愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

ぬいぐるみ返して

2018年04月30日 16時39分09秒 | 

僕の部屋には 大きな熊のぬいぐるみがある
君がどうしてもって ねだって 僕が買ってやったものだ 

それなのに 部屋を出ていくとき
邪魔だからって 残していった

あれから半年 彼女はどうしているんだろう
ぬいぐるみが彼女のような気がして捨てられない

そんなある日彼女から電話があった

「もしもし元気?
あまり元気そうじゃないわね

新しい彼女出来た?
そうそう ぬいぐるみ捨てちゃった?」

「あるよ」

「そう、貰いに行っていい?」

「構わないけど」

1時間もせず彼女はやってきた

部屋に入るなりぬいぐるみに突進した

「ごめんね 置き去りにして
本当は連れていきたかったんだけど、彼を独りに出来なかったの」

それから 僕に向かって言った

「ごめんなさい、私の我が儘で突然出ていって
でも、テディちゃんおいてくれてたのね
私、一緒に暮らしてたとき、あなたの優しさが当たり前になっていたの
だから飛び出した
新天地に向かって
でも、解った、あなたのように優しい人はいないって
だから、とっても図々しいお願いなんだけど
帰ってきてもいいかな
居心地のいい、あなたのそばにいたい
駄目なら仕方がない、テディちゃん連れて帰るわ」

涙ながらに語る彼女に僕は言った

「帰ってくるなら条件が一つある」

「条件?それは何?」

「僕と結婚すること
そうでもしないと君はまた飛び出していく
この半年、僕は死んだみたいだった
どう?」

「はい」

彼女は笑顔で 泣き続けた

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