蔵書目録

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台湾土産 喜劇 「生蕃襲来」 帝国劇場 (1913.5)

2023年03月12日 | 台湾、朝鮮、ベトナム、フィリピン

  

大正二年五月狂言 

 第一 時代劇 二月堂 三幕     
      太郎冠者新作
 第二 臺灣土産 喜劇 生蕃襲來 二幕
 第三 浄瑠璃 六歌仙 一幕

序幕
   臺灣蕃界カウイラン
 其一 隘勇監督所の場
 其二 大嵙嵌附近土人立場
    茶屋の場

一警部渡邊熊夫     菊四郎 
一同夫人 政子     房子
            浪子 
一巡査山下剛      哥川
一同 竹田五郎     其答
一紳士增尾長淸     松助
一三ツ木殖林部員    國之助
   谷沢勇吉
一同 和田榮吉     小治郎
一同 田中幾太郎    柏藏
一同部長押野正年    梅幸 
一紳士櫻木新四郎    長十郎
一紳士窪野謹二     幸四郎 
一同阿久津升太郎    宗之助
一同 永村大三郎    幸藏
一同 井上熊次郎    梅昇
一信濃丸事務長    小文字改メ
   今村銀之助    新之助  
一土人の旅人獅仔 サイマー 紀升
一同 女房琴仔  キンマー 嘉久子
一甘蔗賣金妹   キンモイ 勝代     
一召使おかま      はま子
一增尾夫人君子     宗十郎 
一夫人の友人
   花井靜江     徳子
一隘勇         ✕美平
一同          石井 
一同          服部
一同          不二 
一巡査補        釻次郎 
一同          錦車
一生蕃         國十郎
一同          澤右衞門
一同          錦吾
一同          横藏
一同          梅十郎
一同          梅之助 
一同          鐘二郎
一同          鐘三 
一同          錦彌
一同          しやこ六 
一同          重三
一同          羽多藏 
一同          松藏
一同          にしき
一同          扇吉
一同          昇次郎
一同          澤治
一同          幸雄
一同          宗三郎
一同          壽鶴 
一同          眼助       
一苦力甲        米助 
一同 乙        麗重
一同 丙        宗右衞門
一同 丁        宗次
一同 戊        錦五郎
一同 己        錦吾
一茶店の亭主立仔    扇糸
一天ぷら賣       三幸
一土人の子供      銀杏
一同          梅次
一三ツ木組部員     柏木
一同          松山
一同          小島 
一同          菅
一增尾家の書生     鶴丸 
一轎夫         澤右衞門
一同          橋藏 
一同          重三
一同          羽多藏

