2月29日

日々の思いつき及び読書の感想

読書 阿部彩著『子どもの貧困』(岩波新書)

2010-05-22 01:16:18 | 読書
著者は、貧困と格差との違いが社会的に容認できるものであるのか又はそうでないのかという点にあるという。前者は容認できないもの、後者はできないものとしている。

(本書より)
・日本の社会保険の国民負担の特徴は、逆進的(低所得者ほど負担率が高い)である(93頁)。
・2000年のデータで、政府による給付から負担を引く前後の子どもの貧困率を比較したところ、先進OECD諸国18ヶ国中で、引いた後が高くなった国は日本だけである(96頁)。これの意味するところは、「社会保障制度や税制度によって、日本の子どもの貧困率が悪化してているのだ!」(同頁)である。その対策として、「子どもを育てていたり、貧困線を下回る生活をしている世帯に対しては、せめて、負担が給付を上回ることがないように...(中略)...すべての社会保障制度で考慮すべき」(222頁)と著者は提言している。
データは2000年なので、貧困率の悪化はもっとすすんでしまっただろうが、4月からの子ども手当の増額によって、悪化傾向に歯止めがかかったかもしれないが、税の控除もなくなったので、実際のところはどのくらい改善したのかは、これからわかるだろう。それにしても、政府によって子どもの貧困が作り出されているなんて、あまりにもひどいことではないだろうか。政府の存在意義が問われる事態である。
・子どもの貧困は、母子世帯に限った問題ではないので、世帯の種類に関わらない「子ども対策」の必要性がある(140頁)。
・「保育所、公立小・中学校において貧困対策が行われてこそ、高等教育の無償化の効果が充分に発揮される」(177頁)。
・日本特有の問題といえるが、母親の収入が貧困率の低下に寄与しない(なぜなら、パートや派遣社員という収入の低い仕事にしか就けないことが多いから。)ので、男性だけでなく、女性にもある程度の収入を得ることができる仕事を増やすことが、「子どもの貧困を抜本的に解決する最大の方法」である(229頁)。これが一番の問題であることは推測できたが、問題はこれをどのように実現するかである。現実的な実現方法を考えなければ、この言葉は力がない。残念ながら、この実現方法については、本書ではスペースの関係か、記載がない。
・低所得者の負担軽減のために、健康保険などの保険料額の上限を撤廃すること(233頁)。おそらく、著者は所得が400万円(だったと思う)以上の場合、保険料の負担が同じということを前提としているのだと思われる。私は、低所得者の負担分を減らすために今よりも上限を上げることには賛成するが、健康保険は命に関わるので、米国の例をみると、上限の撤廃には賛成できない。

この子どもの貧困問題に関しては、直ちに是正措置をとるべきだと思います。違うでしょうか、鳩山首相、長妻厚労相。そうしないと、そう遠くない将来、対策しようがないほどに貧困から抜けれない人々が増大しますよ。
また、是正措置後には、このような結果を招いた責任の追及もなされるべきですね。




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