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映画「隠し砦の三悪人」を観た

2024年03月09日 | 映画

テレビで放送されていた映画「隠し砦の三悪人」を観た。1958年、監督黒澤明、139分。第9回 ベルリン国際映画祭(1959年)で、銀熊賞(最優秀監督賞:黒澤明)を受賞。

黒澤映画は好きでたまにテレビで放送されるのでよく録画してみる。この「隠し砦の三悪人」は過去に1回だけ観たことがあり、面白かった印象があるので、今回改めて見直そうと思った。

戦国時代、秋月家の敗軍の大将真壁六郎太(三船敏郎) は、山中の隠し砦に身を潜めていたが、秋月家再興のため世継ぎの雪姫(上原美佐)と隠し置いた黄金200貫とともに敵陣の山名家の領地を突破し、同盟軍であるの早川領へ逃亡を図る、そのハラハラドキドキの脱出劇がこの映画だ。褒賞を目当てに山名家と秋月家の戦いに参加した百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)がひょんなことからこの脱出劇に加わることになるが、この二人の欲や間抜けぶりもあり、脱出は難関につぐ難関、次々と襲い来る絶体絶命の危機を六郎太の機転で間一髪で切り抜けていくが・・・・

この百姓コンビの太平と又七は、後に「スターウォーズ」の『C-3PO』、『R2-D2』の原案になったという(私は詳しくは知らないが)。

この物語の主人公は、秋月家の大将真壁六郎太であり、その秋月家の雪姫でもあり、百姓の二人でもある。それぞれ出番が多く、セリフも多い、強烈な個性を発揮して物語を面白くしている。

  • 六郎太は秋月家の忠臣であり、男臭さをぷんぷん放っている、百姓二人に厳しい命令口調で指示し、危機になれば適切な情勢判断をして機敏に行動する、一方、雪姫やお家の重臣たちには忠節を貫く。三船敏郎にぴったりの役回りだ。
  • 雪姫はお家の跡取りとしての自覚があり、美人で魅力的な容貌であるが気性が激しい。逃亡の末、最後に山名家に囚われの身になったときに、田所兵衛が六郎太に向かって、お前との決闘で敗れたが、おれの首をはねなかったため殿様から皆の面前で罵倒され恥をかかされたと言う。それを聞いていた雪姫は突然「愚か者め、人の情けを生かすも殺すもおのれの器量しだいだ、また、家来も家来なら主(あるじ)も主だ、敵を取り逃がしたと言って満座の中で家来をののしるとは、このわがままな姫でもようできぬ仕業じゃ」と言い放つ。
  • さらに、逃避行の数日の間に経験したことを振り返り、「自分は大変楽しかった、この数日間は城の中では経験のできないことばかりであり、特に領民の火祭りは大変楽しかった」と回顧し、「装わぬ人の世を、人の美しさを、人の醜さを、この目でしかと見た、もはや自分は潔く死にたい」と言ってのける。何という素晴らしさだ、歌舞伎だったら大向こうから「秋月屋」と声がかかりそうだ。また、雪姫は領民の娘が売り飛ばされて慰み者にされているところを逃亡中に見て、六郎太に「金で買い戻せ」と指示するなど領民思いの優しいところを見せる。私はこの映画で一番気に入ったのはこの雪姫である。
  • 雪姫を演じたのは上原美佐であるが、彼女はこの作品でデビューした。黒澤監督は、上原の「気品と野生の二つの要素がかもしだす異様な雰囲気」を評価しデビューさせた。撮影にあたって、馬術を習い、障害を跳べるまでになった。そのほか、武家の姫らしい身のこなしのために剣道も習った。演技は初めてでまったくの素人だったため、そのつど黒澤が演じてみせ、その通りに従い進めていったという。きりりとした顔立ちと躍動感溢れる演技で人気を博し、一躍スターとなるが、本人は「私には才能がない」と2年で引退したとウィキに書いてあった。
  • 百姓の二人は欲深く、隠された黄金に目がくらみ持ち逃げしようとしたり、仲たがいしたり仲直りしたり、雪姫に手を出そうとしたり、意外なアイディアを出したり、どこか憎めない人間に設定してある。
  • これらの主人公たちにさらに、秋月家を滅ぼした山名家の侍大将・田所兵衛(藤田進)が出てきていい役を演じる。兵衛は六郎太のライバルであり、両者は敵対する両家の大将同士である。途中、兵衛の陣地に引き込まれてしまった六郎太との槍を持っての決闘シーンが迫力があるし、最後の方では再度、捉えた雪姫と一緒の六郎太と再会し、上に述べた雪姫の話に感動して驚くべき行動をとる魅力的な人間に描かれている。

ところで、黒澤映画だが、「用心棒」を観た時も感じたのだが、日本語でありながら聞き取りずらいところがある。「用心棒」よりはましだったがこの映画もちょっと聞き取りずらいところがある。ところがテレビの放映で自宅のリモコンの「字幕」ボタンを押すと日本語字幕が出ることがわかり、聞き取りずらいなと思ったらそこだけ戻ってこれを利用すればよいと気づいたのはよかった。

少し長めの映画だが、素晴らしい映画だと改めて認識した。



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