        太郎冠者新作
   第二 臺灣土産 喜劇 生蕃襲來 二幕 

『序幕、其一、臺灣蕃界カウイラン隘勇 あいゆう 監督所の場』舞臺は凡て臺灣蕃界に於ける隘勇監督所の裝置物凄き月夜の光景にて幕開く、隘勇線警戒の爲め屋外に立ちたる隘勇陳銃を持ち立ちたる儘、小屋に寄掛り居眠るを、渡邊警部制服の儘出來 いできた り、陳を搖り起し、其警備を戒 いまし む、夫人政子に續いて巡査山下、武田の兩名出來り、月明を賞し、政子が健氣 けなげ なる態度に感奮し、年若き夫人と新婚旅行を兼て渡臺し、此監督所に滯在せる、老紳士增尾長淸を呼出し、愛國婦人會寄增の日本酒を出し、少宴を開き氣候と戰ひ不自由と戰ふ、生蕃 せいばん 討伐の苦艱を語れば、增尾は一々感服し乍らも根が臆病なれば、話の中 うち にも怯氣 おぢけ を生じ狼狽する可笑味 をかしみ あり、皆々眠 ねむり に就かんとする時、何處 いづこ よりか生蕃の一隊押寄せ來り、一同の戰鬪準備に掛る間も無く、鯨波 ときのこゑ を揚げて監督所に亂入し、激烈なる戰鬪となり、長淸は彼方此方 かなたこなた と逃惑ふ内、見るも恐ろしき生蕃に組敷かれ、將に蕃刀の露と消えなんとする時ダーク、チエーンヂにて
『同、其二大嵙崁 タイコカン 附近土人立場茶屋の場』となり、渡臺團一行を出迎の三ッ木組殖林部係員三人、歡迎の準備宜しく待つ處へ、前幕の增尾長淸、三ッ木組殖林部長押野正年同行の紳士阿久津升太郎、窪野謹二、櫻井新四郎、永村大三郎、井上熊次郎、郵船會社信濃丸事務長今村銀之助、苦力 クリー の押すトロに乘りて出來り、中にも增尾は前幕の夢より覺めて茫然たる事數分新婚の妻を氣遣ひ、同行の惡太郎阿久津に盛 さかん に冷笑 ひやか さる、苦力の一人增尾に近づき、酒錢 さかて を要求すれど、語通ぜず押野代辯して之を去らしむ、土人夫婦獅仔 サイアー 、琴仔 キンマー 出來り、荷物の事より夫婦喧嘩を始め、反 かへ つて苦力に揶揄 からか はる、增尾夫人君子、令孃花井靜江後れて到着し、盛 さかん に新しき婦人の氣焔を吐き、增尾櫻井、今村等 ら に附添 つきそ はれて上手に入る、跡に阿久津は靜江孃にふられ通しの窪野を嗾 そヽの かし、色男の櫻井と、『家内々々』で一行を艱 なや ましたる增尾老人とに復讐せんと、井上、永井を語らひ、猶強迫的に今村と押野をも引入れんと相談したる處へ、增尾老人歸り來れば、窪野は折好 をりよ しと、櫻井の色魔なるを告げて、その妬心を起さしむ、此内水牛一匹何時 いつ の間にやら增尾に近づきて赤い襟飾 ネクタイ を見るや、忽ち角を振立てゝ老人に向へば、增尾は吃驚 びっくり 、一行始め苦力一同慌てふためき大騒動の模樣にて幕

二幕目
   三ツ木組殖林部事務所の場

一櫻木新四郎      長十郎
一阿久津升太郎     宗之助
一窪野謹二       幸四郎
一花井靜江       徳子
一增尾夫人君子     宗十郎
一增尾長淸       松助 
一三ツ木組殖林部長   梅幸
   押野正年      
一永村大三郎      幸藏
一蕃務警部 吉川勇治  宗五郎
一生蕃頭目 アテヤイ  國十郎
一井上熊次郎      梅昇
一生蕃 ユーカン    梅十郎
一蕃婦 ヤーワイ    日出子
一信濃丸事務長    小文次改メ
   今村銀之助    新之助           
一蕃婦         かね子 
一同          冨美子
一同          重子
一同          愛子
一三ツ木組殖林部係員  國之助 
   谷澤勇吉
一同 田中幾太郎    柏藏
一增尾家書生 松本力藏 鶴丸
一同召使 おかま    はま子 
一三ツ木組殖林部係員  柏木    
一同          松山
一同          小島
一同          菅
一巡査補タオガン    しやこ六
一ボーイ        錦車
一同          昇次郎
一生蕃         澤右衞門
一同          横藏 
一同          梅之助
一同          三幸 
一同          鐘二郎
一同          鐘三
一同          錦彌
一同          重三
一同          羽多藏
一同          松藏
一同          にしき
一同          扇吉           
一同          澤次
一同          幸雄 
一同          宗三郎
一同          眼助
一同          壽鶴 

