4か月に及ぶ交渉を経て決着した
    ・交渉では中国の要求を受け入れた部分も多く、中国の意思を束縛してない
    ・最後通牒が強引さを印象付けたが、袁世凱からそうしてくれと言われた
    ・もう最期通牒を出せと新聞が煽った、吉野作造も最後通牒しかないと断じた
    ・要求内容は中国には厳しいものだが、当時の国際情勢では普通の要求
    ・日華条約として合意したが、袁世凱から要求の形にしてくれと要請された
    ・条約の一部は公表しないと合意したのにそれを破り日本の横暴と宣伝された
    そう単純なことでもない、袁世凱にしてやられた日本外交の失敗であろう、陸奥宗光「蹇蹇録」の中で伊藤博文が「清国は常に孤立と猜疑とを以てその政策となす。故に外交上の関係において善隣の道に必要とするところの公明真実を欠くなり」と述べていたが、大正時代のリーダーたちは先人のこの観察眼を欠いていたのでしょう

(続く)


映画「BLUE GIANT」を観る

2024年03月16日 | 映画

Prime Videoで映画「BLUE GIANT」を観た。2023年、監督立川譲、原作石塚真一、音楽上原ひろみ。2013年から小学館「ビッグコミック」にて連載開始した石塚真一の人気ジャズ漫画「BLUE GIANT」をアニメ映画化したもの。

コミックスのシリーズ累計部数は890万部を超える大ヒット作品というから驚きだ。世界最古のジャズレーベル「BLUE NOTE RECORDS」とのコラボレーション・コンピ・アルバムの発売や、ブルーノート東京でのライブイベントの開催、Spotify とのコラボ・プレイリストの公開など、現実のジャズシーンにも影響を与えているすごいコミックだが、全く知らなかった。

アニメ映画の中で演奏される音楽は、ピアニストの上原ひろみが担当し、主人公たちのオリジナル楽曲の書き下ろしをはじめ、劇中曲含めた作品全体の音楽も制作した。サックス(宮本大)はオーディションを実施、バークリー音楽院時代からアメリカを拠点に活躍し、最近ではDREAMS COME TRUEとの共演などでも注目される馬場智章が選ばれた。ピアノ(沢辺雪祈)は、上原ひろみ自身が担当。さらに、ドラム(玉田俊二)の演奏はmillennium paradeへの参加、くるりのサポートメンバーとしても活躍する石若駿が担当した。映画中の音楽は既存のジャズナンバーのレコードをかけたのではなく、この映画用に作り、実際のプロたちが演奏したとあるからすごいものだ。

仙台に暮らす高校生・宮本大(音声:山田裕貴)はジャズに魅了され、毎日ひとり河原でテナーサックスを吹き続けてきた。卒業と同時に上京した彼は、高校の同級生・玉田俊二(岡山天音)のアパートに転がり込む。ある日、ライブハウスで同世代の凄腕ピアニスト・沢辺雪祈(ユキノリ)(間宮祥太朗)と出会った大は彼に自分と一緒にバンドを作ろうと誘い、大に感化されてドラムを始めた玉田も加わり3人組バンド「JASS」を結成。楽譜も読めずただひたすらに全力で吹いてきた大と、幼い頃からジャズに全てを捧げてきた雪祈、そして初心者の玉田のトリオの目標は、日本最高のジャズクラブ「So Blue」に出演し、日本のジャズシーンを変えること。必死に活動を続けていくと徐々にチャンスが広がっていくが思いもよらないことが起こる・・・

