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「マーラー交響曲第6番悲劇的」を聴く

2023年04月08日 | クラシック音楽

テレビ番組で読響の演奏会「マーラー交響曲第6番悲劇的」の放送をしていたので録画して聴いた。この公演は2023年1月13日サントリーホールで行われ、指揮は山田和樹である。通常は1時間の番組だがこの交響曲は80分と長いので1時間40分の放送になっている。

マーラーの6番イ短調は1903年から作曲を開始し、翌年の1904年に完成した、マイヤーニックの彼の作曲小屋で作曲したもの。マーラーは「6番は聴くものに謎を突きつけ、この謎解きにはぼくの第1から第5を受け入れ、それを完全に消化した世代だけが挑戦できる」と述べている。1906年5月にエッセンの全ドイツ音楽協会音楽祭においてマーラー自身の指揮で初演された。大編成の管弦楽を用い、古典的な4楽章で構成されている。

管楽器と打楽器の拡大が目立ち、打楽器の中でも特にカウベル(牛の首につける鐘鈴)とハンマーが使われているのが特徴である。前者は第1、3、4楽章で登場し、後者は第4楽章で登場する。テレビ中継の良いところは、これらの楽器が使用されるところをしっかりと映してくれることだ。その他、音楽の進行に合わせてポイントになる楽器の演奏姿をアップで映してくれるのは有難い。会場に聴きに行っているときにはできない技だ。

この第6番はマーラーが恋人アルマと結婚して幸せの絶頂にあるときに作曲されたものだが、短調で悲劇的という正反対の曲想になっているところが面白い、逆も真なりでベートーベンはハイリゲンシュタットの遺書を書いた前後に明るい曲を作曲している。

私の敬愛する故宇野功芳氏の解説によれば、マーラーの交響曲について「第1や第8は大仕掛けすぎるし、第5は分裂の度がはなはだしい、結局、形式がキリッと締まった第1、4、6、9、大地の歌が好ましいが、第1は内容が浅いので飽きを生じやすく、文句なしなのは大地の歌でであろうか。第4、6、9にも冗長な部分、分裂しすぎた部分があるからだ、ほかに第4によく似た第3もあるが、曲自体は好きだが、長すぎるきらいは否めない」と解説している。

確かにマーラーの曲は長くて、ベートーベンなどと比べても主張がハッキリせず、抽象的な感じて退屈気味になるので私はあまり好きではない。マーラーといういう人物も神経質で分裂気味で癇癪持ちで、指揮者の時はオーケストラのメンバーをかなり厳しく叱るということがあったのでトラブルもあった。ケン・ラッセルの映画「マーラー」も2度観たが、そこで描かれているマーラーもまさにそんな人物だ。しかし、このような見方は何かのきっかけで変るものである、よって、機会を見つけてはなるべき聴くようにしている。テレビで観たり、演奏会を聴きに行ったり、YouTubeで観たり、いろんな機会に聴いてみるのが良いと思っている。その結果、曲に対する印象が変ったことは今までも何回かある。今回、この6番を改めて聞いて見て、そんなにわかりにくい曲でもないな、と思った。