晴山雨読ときどき映画

“人生は森の中の一日”
山へ登ったり、本を読んだり映画を観るのは知らない世界を旅しているのと同じよ。
       

DVDで「127時間」を観る

2012年02月16日 | 映画

登山家のアーロンが127時間体験した実話を監督ダニー・ボイルが映画化。当時27歳だったアーロンは一人でユタの険しい谷へロッククライミングに行き、誰も通りそうにない谷間で落下し、右手を岩に挟まれてしまう。そこから5日間、身動きの取れなくなったアーロンは必死に脱出をはかる。命も尽き果てようという時、決断をします。

期待してましたが好みの映画ではありませんでした。冒頭から忙しく変わる分割画面やかしましい音楽をバックに、寄せるカメラワークなど苦手感が募りました。他のだったらとっとと逃げ出す所でしょうが、山岳映画なのでじっと我慢。同監督の『スラムドッグ$ミリオネア』もだめだったということは、ダニー・ボイル監督とは相性が悪いのかもしれません。

アーロンが並外れた勇気や決断する力、強靭な精神力を持ち合わせた登山家だと賞賛はしますが、共感は持てませんでした。遭難者が生還した映画には感動は付き物なはずのに、何故か救出された時にどっと疲れるほどの安堵感が湧き上がってこなかったのです。どうしてかと考えました。それは生死のはざまに主人公がパニクルようなシーンがなくリアリティに乏しかったからだと思い当たりました。あまりにも客観的に撮られ過ぎていたために、死ぬかもしれないという恐怖が伝わってきませんでした。
もうひとつは、主人公の自然へ対する畏敬が感じられなかったのもあります。日本と西洋では自然への向かい方が異なります。日本は霊山とも呼ばれるぐらい山は嘗て修行の場でした。が一方、西洋では登山はスポーツで自然を征服する考え方なのです。ロッククライミングなので尚更その傾向が強かったのでしょうが・・・。
歩き始めてキャニオンで偶然出会った女性登山者2人と、キャニオンの岩間の奥にできた湖水で落差がある岩場からダイブして水遊びに興じたのも理解できませんでした。彼が滑落したのは、おそらくこのことが影響したと思います。気分が浮つき、いつもの慎重なクライミングができなかったからでは?予定外の行動があったりすると、ついうっかりミスが出て車に弁当や地図などを置き忘れて登った経験があります。注意が散漫になってしまうので用心しなければいけません。

昼間は野口健さんの講演会を聴きました。こちらは傾聴に値する素晴らしいお話でした!
チョモランマ(エベレスト)に放置されたゴミを、年に一度清掃登山で拾っている話は知っていましたが、酸素ボンベが盗まれるなんて驚きました。ルートに遭難遺体が生々しく転がっていて、高度をあげるごとに「それでもお前は登るのか?」と遺体が突きつけて来、発狂する人や滑落する仲間たち。また山頂の一歩手前で、悪天候でザイルパートナーと判断が分かれて自分は下り、相手は頂上を目指して戻らなかった話など。きれいごとだけですまされない真実の話が胸を打ちます。小説で読むより迫ってきました。

「127時間」もアーロン自身が語るのならおそらく違っていただろうと思います。ドキュメンタリー風の映画化は難しい!

追加

映画の序盤に2人のハイカーを秘密の天然プールに案内し飛び込む場面があるが、アーロンは「峡谷には常に危険が潜んでいるからそのようなことはしていない」と事実ではないと述べているそうです。
他はほぼ事実に沿っているらしいけれど、あの架空の逸話を挿入されたアーロンはお気の毒!
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2 コメント

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少し気になっていたタイトル (宵乃)
2012-02-21 09:49:14
でしたが、ダメでしたか~。わたしもダニー・ボイル監督はいまいちで、今まで観た中なら「ミリオンズ」がまあまあだったかなぁ。

>日本と西洋では自然への向かい方が異なります。

ここらへんは知らなかったので興味深く読ませて頂きました。やはり、実際に登山をされる方の意見は説得力があります。監督は登山をするんでしょうかね?
水浴びのシーンはアーロンご本人に「そんな事はしない!」と言われてしまったらしいです(笑)
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コメントありがとう(*^_^*) (bamboo)
2012-02-21 16:54:47
>わたしもダニー・ボイル監督はいまいちで、今まで観た中なら「ミリオンズ」がまあまあだったかなぁ。

そうだったの!『スラムドッグ$ミリオネア』の評価が高いので、人気のある監督さんかなと思っていました。アチさんも苦手なようです。

>水浴びのシーンはアーロンご本人に「そんな事はしない!」と言われてしまったらしいです

えっ!あの部分は実話ではないのよね!?
教えてもらってありがとう。
アーロンの人格まで疑っちゃうぐらい解せなかったのです。あれがあったから滑落したとしか考えられないほど全く不可解でした。
アーロンがお気の毒ですねぇ~
原作と映画は別物とは分かっていましたが、ドキュメントタッチだったので実際のことかと!

リカバリーはバックアップもすべて完了しスタンバイしているのですが、イマイチ踏ん切りがつかずに躊躇しています・・・
情けないなぁ~。
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