いくつか感想を書きたい。

  • とにかく主人公のテナーサックス吹きの宮本大の個性が強烈である。よく練習しているだけでなく、自分の演奏に完全なる自信を持っており、それを臆することなく話す、知らない人は「こいつ馬鹿か」と思うだろうが、そんなことはお構いなしだ。最初のうちは音符も読めずにサックスを演奏していた、という点などは私には信じられないが、とにかくジャズが好きだということだけは伝わってくる、その人間設定がこのドラマを面白くしている。
  • 東京に出てきて間もないころ、ライブを聞こうとたまたま入った店が「JAZZ TAKE TWO」だ、ここのオーナーママさんは昔ジャズのボーカルをやっていたのか、その時の演奏の写真が飾られている。ライブラリにはLPがびっしり収まっている。そのうちの一枚を聞かせてもらった大はその迫力にビックリする。だが、ライブはやっていないので、ライブを聞きたいならここに行きな、と店を紹介されて行った店でピアノの沢辺雪祈と知り合う。そして、トリオを組んだ後はこのTAKE TWOが金のない大たちの練習場になっていく。このオーナーママさんが良い役を演じていると思う。若者たちの成長には彼らの能力を見抜き、支援するこうした人たちが必要だろう。
  • 映画の中に出てくる、日本最高のジャズクラブ「So Blue」とは南青山にある「ブルーノート東京」をイメージしたものだろう。一度だけ行ったことがあるがそっくりな雰囲気に描いていた。ただ、東京のブルーノートはニューヨークのブルーノートとは違った雰囲気だったが、どちらも良い。JAZZ TAKE TWOという店もモデルがあるのであろうが、そこまでの知識は私にはない。
  • 以前にも書いたが、ジャズのマーケットはクラシック音楽に比べれば小さいのではないか。なぜなら主な市場はアメリカしかないだろうし、演奏会場もクラシックに比べれば少人数しか入らない、その演奏会場も日本でいえば東京など大都市にはあるが地方にはほとんどないだろうし、テレビ番組でもジャズを聴かせる番組はほとんどない。ただ、やりようによってはこの映画の原作漫画のようにミリオンセラーになる可能性を秘めているから人を引き付ける魅力はあるのだろう。私はジャズの有名なCDを少し持っていて、たまにそれらを聴くだけだが、ジャズ喫茶やジャズクラブの雰囲気は好きだ。喫茶店業界ではジャズ喫茶がクラシック名曲喫茶より目立つのが不思議だが、それもジャズが人を引き付ける魅力がある証拠であろう。

続編があるだろうからそれができたら観てみたい。

さて、14日はホワイトデー、バレンタインデーのお返しはこれを

 

 


自宅PC画面に「トロイの木馬に感染」と出た

2024年03月11日 | 日常生活の出来事

自宅の自分の机上に置いてあるノートパソコンでヤフーのスポーツニュースを見ていた時だと思うが、次の画面に移動するのにどこかをクリックしたら突然以下のような画面が出てきた。

画面が出てきただけでなく、表示されている電話番号に電話しろとの音声が流れて消せない。画面もどこをクリックしても消えない。

過去に何回かあったので以下のように対処したら画面が消えたので参考までに記載したい。

  • Ctrl+Alt+Deleteの3つのキーを順番に同時に押す
  • ポップアップ画面が出るので、その中の「タスクマネージャーの終了」をクリックする
  • 終了するタスクとしてGoogleChromeとMicrosoftEdgeが表示されたのでChromeをクリック(普段googleを使っているため)

これで画面と音声が消えた。GoogleをクリックしてGoogleの画面が出て、その画面上に「画面を復元する」というポップアップが出るので「復元する」をクリックすると元通りに戻った。

写真のような画面と音声が出てビックリされた方は、上記を参考に焦らずに対処してほしい。間違っても電話をかけて個人情報を知らせたり入力しないでください。


映画「隠し砦の三悪人」を観た

2024年03月09日 | 映画

テレビで放送されていた映画「隠し砦の三悪人」を観た。1958年、監督黒澤明、139分。第9回 ベルリン国際映画祭(1959年)で、銀熊賞(最優秀監督賞:黒澤明)を受賞。

黒澤映画は好きでたまにテレビで放送されるのでよく録画してみる。この「隠し砦の三悪人」は過去に1回だけ観たことがあり、面白かった印象があるので、今回改めて見直そうと思った。

戦国時代、秋月家の敗軍の大将真壁六郎太(三船敏郎) は、山中の隠し砦に身を潜めていたが、秋月家再興のため世継ぎの雪姫(上原美佐)と隠し置いた黄金200貫とともに敵陣の山名家の領地を突破し、同盟軍であるの早川領へ逃亡を図る、そのハラハラドキドキの脱出劇がこの映画だ。褒賞を目当てに山名家と秋月家の戦いに参加した百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)がひょんなことからこの脱出劇に加わることになるが、この二人の欲や間抜けぶりもあり、脱出は難関につぐ難関、次々と襲い来る絶体絶命の危機を六郎太の機転で間一髪で切り抜けていくが・・・・

