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秀山祭九月大歌舞伎(昼の部)初日を観に行く

2024年09月05日 | 歌舞伎

今月も歌舞伎座の公演(昼の部)を観に行った、九月は秀山祭、これは初代中村吉右衛門の生誕百二十年を記念して、その功績をたたえるため俳名 である「秀山」を冠し、平成18(2006)年9月歌舞伎座から始まった公演

今年の演目は、夜の部の妹背山女庭訓と勧進帳の方が観たかったが、最近は夜の部を見ると終演が9時過ぎとなり帰宅時間が遅くなるのが嫌で、演目に関係なく、昼の部を見ることにしている

今日もいつもの3階A席、前から4列目であった、今日は初日、開演は11時、終演は15時半頃、空席が若干見られたが、まずまずの入りではないか

一、摂州合邦辻、合邦庵室の場

玉手御前/菊之助
俊徳丸/愛之助
奴入平/萬太郎
浅香姫/米吉
母おとく/吉弥
合邦道心/歌六

合邦道心の庵室へ娘の玉手御前が闇夜に紛れてやって来る、後妻に入った高安家で継子の俊徳丸に邪な恋心を抱き、逃げ出した俊徳丸の後を追ってきたのだ。娘の愚かな恋を嘆きながらも、母のおとくは見放すことができず玉手を中へ通す。ところが合邦の庵室には、俊徳丸が許嫁の浅香姫とともに匿われていた。嫉妬と狂った恋心で迫る玉手は、俊徳丸の醜い顔も浅香姫と別れさせるために自らが飲ませた毒酒が原因だと告白。そんな娘の浅ましい姿を見兼ねた合邦は、堪らず玉手を手にかけるが、玉手が打ち明ける俊徳丸への恋心の真実に・・・

この演目は初見、これは古くから伝わる説話「しんとく丸」や謡曲「弱法師」、説教節などを素材として、安永二年に人形浄瑠璃として初演されたもので、歌舞伎で上演されるのはその下巻とのこと

観た感想としては、

  • 1幕物で、出演者も数名であり、あらすじはちょっと予習するだけで理解できるので観ていた非常に分かりやすかった
  • 演技の中心は何といっても菊之助(玉手御前)と合邦道心(歌六)であった、菊之助の女形の演技が良かったし、歌六の年相応の律儀な父親役が役柄にピッタリとはまっていると思った
  • また、セリフはあまりないが、浅香姫役の中村米吉が実に可愛らしかった、若手女形で一番きれいな役者だと思う
  • 話の核は、自分が大切だと想う相手を災難から守るため自分が犠牲になるという自己犠牲の物語、この手の話は江戸時代の日本人には大いに受けたのであろうが、これな何も封建時代の時代錯誤の話だと決めつけることはできない、海外でも同様なストーリーの物語があるので(直ぐに思い出せないが)、人類共通の情念かもしれない

二、沙門空海唐の国にて鬼と宴す
弘法大師御誕生一二五〇年記念、夢枕 獏 原作、戸部和久 脚本、齋藤雅文 演出

空海:幸四郎
楊貴妃:雀右衛門
白楽天:歌昇
廷臣馬之幕:廣太郎
玉蓮:米吉
春琴:児太郎
阿倍仲麻呂/高階遠成:染五郎
橘逸勢:吉之丞
杜黄裳:錦吾
白龍:又五郎
丹翁:歌六
憲宗皇帝:白鸚

平成28(2016)年に歌舞伎座で初演し好評を博した夢枕獏原作の新作歌舞伎の再演、唐の都、長安、市中では皇帝の次には皇太子も倒れるだろうという不穏な立札が夜な夜な現れる怪異が起きてた。遣唐使船で日本からやって来た空海は、ある日、訪れた妓楼で遊女の玉蓮を相手に不思議な力を見せ、白楽天たちがその光景に驚くなか、皇帝の崩御を予言していたという化け猫の話を玉蓮から聞く

すぐさま空海が噂の屋敷へ向かうと目の前に現れたのは、黒猫を頭に乗せた春琴という夫人。怖がる橘逸勢を横目に、そんな状況すら楽しむ空海にその黒猫が語りかける。化け猫と対峙した空海は、ある疑問を解くため白楽天を伴い、50年前に葬られた楊貴妃の墓を探るが・・・

街で知り合った謎の老人・丹翁から楊貴妃の時代に唐へ渡った阿倍仲麻呂の手紙を託され、遂に空海は時空を超えて唐王朝を揺るがす大事件の解明に挑む

観た感想を述べてみたい

  • 夢枕 獏原作の小説は文庫本で4冊になるという長編である、登場人物も多く、それを2時間の歌舞伎にするのは相当な無理があるとイヤホンガイドでも言っていた通り、事前にある程度予備知識をインプットとして臨んだにもかかわらず、途中で集中できなくなった
  • 全体として、歌舞伎というには無理があるような気がした、音楽は黒御簾の中の笛や太鼓、三味線などではなく、録音した現代音楽の放送であり、演技でも見得を切ることもなく、様式美を見せることもない、明治座あたりでやるお芝居といった方が適当だと思った
  • 主役の空海をやった幸四郎だが、白鴎同様、歌舞伎以外のいろんな演劇などにも出演しているので、今回の演技も慣れているのでしょう、そつなくこなしていたように見えた、また、息子の染五郎は堂々とした演技をしていたと思う

さて、本日の幕間の食事は、いつものように三越銀座の地下に行き、日本橋弁松のお弁当にした、やはり歌舞伎観劇の定番と言えば弁松の弁当だ

また、甘味は榮太郎のだんごにした