蔵書目録

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黙劇 「金色鬼」 帝国劇場 (1914.6)

2020年04月28日 | 帝国劇場 総合、和、洋
         

     大正三年六月狂言

     右田寅彦新作
 一番目 時代世話劇 靜御前古塚緣起 三幕 四場

 帝劇一流の新しい気分に
 更に新しい機軸を加へし
   六月興行の舞臺
          帝劇作者主任  文学士  二宮行雄氏談 〔下は、その一部〕

 大切 おほぎり としての黙劇『金色鬼 ゴールデンモンスター 』は、帝劇のオペラ、ダンスの指導者たる、斯界の權威 オーソリテー 、ロンーシー氏が自から作り、自から指導した最も新しい気分を以て滿たされたもので、帝劇専属の管絃樂 オーケストラ 部員の妙調と相待って、外に類と眞似の出來ない、研究すべき一大新試演ともいふべきものであって、變幻の巧 かう を極めた、一流の舞臺面が、五場となって遺憾のない處までを演じ盡 つく されるので、近來にない大芝居であると思ふ。 

 中幕 (一日替)時代劇  鎌倉三代記 一幕

 中幕 (一日替)時代劇 岸姫松轡鑑 一幕
     
 浄瑠璃  戻駕 一幕

 大切
      
 一コロムビーナ   マダム、ローシー
 一ピエロット    ミスター、ローシー
 一アレキーノ    石井林郎
 一プルートォ    原信子
 一パンタローネ   柏木敏
 一金色鬼      高田春雄
 一トニオ      淸水金太郎

 一妖精       
 一妖婆       男女洋劇部總出
 一百姓男女
 
 前以て下記筋書御一讀の上此の黙劇御覽被下候はゞ一層御興味相增し可申と存候

     ローシー作並に指導
  大切 黙劇  金色鬼 五場

 『第一場』舞臺は凡て地獄の神プルートォが住居 すまゐ の光景にして、中央に大なる釜あり、之を繞 めぐ って妖婆の一群、マカブラと稱する怪し気なる舞を舞ふをプルートォは王座に椅りて眺め居る、舞の終る頃アレキーノと云へる若者、突然人間界より墜落し來り、プルートォの王座にあるを見て、其不幸なる戀に同情し、愛人コロムビーナが父の心を變ぜしめん事を求む、プルートォ承諾し、部下の怪物金色鬼を呼出し、人間界に赴きアレキーノを助けて愛人と結婚せしむ可きを命ずれば、金色鬼はアンキーノを拘 かゝ へて飛去り、幕は妖婆の演ずる地獄の舞を以て閉ず。
 『第二場』舞臺はコロムビーナが父パンタローネが住居の座敷にて、トニオといふ富裕なる農民訪ね來り、深く心をコロムビーナに寄せ居る事を語り結婚を申込めば、パンタローネは喜びて承諾し、下僕 しもべ ピエロットにコロムビーナを呼來らしめ、トニオを紹介し、其來意を告ぐるに、コロムビーナは且つ驚き且つ怒り、席を蹴立てゝ立去れば、パンタローネは呆気に取られたるトニオを慰め、娘を説得せん事を約し、祝言の日取を定めて雙方別れ去る。
 『第三場』茲 ここ は百姓家の外部にして百姓の男女大勢の科 しぐさ 宜しくあって、パンタローネ、コロムビーナ、ピエロット出來 いできた れば、トニオは花束を持ちて出來り、コロムビーナに捧ぐるに、コロムビーナは腹立し気に、花束を引つ奪 たく り、夫 それ にてトニオが顔を引つ擦 こす り、其儘其處に抛り出して、家の中へ駈込めば、之を見たる一同は、ドッと聲を擧げて打笑ふパンタローネは再び面目を失ひ、娘の心の勝 すぐ れざる故なりと間に合せの詫 わび を謂ひ、トニオを案内して内に入る、男女一同はタムバーリン、ダンスを踊りて引込む後へ、金色鬼はアレキーノと出來り、パンタローネが家の戸口に行きベルを鳴らしピエロットの出來る隙を窺ひ内へ忍入る、コロムビーナ出來り、アレキーノを見て其腕に縋附 すがりつ く、ピエロットはコロムビーナを探して出來り、此有様を見て驚き、コロムビーナを引立て行かんとするに、アレキーノは隠し持った棍棒にてピエロットを撲 なぐ り付け、家へ追込み、同時に乞食の姿と變ず、ピエロットがパンタローネとトニオを引連れ、銘々大なる棍棒を提 ひつさ げて出來るに、アレキーノにはあらで、救 すくひ を求むる乞食を認め、トニオはコロムビーナが歓心を得んが爲に、金財布を拂 はた く可笑味 をかしみ あり、パンタローネに伴はれて内に入る、ピエロットは振返りて再びアレキーノを見、思はず聲を上ぐれば其聲を聞付け、パンタローネとトニオは又歸り來り、ピエロットの誤れるを見、烈しく彼を叱責して又家に入る、ピエロットは狐に魅 つまゝ れたる心地して我が身を抓 つめ り、家の内に入らんとする時、二本の巨大なる脚 あし の吊下 ぶらさが れるを見て吃驚 びっくり し、パンタローネが授 さづ けたる大なる銃を持ち出來り、アレキーノが姿を見付けて發砲したれば、アレキーノの五體は憐む可し寸斷されて地上に落つ、ピエロットも流石に気の毒になり、手足などを拾ひ集め繼合 つぎあ はする内、不思議やアレキーノの體はスックと立ちて動き出 いだ せば、ピエロットは恐怖に打たれ、今度は大なる劍を持ちて立出 たちい で、アレキーノを斬倒さんとするに何時の間にやら金色鬼之に代り、散々ピエロットを翻弄し遂に姿を隠す。
 『第四場』舞臺はパンタローネが食堂にしてパンタローネはピエロットと共に客待の用意をなしつゝある處へ、客はコロムビーナ、トニオ等と共に到着し、酒宴開かれ、ピエロットは皿を澤山重ねて持來るに、不思議や皿は卓子 テーブル に達せざる内に飛散し、炙 あぶ りたる七面鳥は孰れへか飛去り、卓子亦消え失せて恐ろしき金色鬼の立居るを見、一同恐れ慌てふためき、我先にと遁れ去る、ピエロット一人後に殘り、アレキーノがコロムビーナと睦 むつみ し気に語るを見、之を追立つれば、アレキーノは、傍 かたはら なる箱の中に遁込むをもてパンタローネとトニオとを連れ來り、三人箱を取圍み遁路 にげみち を塞ぎて蓋を開くるに、茲にも亦金色鬼が代り居て、鏡を破りピエロットの股間を通り抜け、窓の上に姿を現はせば、ピエロットの恐怖は絶頂に達し、跪きて其憐を乞ふのみ。
 『第五場』舞臺はアレキーノが住居にしてコロムビーナとの祝言の爲に催されたる舞踏あり、ダンスの後舞臺は再び展開してオリプス山上の光景となり、アレキーノとコロムビーナとは燦然たる太陽の光線に取卷かれ、空間遙に昇り行く模様にて幕。 

 なお、上の写真の一番右は、絵葉書のもので、下の説明がある。

 帝國劇塲(大正三年六月興行)黙劇(金色鬼)


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