愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

湯煙の向こうに

2009年03月25日 17時09分53秒 | 写真詩
窓から見下ろすと、露天風呂が見える。   白い湯煙で全体は見渡せない。  混浴だから、女性はいない。 とりわけ、部屋から見られるのがいやなのだろう。  平日の遅い時間だから、男性客も姿がない。 今日は麻衣の誕生日だ。一年前の記憶がよみがえる。 「もうすぐ、君の誕生日だね」   「よく覚えていたわね。ねえ、お祝いが欲しいわ」  「いいよ。何でも言ってごらん」  「温泉に連れ . . . 本文を読む
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最初に見た景色

2009年03月18日 17時40分53秒 | 写真詩
僕は札幌の眼科医だ。   愛する由香里が網膜剥離で視力を失ってしまった。   一週間前に、最新の手術を行った。強膜内陥〈ないかん〉術。簡単な手術ではない。   病室で、由香里は言った。目は包帯で覆われている。   「ねえ、本当に見えるようになるの?」   「大丈夫。手術は成功したはずだ」   「あなたを信じるわ」   僕は窓の下を見た。   道路わきには、まだ雪が積 . . . 本文を読む
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ISLAND

2009年03月09日 19時01分27秒 | 写真詩
限りなく透明な波が静かに打ち寄せている。 美加は白いデッキチェアに横たわっている。  「ごらん、美加。綺麗だろう」  美加は答えない。答えられないのだ。  半年前、父親が運転する車が小型トラックと正面衝突をした。 助手席の母親と父を同時に失った。 後部座席でシートベルトをしていた美加だけが、奇跡的に助かった。 それ以来、美加は失語症に陥った。  僕は美加を精神科に連れて行き、出 . . . 本文を読む
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