美意識を磨く 文田聖二の『アート思考』

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焼き捨てた絵

2012年03月21日 15時55分06秒 | 日記
安井曽太郎(東京美術学校【現在の東京藝術大学】 教授)のドローイング作品。
日本では浅井忠に師事し、同時期の海老原龍三郎らと関西で洋画を学んでいた。
その後、フランスに渡りアカデミー・ジュリアンで学ぶ(以前の作は焼き捨てたとのことで、彼の初期作品はほとんど現存していない)。
フランス滞在の7年間の間にイギリス、イタリア、スペインなどへも旅行している。
フランスでの作品と渡欧前のデッサンとでは大きく異なった点があります。
木綿問屋の坊ちゃんの曽太郎は家の使用人らをモデルに素描していたようですが、渡欧後とそれ以前と明らかな変化が分かります。
関西の洋画研究所で学んでいた時期と渡欧して、何を学び吸収したのか想像してみてください。    
描写を意識した素描から、空間性や人体への視点、表現テーマが生まれ、人体の躍動感や空間の臨場感がダイナミックに描かれたデッサンになっています。
また、対象物を見たまま写し取っていた初期作品と比較すると見上げた視線の動きを考えた構成になっています。                                     
これら作家の作品展開をみるとドローイングの上達は、単に技術的なスキルアップだけではなく、対象物の捉え方や環境の変化、自分の視点(テーマ)も大きく影響してくることが分かります。
対象物の捉え方、見方や描き方、制作のテーマは様々で、作家のキャラクターや生き方、表現手段などの数だけ「画風」があるといってもいいでしょう。      

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