『二幕目、其一臺灣蕃界内角板山三ツ組殖林部事務所の場』
幕開くと前幕の觀光團を歡迎する心にて、事務所を以て、食堂に充て、食卓の中央に蕃務警部吉川勇治、左右に觀光讚團及主人役の押野等居並び、酒宴も終に近づきし有樣、食卓の前へ生蕃大勢手を組合せ蕃歌を歌ひ、一同拍手喝采する事宜しく、其間增尾は時々妙な質問をなし、混ぜ返へされる可笑味あり、吉川警部立て、生蕃の狀態、理蕃の艱苦を演説し、增尾は一行を代表し挨拶せざる可 べ からざる破目となり、已む無く立上らしむ、モゴ〲して、只笑 ただわらひ を買ふのみなれば、君子夫人もどかしがりて、立上り代つて滔々と辯じ終る、吉川警部は殖林部係員に送られて退場し、阿久津一人姿を隱す、婦人兩名に續いて、增尾老人嫌がる櫻井を拉 らつ して寢室に退けば、窪野、永村、井上互に顔を見合せて、謀 はかりごと の巧 うま く行きしを喜ぶ、阿久津何時の間にか、生蕃の一人と衣服を換へ後 うしろ よりソット近附き、押野と今村の首筋を摑めば、兩人眞實 まこと の生蕃と思ひ、吃驚敗亡する可笑味あり、トヾ阿久津等は押野今村を納得せしめて、蕃服を着せしむる事宜しく萬事の手筈を定め、阿久津を始め急製の蕃連正面より出掛れば、本物の生蕃は是 これ を見て打笑ふ模樣にて道具廻る
『同、其二、同寢室外の場』道具留 とま ると茲は事務所より廊下傳 づた ひの寢室を外より見たる光景、增尾、殖林部員の案内にて寢室に入りたれど、生蕃の恐さと、櫻井に對する監視を忽 ゆるかせ にす可からざるとにて、内憂外患交々 こも〲 來りたる有樣にて漸 やうや く床に就く、此時僞 にせ 生蕃六人暗 やみ に紛れて、𢖫び足に出來 いできた り攻撃の用意する内、急 せき 込みて尻尾を出さんとする事數次 しばゞ ,遂に爆竹一發轟然 ごうぜん たる響 ひ〲き と共に、室内に侵入すれば、增尾櫻井は思はず腰を抜かす、洋服の生蕃連駆來 かけきた り之を見手を叩き乍ら笑ひ興ず、事務員等は何事ならんと集り來り此體 このてい を見て、僞物とは心付 こヽろづ かず、押野、永村、今村、井上抔 など を撲 なぐ り附ける一方別室内にありて、柔道の心得ある君子、靜枝の兩人は此騒ぎに、飛 とん で出て、君子は窪野を捩 ねぢ 伏せ、靜枝は阿久津の首を締めたるも、よく其顔を見て、生蕃ならぬを知り一同之はと驚く此 この 模樣宜しく幕

  

『生蕃襲來』中に現はるゝ重なる特別語、蕃語、及土人語の説明
  
蕃界  蕃界とは生蕃と普通人民との境界線にて許可なくては出入を許されざる處なり。
隘勇  隘勇とは本島人(支那人)にして年齢十七歳以上四十五歳以下の志願者中より採用する雇員にて七圓より十五圓以下の月俸を受け(食料は自辨)蕃務警官の命令に依り兵卒として進攻防戰の事に從ふ。
隘勇線 隘勇線は蕃界適宜の山嶺を開き道路(隘路)を設け兇蕃棲息の方面數十間以内の草木を刈り蕃人襲來を監視する線なり。
隘藔  隘藔とは隘勇の屯所にして隘勇線三四丁毎に設けらる、隘藔四五ケ所の一ケ所を監督分遣所とし巡査又は巡査補を配置し四五ケ所の分遣所毎に監督所を置き警部又は警部補駐屯す。
頭目  臺灣の生蕃人は九種族に分 わか たれ、其種族は各數十の蕃社(村落)より成る、而して各蕃社は一名の頭目を戴く、乃ち頭目とは所謂村長又は舊名主の如き村の司 つかさ にして、多くは家柄に依って代々其任に當るが爲め或る場合には婦人の頭目を見る事あり、其他は名望あるものヽ推されて此職に就くを以て習 ならひ となす。
   〔以下省略:上の写真参照〕



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