この百姓コンビの太平と又七は、後に「スターウォーズ」の『C-3PO』、『R2-D2』の原案になったという(私は詳しくは知らないが)。

この物語の主人公は、秋月家の大将真壁六郎太であり、その秋月家の雪姫でもあり、百姓の二人でもある。それぞれ出番が多く、セリフも多い、強烈な個性を発揮して物語を面白くしている。

  • 六郎太は秋月家の忠臣であり、男臭さをぷんぷん放っている、百姓二人に厳しい命令口調で指示し、危機になれば適切な情勢判断をして機敏に行動する、一方、雪姫やお家の重臣たちには忠節を貫く。三船敏郎にぴったりの役回りだ。
  • 雪姫はお家の跡取りとしての自覚があり、美人で魅力的な容貌であるが気性が激しい。逃亡の末、最後に山名家に囚われの身になったときに、田所兵衛が六郎太に向かって、お前との決闘で敗れたが、おれの首をはねなかったため殿様から皆の面前で罵倒され恥をかかされたと言う。それを聞いていた雪姫は突然「愚か者め、人の情けを生かすも殺すもおのれの器量しだいだ、また、家来も家来なら主(あるじ)も主だ、敵を取り逃がしたと言って満座の中で家来をののしるとは、このわがままな姫でもようできぬ仕業じゃ」と言い放つ。
  • さらに、逃避行の数日の間に経験したことを振り返り、「自分は大変楽しかった、この数日間は城の中では経験のできないことばかりであり、特に領民の火祭りは大変楽しかった」と回顧し、「装わぬ人の世を、人の美しさを、人の醜さを、この目でしかと見た、もはや自分は潔く死にたい」と言ってのける。何という素晴らしさだ、歌舞伎だったら大向こうから「秋月屋」と声がかかりそうだ。また、雪姫は領民の娘が売り飛ばされて慰み者にされているところを逃亡中に見て、六郎太に「金で買い戻せ」と指示するなど領民思いの優しいところを見せる。私はこの映画で一番気に入ったのはこの雪姫である。
  • 雪姫を演じたのは上原美佐であるが、彼女はこの作品でデビューした。黒澤監督は、上原の「気品と野生の二つの要素がかもしだす異様な雰囲気」を評価しデビューさせた。撮影にあたって、馬術を習い、障害を跳べるまでになった。そのほか、武家の姫らしい身のこなしのために剣道も習った。演技は初めてでまったくの素人だったため、そのつど黒澤が演じてみせ、その通りに従い進めていったという。きりりとした顔立ちと躍動感溢れる演技で人気を博し、一躍スターとなるが、本人は「私には才能がない」と2年で引退したとウィキに書いてあった。
  • 百姓の二人は欲深く、隠された黄金に目がくらみ持ち逃げしようとしたり、仲たがいしたり仲直りしたり、雪姫に手を出そうとしたり、意外なアイディアを出したり、どこか憎めない人間に設定してある。
  • これらの主人公たちにさらに、秋月家を滅ぼした山名家の侍大将・田所兵衛(藤田進)が出てきていい役を演じる。兵衛は六郎太のライバルであり、両者は敵対する両家の大将同士である。途中、兵衛の陣地に引き込まれてしまった六郎太との槍を持っての決闘シーンが迫力があるし、最後の方では再度、捉えた雪姫と一緒の六郎太と再会し、上に述べた雪姫の話に感動して驚くべき行動をとる魅力的な人間に描かれている。

ところで、黒澤映画だが、「用心棒」を観た時も感じたのだが、日本語でありながら聞き取りずらいところがある。「用心棒」よりはましだったがこの映画もちょっと聞き取りずらいところがある。ところがテレビの放映で自宅のリモコンの「字幕」ボタンを押すと日本語字幕が出ることがわかり、聞き取りずらいなと思ったらそこだけ戻ってこれを利用すればよいと気づいたのはよかった。

少し長めの映画だが、素晴らしい映画だと改めて認識した。


映画「ゴールデンカムイ」を観る

2024年02月14日 | 映画

近くのシネコンで「ゴールデンカムイ」を見てきた。シニア料金1,300円、土曜日だったためか結構客が入っていた。人気コミックの映画化のため若い人が圧倒的に多かった。2024年制作、監督久保茂昭。カムイとは、アイヌ語(kamuy)で神格を有する高位の霊的存在、という意味。日本語では神居と表現される。

