桃とかなへび

いらっしゃいませ。

月人壮士

2023年06月11日 | ブックエンドとスクリーン
螺旋プロジェクト8冊目、ラストは「月人壮士(つきひとおとこ)」澤田瞳子


月人壮士とは、月。月を擬人化して若い男に見立てていう語、らしい。
奈良時代、東大寺大仏建立で知られる聖武天皇。皇族(山)と藤原氏(海)の血を受けた聖武天皇の、出自の苦しみと日輪の天皇たらんとする葛藤を、幾人かの聞き語りを通して描いている。
タイトルがが切ない。
読む前は、螺旋プロジェクトの海と山の対立はもううんざりだと思っていた。、あと一冊で終わるのでなければ、リタイアしていたかもしれない。しかし、直接的な人と人の対立よりは、ひとりの身体に流れるどうしようもない海と山の血、という内面の葛藤であった。語り部は立場も身分も違い、それぞれ語るのは自分の話なのに、聖武天皇の一面やシルエットが浮かび上がってくる。アプローチが面白く品のある文面が心地よくて、どんどん読んでしまった。

螺旋プロジェクト、結局それぞれ面白かった。知らない作家さんに出会えたし、全部違うものだった。私はほぼ発売順に読んだが、読後感を考えると歴史の古いところから読むのが楽しいかも。
で、8作品同時に読んだらどんな感じか、私にはさっぱり想像できない。ネットで検索してみるか? 始動しているらしい第2弾に挑戦する? 低いハードルではないと思うのは、次号が発売されるまでに読み切ることができるか、自信がないからだ。追われながら頑張るか、ずるずる積読を許すか。
ともかく、私の螺旋プロジェクトは終了した。お疲れ!アタシ、おめでとう。




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