蔵書目録

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無言劇 「犠牲」  帝国劇場 (1912.10)

2020年03月21日 | 帝国劇場 総合、和、洋
     
 
   Miss.J.REEVE    Mr.G.V.ROSI

 秋冷之候各位愈々御清榮奉賀候陳者當劇場事創業以来常に劇界の進歩改善に勉め國酔保存の傍ら、泰西藝術の精華を撰みてし、前興行よりはジー、ヴイー、ローシー氏を招聘し、專ら西洋舞踏教授の任に當らしめ●候同氏ハ歐洲歌劇俳優の瀾叢地たる伊太利に生れ、父祖の業を襲ぎて身を劇界に投し、研鑽多年、倫敦陛下座 ヒズマセズチース に於て名優ツリーの下にバレー、マスターたる事数年、舞踏術に於て非凡の技能あるは識者の等しく認むるところ、今回は嘗て倫敦に於て名聲を博したる自作、無言劇『犠牲』を提出し、夫妻進んで作中の人物に扮し、松本幸四郎丈を起し、専属女優の外に歌劇女優、男優数十名を指導督励し、衣裳、背景、光線、大道具等總て之を泰西の範に倣ひ、多少なりと我か劇界に貢献せんとするの微衷に有之候へハ大方諸賢幸に其志を諒として陸續御来観御高評を賜り度犠牲の上場に際し御披露旁右御挨拶迄如斯に御座候謹言
 大正元年十月吉日
      帝國劇場


     岡本綺堂作
 第一史劇 平家蟹 二幕

 第二 時代劇 忠臣藏九段目 一幕

     田口掬汀新作
 第三 喜劇 國境 くにざかひ 二幕
     
 第四 世話 浄瑠璃 お俊 傳兵衛昔形松白藤 一幕

 第五
      埃及の寺堂
 一武士ユーラム   ミスタア、ジー、ヴイー、ローシー
 一高僧ラダメス   松本幸四郎
 一乙女ナスラ    ミス、ジュリア、リーベ
 一奴隷娘トールハン 音羽かね子
 一尼僧       藤間房子
 一同        佐藤千枝子
 一同        小原小春
 一同        小林延子
 一同        泉龜代子
 一同        水野早苗
 一同        佐藤はま子
 一同        月岡靜枝
 一同        四條京子
 一同        橘富美子
 一同        木村重子
 一同        東日出子
 一同        中山歌子
 一同        村田嘉久子
 一同        夏野綠
 一同        白井壽美代
 一同        田中勝代
 一同        河合磯代
 一同        澤美千代
 一同        松本愛子
 一同        宇治龍子
 一同        大和田園子
 一同        村瀨蔦子
 一同        花岡蝶子
 一黒人       松本銀杏
 一同        市川宗三郎
 一同        尾上梅次
 一同        尾上幸雄
   帝國劇場附屬管絃樂部員  

     ローシー氏作及指導
  第五 無言劇犠牲一場

 『埃及の寺堂』ユーラムと云へる武士、誤つて法師を殺し、その爲に罪を得て寺堂内に拘禁せらる、若し彼を憫 あは れむ乙女ありて彼に接吻を許すならば、彼は釋 ゆる さるべしと雖も、同時に其の乙女は彼に代りて拘禁の身とならざるべからざるなり、然るにナスラと云へる少女あり、麥 むぎ を獻 さゝ げんとて偶々寺堂に來たり、ユーラムを見て戀情を生じ、誘惑的なる動作と眼 まな ざしとを以て彼の意を動かさんと謀る、彼もナスラを憎からず思へど、其の心の欲する儘にせば、少女の身を不幸に陥 おちい らすべきを思ひ、強 しひ て其の心を制す、高僧ラダメスまた少女を警 いまし むるに、少女若しユーラムに戀を爲さば、其の拘禁は終身たるべきを以てするも、ナスラは之を思ひ斷つ能はずして、其身を犠牲にするも辭せじと決心す、ナスラ踊りに踊りて『戀の舞』を演ずれば、ユーラムは可憐なる風姿に魅せられ、思はず之に接吻す、ナスラ忽 たちま ち尼僧に捕へられ寺堂内に引込まれ、ユーラム切に少女の許されん事を乞ふも許されず、寺堂の外に取殘さる、ユーラムが力もて寺堂の扉を開かんとする時、その門サット押開かれ、ラダメスの姿を現はし、ユーラムに弓矢を與へ、最早自由の身となりたれば何處へなりと立去れと命ず、されどユーラムはナスラを失ひて失戀し、も一度少女を見ん事を求む、ラダメス之れを許し、少女を連れ來らしむ、ナスラ出來 いできた りてユーラムを見るや感極まりて抱き附く、ラダメス兩人を引離し、ナスラには『訣別の舞』を命じ、舞終りて尼僧又少女を寺堂に引入る、ユーラム物狂はしくなりナスラを救ひ出さんとして、門扉 とびら を開く時、其の足音を聞付け、ラダメスは竊 ひそか に短刀を用意して忍び寄り、一刀の下にユーラムを刺殺し、ユーラムは遂に戀の犠牲となる幕

  なお、上の一番右の写真は、絵葉書のもので、下の説明がある。

 (帝國劇塲犠牲)乙女ナスラ(ミス ジュリア リーベ)


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