映画の中でアイヌ民族の住んでいる村をアイヌ語でコタンと紹介していた。若いとき仕事で旭川に出張に行った帰りに、神居古潭(カムイ コタン)というアイヌ民族の神聖な場所と思われてきた景勝地に立ち寄ったことを思い出した。

この映画の原作は野田サトルの同名のコミック、2014年から集英社の「週刊ヤングジャンプ」で連載が始まり2022年に完結した、既刊全31巻で累計2,700万部を販売した大ヒット作品。どおりで大勢見に来ているわけだ。

日露戦争中「不死身の杉元」の異名を持つ杉元佐一(山崎賢人)。戦後、一獲千金を狙い、北海道で砂金採りに明け暮れていた。ある日、杉元はアイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った男は、捕まる直前に金塊を隠しその所在を暗号にした刺青を24人の囚人の身体に彫って彼らを脱獄させた。杉元は埋蔵金の探索中ヒグマに襲われ、アイヌの少女アシㇼパ(山田杏奈)に救われる。彼女は金塊を奪った男に父親を殺されており、その仇を討つため杉元と行動をともにする。一方、北海道征服のため埋蔵金を狙う日本帝国陸軍第七師団の鶴見篤四郎中尉(玉木宏)と、戊辰戦争で戦死したとされていた新選組副長・土方歳三(舘ひろし)も現れ、これらの三つ巴の争奪戦が行われる、というストーリー。映画の中では北海道の自然、アイヌ民族の生活ぶりがわかるようになっている。

鑑賞後のコメントとしては

  • 特にたいした予習もしないで見たけどストーリーも理解できたし、面白かった。ところどころ映画でなければあり得ない場面があるが、それはそれで良いでしょう。
  • 映画館で原作者の書いた野田サトルの書き下ろしのアートボードが入場者特典でもらえた。このアートボードには主な登場人物の姿が書いてあり、原作はこんな感じなのかとわかったが、杉本佐一の山崎賢人が原作の絵とそっくりなのには驚いた。
  • 出演者は皆いい演技をしていたと思う。特に山崎賢人、山田杏奈、矢本悠馬(白石由竹役)、玉木宏が良かった。
  • 映画の中では殺傷場面など悲惨で目を背けたくなるような画像は無かったが、杉元が第七師団に捕まり鶴見中尉にみたらし団子を食べながら追求を受けているときに突然、団子の串で頬を刺し抜かれる場面があったが、映画ではやりすぎかなと思った。
  • 埋蔵金争奪戦に土方歳三が出てきたのは話が飛躍しすぎと感じた。
  • それ以上に、帝国陸軍が北海道征服を狙っていると言うところも、ちょっとあり得ないような気がした。それに比べれば、土方歳三がでてくるのは明治新政府に対する抵抗勢力として函館戦争などを闘った歴史が史実としてあるからまだ何とかわからなくもないが、陸軍がでてくる必然性がちょっとわからなかった。
  • そこでウィキでゴールデンカムイを見ると、陸軍第七師団について「北海道を本拠とし旭川に本部を置く大日本帝国陸軍の師団。日露戦争には勝利したものの、多くの戦死者を出したことで参謀長でもあった花沢中将は自害、勲章や報奨金はおろか陸軍のなかで第七師団は冷遇されるようになる。こうした背景から鶴見は戦友や戦死者遺族の窮状を救うため、自らが指導者となり北海道に軍事政権を実現させるべく、軍資金として刺青人皮及びアイヌ埋蔵金を追う」とでていた。何とか有り得る設定か。
  • 冒頭、日露戦争の二〇三高地の戦いがでてくるが、我が国は過去にロシアと戦争をしたのだと改めて認識した、そして辛勝した。我が国は遠くない過去に、当時の大国、そして今でも大国の清国、ロシア、アメリカと戦争をした歴史を持っている。今、これらの国と戦争をしようなどと思う国など無いだろう。若い人に「日本は80年前にアメリカと戦争をしたことを知っているか、ロシアと120年前に戦争をして勝ったことを知っているか」と聞けば、「マジかよ、ありえねー」と答える人も少なくないだろう。
  • 終わりかたを見ると今後も続編があるのでしょう。見たくなった。

楽しい映画でした。

 


