愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

25歳の贈り物

2018年04月23日 14時55分47秒 | 

「明日は君の25歳の誕生日だったね
悪いけど、今日急に沖縄に行くことになったんだ」

彼は言葉とは裏腹に ぜんぜん悪びれていない

「ひどい、誕生日に一人にする気?」

「悪いとは思うんだけど、ちゃんと埋め合わせをするからさ」

彼はそう言うと小さな荷物を持って出ていった
私は独り静まりかえった部屋で泣いていた
彼がそんな人だなんて知らなかったわ
帰ってきたら別れてやる

翌日の夕方 彼はひょこっと帰ってきた
少し日焼けしていた

「やあ、誕生日おめでとう、これプレゼント」

そう言うと、ティッシュにくるんだものを私に手渡した

「何これ、馬鹿にしてるでしょ」

「いいから、開けてごらんよ」

開くと中から一枚の白い貝殻がでてきた

「炎天下、半日かかったんだよ」

「なによ、当たり前の貝じゃない」

「違うさ、よく見てごらん、筋が入っているだろう、その筋を数えてごらん」

「1.2.3.4.・・・25 え!嘘!」

「貝の年輪のようなものだね、君が生まれたときこの貝が生まれた
そして25歳まで成長し、今、君の手のひらにある」

「大変だったでしょ、探すの」

「大変じゃないよ、君の喜ぶ姿を想像しながら探したんだ
いいかい、僕はその貝が成長してきた一年の蓄積、25年分お祝いがしたい
そして25年前に君が生まれたことに、心から神様にお礼が言いたいんだ」

私は涙をこらえられなかった

「有り難う・・」

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