映画「英国ロイヤルバレエ ドン・キホーテ」を観る

2024年02月04日 | オペラ・バレエ

近くのシネコンで「英国ロイヤル・オペラ・ハウス バレエ、ドン・キホーテ(全3幕)」を観た。上演日は2023年11月7日。値段は3,700円、上映時間は3時間19分。今日もプレミアム・シートの部屋だったので飛行機のビジネスクラスのようなシートでゆったりとしてよかった。人数があまり入らない部屋だが、女性中心に30名はきていただろうか、意外に人気があるのに驚いた。私はこの演目が大好きだ。初めてバレエ公演を観たのはドン・キホーテだった。

【振付】カルロス・アコスタ、マリウス・プティパ
【音楽】レオン・ミンクス
【指揮】ワレリー・オブシャニコフ、ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 

【出演】

ドン・キホーテ:ギャリー・エイヴィス
サンチョ・パンサ:リアム・ボズウェル
ロレンツォ(キトリの父):トーマス・ホワイトヘッド
キトリ:マヤラ・マグリ
バジル:マシュー・ボール
ガマーシュ(金持ちの貴族):ジェームズ・ヘイ
エスパーダ(闘牛士):カルヴィン・リチャードソン
メルセデス(街の踊り子):レティシア・ディアス
キトリの友人:ソフィー・アルナット、前田紗江
二人の闘牛士:デヴィッド・ドネリー、ジョセフ・シセンズ
ロマのカップル:ハンナ・グレンネル、レオ・ディクソン
森の女王:アネット・ブヴォリ
アムール(キューピッド):イザベラ・ガスパリーニ

この演目は英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24の開幕を飾るもので、この日は国王チャールズⅢ世とカミラ王妃がご臨席したのには驚いた。2回の一般席の一番前にお座りになった。それとハッキリ覚えてないが、英国の各地の学生やウクライナ支援の演奏を行う楽団メンバーなどが観ていることが紹介された。

休憩が2回あり、それぞれに関係者にインタビューがされるのはMETライブ・ビューイングと同じだ。今回は2013年に振付けを担当した元プリンシパルで世界的なスターのカルロス・アコスタにいろいろ質問していた。彼は、この演目はクラシックな演目だが、従来とは違う新しい振付けを加えた、例えば演奏の途中でバレエダンサーが声を上げるとか、ステージの場面転換を大胆に行ったとか、床をタイルにしたかったが試したら滑りやすくてダメだったとか、いろいろ参考になることを話してくれた(詳しいことは正確に覚えていないが)。

また、舞台上の物(大物、小物)を扱う方のインタビューもあり面白かった。大物はドン・キホーテが乗る馬があり、小物はコーヒーカップなどが多く使われていたが、これらを苦労してそれなりに見せる努力がされていることが理解できて参考になった。あとは主役のキトリとバジルの2人の練習風景も幕間に映された。

ヒロインのキトリ役は、2011年のローザンヌ国際バレエコンクールで優勝し、2021年にプリンシパルに昇格したブラジル出身のマヤラ・マグリ。シネマシーズンでは初主演だそうだ。彼女の踊りは素晴らしかった。特に一幕目の終わりだったか、バジルのリフティングで高い位置で手足を伸ばしてポーズとるところがバッチリ決まって素晴らしかった。

キトリの恋人のバジル役は、大人気の英国出身マシュー・ボール。男性ダンサーの魅力が詰まったこの役で、華麗な超絶技巧の数々を見せた。マヤラ・マグリとは私生活でパートナーだそうだ。確かに2人の演技は息がピッタリ合って最初から最後まで素晴らしいパフォーマンスであったと思う。特に三幕目の最後の方で、2人で交互にクルクル回転して踊るところ(バレエ用語で何というのか知らないが)などは「凄いな」と感心した。

また、1幕から3幕まで大活躍するキトリの二人の友人のうちの一人を、日本人の前田紗江がアサインされていたのは嬉しかった。結構出演する場面が多いのでよかった。私は彼女を知らなかったが、ROHのホームページの団員紹介を見ると次のように紹介されている。

「日本人ダンサー、前田紗江さんは英国ロイヤル・バレエ団のソリスト。彼女は2017/18シーズンの初めから英国ロイヤル・バレエ団のオード・ジェブセン・ヤング・ダンサー・プログラムに参加し、2018年にアーティスト、2022年にファースト・アーティスト、2023年にソリストに昇進した。前田さんは横浜で生まれ、7歳からダンスを始めた。彼女はマユミ・キノウチ・バレエ・スクールとローザンヌ国際コンクールの奨学金を受けてロイヤル・バレエ・スクールで訓練を受けました。」

ROHの日本人ダンサーには最高位のプリンシパルに高田茜、平野亮一、金子扶生がいるのは知っていたが、この3名以外にも何人か所属しているのを知り頼もしくなった。頑張ってほしい。

最後に、今回の演奏だが、作曲はミンクスとなっているが、今日の演奏を聴いてみると私がいつも聞いているドン・キホーテとはかなり違ったアレンジがされていたので面食らった。ウィキで確認するとこの演目の振付けのベースはプティバや彼の弟子のゴルスキーのものだが、その後にアレンジを加えていろんなバージョンがあるようだ。曲についても追加したり、一部変更しているものもあるようなので、今回もそうなのだろう。私としては普段聞いているものが良いと思っているのでいきなり違うバージョンを聞かされても「何だ、これは」としか感じないが、慣れの問題でもあろう。そう大幅に変えているわけではない、ただ、フラストレーションはたまった。

さて、昨日は節分、最近は恵方巻きを食べるのが1つのブームになっているようだ。私が子どもの時はそんな習慣はなかった。多分にコンビニやスーパーの販売戦略に乗せられているようで癪に障るのだが、昨夜はスーパーで買ってきた恵方巻きを食べた。

 


小伝馬町の喫茶「華月」でくつろぎ、帰りに「昇龍」でジャンボ餃子を買う

2024年02月03日 | カフェ・喫茶店

先日人形町に出かけた時、前から行ってみたいと思っていた喫茶店「華月」を訪問した。何かの雑誌にでていたのを見て知った店だ。この店は人形町から地下鉄で一駅行った小伝馬町の交差点近くにある。この日は人形町から歩いて行ったが15分くらいで到着した。

中に入ると、空いていたが、「この店は喫煙できる喫茶店ですが良いですか」と聞かれた。私は喫煙OKの店は敬遠しているが、ここまで来て「じゃあ利用しません」というのもどうかと思い、入ることにした。実は神保町の洒落た喫茶店の「古瀬戸コーヒー」も好きだが、あそこも喫煙OKの店なので最近、足が遠のいている。

先客は数名、なんだかみんなタバコを吸っているようで煙の臭いが強烈にする。私も若い頃喫煙していたので喫煙派の気持はよくわかる。喫煙派にとっては喫煙できる店は貴重なのでしょう。ここぞとばかり吸っているのででょう。

2人がけの席に腰かけ、ブレンドコーヒーを注文した。女性の店員が2名で回しているようだが、ペーバードリップで抽出してくれているようだ。店内はブラウンを基調とした色彩で落ち着いた感じがする。ステンドクラスを使った窓や仕切り、ランプなどが洒落た雰囲気を出している。カウンターの背後の壁にはコーヒーカップが並べてある。この店内の素晴らしいインテリアと雰囲気が外からこの店を見たときにイメージできない。外観が何か店名の看板がやたら目立つチェーン店のような感じがするのだ。そのギャップがもったいないと感じた。例えば、道路に面した側のガラスを全部ステンドグラスにするのはどうだろうか。

コーヒーをゆっくり頂き、30分くらい寛いだ。お会計をするときに私以外に客がいなかったので「店内を写真撮らせてくれますか」と聞いたらOKとのことなので、少し撮らせてもらった。

良い店でした、ご馳走様です。

さて、この日は、これから眼医者に行って、その帰りに御徒町で途中下車してアメ横の昇龍で生餃子550円を買って帰った。ここの餃子はジャンボ餃子。八重洲の泰興楼、銀座の天龍などもジャンボ餃子で有名で、泰興楼の餃子はたまに買って帰る。泰興楼のビルは建替え中のようで少し離れたところで営業している(そこを訪問した時のブログはこちら)、どこのジャンボ餃子もおいしいので好きだ。

この日はさっそく、自宅で料理してもらっておいしく頂きました(写真だとあまり大きく感じないが、実は大きい)。嫁さんの話だと自宅で餃子をパリッと焦げ目をつけて焼くのは難しいそうだが、今日は合格点でしょう。